気が付けば、山田裕貴が毎クールのようにドラマに出演している。来年1月からは、主演ドラマ『ここは今から倫理です。』(NHK総合)と、『青のSP−学校内警察・嶋田隆平−』(フジテレビ系)の出演作2本が同時期に放送されることが決定。2011年に特撮ドラマ『海賊戦隊ゴーカイジャー』で俳優デビューした山田だが、30歳でついにブレイクを果たした。

 山田の知名度を一気に上げたのが、2019年に放送されたNHK連続テレビ小説『なつぞら』だろう。同ドラマにおいて、山田は、広瀬すず演じるヒロインの幼馴染・小畑雪次郎役を好演。雪次郎の三枚目なキャラクターは「かわいい」と人気を集め、彼をメインにしたスピンオフドラマ『十勝男児、愛を叫ぶ!』が制作されるに至った。

 かつては元プロ野球選手・山田和利の息子として紹介されることが多く、「親のコネ」と謂れなき中傷を受けることもあったという山田。しかし、現在の活躍ぶりを見るに、いまや山田の父親が誰か知らないファンも大勢いるのではないだろうか。

 若手俳優界に造詣が深く、山田の俳優活動を追ってきたというライターの西森路代氏は、印象深かった山田の役どころをこう振り返る。

「『海賊戦隊ゴーカイジャー』に出演後、『GTO』や2013年にCS放送フジテレビTWOで放送されたドラマ『イタズラなKiss〜Love inTOKYO』などに出演していて注目していましたが、個人的に忘れられないのは脚本・演出を前田司郎が手掛けた2016年の舞台『宮本武蔵(完全版)』での主演でした。

 2015年に始まり映画化もされた『HiGH&LOW』シリーズでは、鬼邪高校のアタマである村山良樹役を演じました。山田さんは、村山という役を自分のものにし、成長させるのと同時に、俳優としての存在感もどんどん増していって、ある意味、このシリーズに出演する俳優たちに『自分も“第二の村山”になろう』と思わせたのではないかと思います。

 2019年は、朝ドラ『なつぞら』の雪次郎役で広く知られることになりましたが、劇団イキウメの前川知大が脚本・演出を手掛けた舞台『終わりのない』で主演を務めるなど、充実した1年だったのではないでしょうか。同年末に取材した際に、山田さんは『新人賞っていつまで獲れるのかな』と言われていましたが、その直後、まさに『終わりのない』で文化庁芸術祭賞演劇部門新人賞を受賞しました。舞台を見た一観客としても納得の受賞でした」

 西森氏が続ける。

「今年は、1月に『SEDAI WARS』『ホームルーム』(いずれもMBS)のふたつのドラマで同時に主演。特に小林勇貴監督の『ホームルーム』では、表向きはさわやかな人気者なのに、女子生徒へのいじめを自作自演し、そのことで女子生徒から頼りにしてもらおうとしているストーカー教師という、一言で説明しただけでは、なかなかその真意が伝わりにくい、ある意味難しい役を演じました。この作品では、山田さんが倒錯した愛情を抱いた主人公の気持ち悪さ、罪深さ、加害性などをしっかりと演じきったことで、ただ“センセーショナル”なだけで終わらないものになっていました。

 泥臭い役やカッコ悪い役にも果敢に取り組む姿が良いなと思える俳優なので、今後もいろんな役を演じてほしいですね」

 山田は2017年7月13日、〈ほんとちょっと前までは電車賃どうしようとか飯どうしようとか7年経って、いろいろお仕事もやらせてもらって、充実させてもらって、贅沢は出来ないけど普通にごはんが食べられる。友達と一緒に普通に飯が食べられる。幸せだなぁって今言葉が漏れたから呟く。(笑)感謝だ。ありがてぇ〉とツイートしていた。正統派イケメンである山田だが、ひと筋縄ではいかない役柄を演じる機会が多かった。しかし、その経験が大きな武器となり、現在では、人気と実力を兼ね備えたカメレオン俳優として評価されている。

 しかし、山田が公言する“最終目標”は、「死んだときにニュースになるような俳優、緊急速報で出る俳優」だ(「Yahoo!ニュース」インタビュー記事での発言より)。道のりは順調とはいえ、その壮大な目標からすると、まだ旅の序盤と言えるのかもしれない。人生を賭けて俳優業に挑む彼は、今後どんな役柄を演じていくのか? “長く推す”楽しみのある役者だ。

●取材・文/原田イチボ(HEW)