売れっ子俳優であれば、多くの作品からオファーがあり出演機会が増えるのは当然だが、この秋ドラマでは、前クールの作品から連続出演するケースがとにかく多い。この連ドラ連投、コロナ禍ではなかなか難しさもあるようだ。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。

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 2日スタートの『監察医 朝顔』(フジテレビ系)で、ようやくすべての秋ドラマがそろいました。

 各作品がそろったところで目についたのは、前クールから連続で出演している俳優の多さ。

 まず主演クラスでは、玉木宏さんが『竜の道 二つの顔の復讐者』(関西テレビ・フジテレビ系)から『極主夫道』(日本テレビ系)に、田中圭さんが『キワドい2人-K2- 池袋署刑事課神崎・黒木』(TBS系)から『先生を消す方程式。』(テレビ朝日系)に、波瑠さんが『未解決の女 警視庁文書捜査官』(テレビ朝日系)から『#リモラブ〜普通の恋は邪道〜』(日本テレビ系)に、浜辺美波さんが『私たちはどうかしている』(日本テレビ系)から『タリオ 復讐代行の2人』(NHK)に。

 さらに助演では、鈴木保奈美さんが『SUITS/スーツ2』(フジテレビ系)から『35歳の少女』(日本テレビ系)に、柄本明さんが『半沢直樹』(TBS系)から『監察医 朝顔』に、奈緒さんが『竜の道 二つの顔の復讐者』から『姉ちゃんの恋人』(関西テレビ・フジテレビ系)に、志尊淳さんが『天使にリクエストを〜人生最後の願い〜』(NHK)から『極主夫道』に、筒井道隆さんが『半沢直樹』から『24 JAPAN』(テレビ朝日系)に連続出演。

 その他でも江口洋介さん、斉藤由貴さん、田中哲司さん、上白石萌音さん、中村アンさん、磯村勇斗さん、細田善彦さん、大友花恋さんなど、若手からベテランまで各世代の俳優が前クールから休みなく連続出演しているのです。

 これまでバイプレーヤーの中には積極的に連続出演する人もいましたが、ここまで多いのは、やはり新型コロナウイルスの感染拡大による影響があるから。「収録がストップし、放送がズレたことで、連続出演になってしまった」というケースが多いようなのです。

 連ドラの連続出演は何が難しく、俳優にはどんな苦労があるのでしょうか。また、視聴者はどこに注目して見ればいいのでしょうか。

視聴者が前作のイメージを引きずる

 前述したなかで、大きくイメージの異なる役柄で連続出演しているのは、鈴木保奈美さんと柄本明さん。

 鈴木さんは『SUITS/スーツ2』のクールかつスタイリッシュな弁護士事務所所長・幸村チカから、『35歳の少女』の娘が事故で25年間眠り続けたショックで笑顔を失った白髪の老女・時岡多恵に。柄本さんは『半沢直樹』の与党幹事長で悪事三昧の政治家・箕部啓治から、『監察医 朝顔』のヒロイン・万木朝顔(上野樹里)を優しく迎える祖父・嶋田浩之に、と演じる役柄がガラッと変わりました。

 このように「個性的な役から、別の個性的な役に変わる」という連続出演は、「やりがいがある」「似た役よりもやりやすい」という声をよく聴きますし、俳優業の醍醐味とも言えます。

 ただ、あまりに真逆の役柄であるケースでは、前作の反動で視聴者に「演技が大げさ」と思われやすいのが難点。俳優自身は役柄を切り換えられていても、視聴者が前作のイメージを引きずっていて、反動を感じてしまいやすいのです。ではどう見ればいいのか? 視聴者は、俳優個人ではなく、物語、テーマ、人間関係に注目することで、徐々に前作のイメージを消すことができるでしょう。

 逆に、「最も難しい」と言われているのが、「似た設定の役柄を連続で演じる」というケース。実際に玉木宏さんは『竜の道 二つの顔の復讐者』の裏社会で暗躍し「巨大ヤクザ組織」ともつながりを持つ矢端竜一に続いて、『極主夫道』の「不死身の龍」と言われた元極道・龍を連続で演じています。

 2つの役柄は背景こそ異なるものの、「裏社会の男」「コワモテの佇まい」「“竜一”“龍”という名前」などは一致。演技力の有無にかかわらず、視聴者はどうしても2つの役柄を重ねてしまうため、似た設定の連続出演は断る俳優も多いそうです。だからこそ『極主夫道』は、表情、仕草、セリフ回しなどの細部に渡って違いを見せる玉木さんの演技を楽しむ作品となっています。

特筆すべき波瑠と浜辺美波のタフさ

 俳優の中には、入念な準備をして役作りをし、撮影中はどっぷりと役に入り込むため、「終了後に役を抜く期間がほしい」「役をしっかり落としてから次の現場に行く」という人がいます。

 しかし、これまで多くの俳優にインタビューした結果わかったのは、連ドラ出演の経験が増えるほど、それらの過程が不要になり、「台本を読むと切り替えられるようになった」「撮影現場に行くと前の役を忘れられる」という人のほうが圧倒的に多いこと。たとえば、「ドラマや映画に一年中出続けている」と言われる田中圭さんは、役作りが早く、気持ちの切り換えがうまいから、難なく連続出演をこなせるのでしょう。

 そしてもう1つ、連続出演の難しさにふれる上で忘れてはいけないのが、コンディショニング。もともとドラマの撮影はバラエティなどと比べても時間が長く、屋外ロケや待ち時間などもあってコンディションの維持が難しいため、「ドラマは1年に1作程度」と決めている女優もいるくらいです。

 さらに、現在のコロナ禍による感染予防の制作ガイドラインで、これまでになかったストレスが俳優たちの心身にのしかかりました。常に換気を求められるため、カゼをひいたり、のどの調子が悪くなったり。あるいは、ひと息つく雑談などのコミュニケーションが取れず、時間制限で失敗の許されない緊張感に襲われるなどの影響で、今夏ドラマのクランクアップ後に体調不良を訴える女優がいたそうです。

 その点で驚かされるのは、細身の体で2作連続主演を務める波瑠さんと浜辺美波さんのタフさ。2人は「主演が熱を出しただけで撮影が止まり、多くの共演者やスタッフに迷惑をかけてしまう」というプレッシャーを感じさせない心身の強さがあるからこそ、連続出演をこなせるのでしょう。

 前述した連続出演中の俳優たちは、演技力はもちろん心身のタフさも持ち合わせていますが、それでも年明けの冬クールは、さすがに休むのではないでしょうか。だからこそコロナ禍で過酷な状況の中、熱演を続ける彼らの奮闘に注目してほしいのです。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。