これほどお茶の間に浸透したラッパーは、Creepy Nuts(クリーピーナッツ)が初めてではないか。Creepy Nutsとは、日本最高峰のMCバトル大会で前人未到の3連覇を成し遂げた“日本一のラッパー”R-指定(29)と、世界最大のDJ大会で昨年優勝した“世界一のDJ”のDJ 松永(30)からなる2人組ヒップホップユニットだ。

 俳優業やタレント活動に進出するラッパーは過去にも存在するが、いわゆる“サブカル枠の芸能人”という印象が強かった。しかし、Creepy Nutsは地上波バラエティに多数出演しており、芸能界でも王道中の王道を進んでいる。

 ここ1か月ほどの主なバラエティを振り返ると、個人での出演も含め、『お笑いの日2020』(TBS)、『つぶし合いクイズ!悪意の矢』(日本テレビ)、『ダウンタウンDX』(日本テレビ)、『乃木坂工事中』(テレビ東京)、『あざとくて何が悪いの?』(テレビ朝日)と立て続けに出演。ここにさらに音楽番組などへの出演が加わるのだから、売れっ子ぶりがよくわかる。さらに10月6日からは、お笑いコンビ・EXITと組んだトーク番組『イグナッツ!!』(テレビ朝日系)が始まっている。

 さらにR-指定は俳優として、10月11日スタートの日曜劇場『危険なビーナス』(TBS系)への出演も果たした。しかも彼が演じるのは、妻夫木聡演じる主人公の亡父という重要な役どころだ。

 飛ぶ鳥を落とす勢いのCreepy Nutsではあるが、さすがにこの大抜擢にはR-指定自身も驚いたようで、〈「このドラマに出演するお話が来たときは全く信じていなくて、「絶対嘘でしょ!?」って思いました。「だって日曜劇場でしょ!」みたいな(笑)。からかうなよって思っていました。だけど、その話がだんだん具体的になってきて本当だったと認識して。改めて腰を抜かすかと思いました(笑)〉とコメントを寄せている。

 Creepy Nutsが「お茶の間の愛されキャラ」になることができた理由を、日本語ラップの魅力を発信する漫画『日ポン語ラップの美ー子ちゃん』(宝島社)の作者・服部昇大氏が分析する。

「Creepy Nuts人気の理由は、ふたりが言わずと知れたラップとDJのチャンピオンでありながら、等身大で腰が低いところにあると思います。ヒップホップは元々アメリカの価値観で作られる音楽なので、ラッパーもDJもどちらかというと偉そうにするものなんですが、最新曲『かつて天才だった俺たちへ』などのタイトルからもわかる通り、彼らは“モテない側の俺たち”や“イケてない側の俺たち”という日本人的な感覚を音楽に盛り込んでいます。

 それがラップブームで興味を持った新規ファンや、自分たちがパーソナリティを努める深夜ラジオのリスナーの若者たちの共感を誘い、今ではヒップホップに興味がなかった人たちにまで波及している気がします。

 かつては売れ線に走ったラッパーが、リスナーから『セルアウト(売れ線狙いのアーティストを揶揄する言葉)』と叩かれる時代もありました。しかし、Creepy Nutsは、ポップな曲は作りつつも、R-指定はソロではハードコアなラッパーの作品に参加したり、DJ松永のトラックはサンプリング主体だったりと、ヒップホップ心を忘れてないところも上手くバランスを取って活動をしていると思います」

 11月12日には、初の日本武道館公演を行うCreepy Nuts。この躍進を続ければ、日本人ラッパー初の東京ドーム公演も夢ではないかもしれない。

◆取材・文/原田イチボ(HEW)