新型コロナウイルスの濃厚接触者とは、発病した日以降に感染確定患者と同居していたり、長時間を同じ密閉空間(たとえば飛行機など)で過ごす、およそ2メートル以内で予防策なしに接触した人などのことを言う。避けられる行為を避けようという機運が高まると友に、心配されたのが地下アイドルたちの活動だ。ライブやイベントを中心に活躍することからライブアイドルとも呼ばれるアイドルたちは、その収入源の多くが、ファント実際に会ったときのグッズ販売やチェキなどに頼っている。芸能プロ所属であっても、ほとんどが歩合制で契約しているアイドルたちは、いま何をしているのか。ライターの宮添優氏が、現役地下アイドルの一人の今をリポートする。

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「接触が嫌だからこの仕事についたのに、また舞い戻っちゃった感じだよね」

 電子タバコの煙をすぼめた口から細く吐き出し、諦めたような表情で思いを吐露するのは、東京・秋葉原の現役リフレ嬢・丸山たまきさん(仮名・20代)。リフレとは、足つぼマッサージの一種であるリフレクソロジーの略で、その施術をする女性をリフレ嬢と呼んでいる。だが、丸山さんはライブハウスで歌って踊る「地下アイドル」だったはずだ。

「一応、首都圏のライブハウスとかカフェでライブやって握手会して……絶対に来てくれるお客さんは5人くらい。毎回物販で数万円使ってくれるし、その5分の1が私の取り分。固定給はないから出た分だけ。推して(応援して)くれる人たくさん欲しいから、握手とハグはかなり頑張ったね(笑)。でもそれ以上は絶対しない、そこはプライドがあった」(丸山さん)

 月の収入は、アイドル活動で月に15万円ほど。有料チャットサイト出演による収益化の目処も立ち、ファミレスのアルバイトをやめても生計が成り立ちそうだと考えていたのは今年2月。だが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、全てが白紙になった。

「感染しないように接触を避ける、って日常になったでしょ? でもうちらの場合は、接触でお金を稼ぐしかないよね。貧乏だったらその分多く接触しなきゃ。アイドルになるまでは、そうやって稼いでいた。でも、『地下』がつくけど、一応アイドルになって、これで接触しなくていんだって思った。本音では嫌だったから。でも、アイドルの仕事がなくなって、また接触しなきゃって」(丸山さん)

 人間関係に疲れ、大学を辞めて途方にくれた丸山さんが、絶望の中でとにかく食べるために始めたのが「接触」を伴う仕事だった。資格や能力がなくても、接触さえしていれば金が稼げる。「女性」であることを切り売りするようなことはしたくなかったが、いずれ「接触」を卒業できる日を夢想しながら新宿のセクシーキャバクラや都内の風俗店で働いた。そして昨年末、知人の紹介で芸能プロダクションに所属。いわゆる「地下アイドル」としてデビューにこぎ着けたのだった。

「アイドルになって、やっと人並みと思ってた。でもコロナになって、リモートチャットでイベントやったりするんだけど、全然参加してくれないし、お金にもならなかったよね。結局、握手とかハグしてないとダメかーって感じ」(丸山さん)

 金銭的に追い詰められ、かつて働いていたキャバクラ店経営者のツテを辿り、秋葉原のリフレ店で働くことになった丸山さん。秋葉原には今、丸山さんと同じような理由で、キャバクラやガールズバー、リフレ店で働き始める、もしくは舞い戻った女性が少なくないという。

「リフレ店って、リフレクソロジーをする店なんだけど、添い寝とか、店によってはこっそり『裏オプション』と言われる、それ以上のサービスもやる。思いっきり違法なやつ。コロナに感染したらどうしようって気持ちもあるし、また接触系の仕事かと思うけど、リモートでアイドルやってても見向きもされないし、おかしくなりそうだった。結局こっちの方が向いてるのかもしれない。そう思うと寂しいけど」(丸山さん)

 もちろん、リフレ店のほとんどは、施術者がコスプレをしていても足つぼなどのマッサージをするだけの店だ。有資格者をそろえた真面目な店も多い。ただ、一部に、風俗営業法で禁じられているサービスを提供する店も存在する。これらの秘密サービスは新型コロナウイルスの感染拡大より前から見られたものだが、今はそれをセールスポイントにして客集めにつとめている店もあるのが実態だ。濃厚接触を避けたいと客足が遠のいたのに、特別な接触が客寄せの目玉になるとは皮肉なことだ。そして、収入を確保したい丸山さんは、危険を感じつつも、その仕事で稼いでいる。

 海外では、ウイルス感染のリスクを減らすために、富裕層が非富裕層に買い物の代行を頼むなど、極力、人との接触を避ける動きがあり実践している。ここ日本でも、ウーバーイーツなど出前サービスが盛況なのは、人が多くなりがちな店舗へ出向かず接触を避ける理由もあるだろう。買い物も、配達も、様々なサービスも、アフターコロナの世界では「接触」を伴う仕事は非富裕層が受け入れるものになりつつあるのだろうか。