たとえ名前を聞いてピンとこなかったとしても、風貌はよく知っているという人は多いに違いない。そのぐらい、俳優で演出家の池田鉄洋、通称“イケテツ”は今やドラマや映画の世界で欠かせない存在になっている。

 11月20日から公開されたコメディ映画『ヤウンペを探せ!』で、俳優の池内博之や松尾諭、お笑いタレントの宮川大輔らとともに主要登場人物を演じている池田。10月から放送がスタートした深夜ドラマ『バベル九朔』(日本テレビ系)でも物語の要となる探偵役でレギュラー出演しており、個性的かつ唯一無二の存在感を放っている。

 1970年生まれの池田は、大学在学中より演劇活動を始め、1993年に劇団「猫のホテル」に参加すると演劇人として本格的なキャリアをスタート。いわゆる小劇場をはじめとした様々な舞台で活躍しつつ、1990年代終わりごろからは映画やテレビドラマにも出演するようになる。初出演した映画は1999年に公開されたナンセンス・コメディ『毒婦マチルダ』だった。

 2000年代に入るとお茶の間にも広く知られるようになる。印象的な役柄の一つに、人気ドラマ『トリック』(テレビ朝日系)シリーズで演じた秋葉原人役があるだろう。俳優の生瀬勝久演じる矢部謙三とのコンビは人気を博し、2010年からはスピンオフドラマ『警部補 矢部謙三』(テレビ朝日系)も放送された。同時期に放送された『サラリーマンNEO』(NHK)シリーズにおける、やはり生瀬とのコミカルなコンビも注目を集めた。

 俳優として確かな存在感を放つ一方、2004年には「猫のホテル」のメンバーらとともに、自身が主宰する劇団「表現・さわやか」を旗揚げした。もともとコメディの脚本を書くために演劇活動を始めたという池田が、演出家・脚本家として本領を発揮し、“苦笑系”のコントを披露するという独創的で脱力感溢れる内容がファンを虜にした。

「表現・さわやか」はファンに惜しまれつつも2019年に解散したが、池田は今年10月から放送されているテレビドラマ『どんぶり委員長』(BSテレ東、テレビ大阪)の脚本を担当。コミカルなタッチで描かれる学園ドラマが話題を呼んでいる。同ドラマでは池田自身が俳優としてもカメオ出演しており、短いシーンながら強い印象を視聴者に残している。

 池田がこれほどまでに演劇や映画の世界で欠かせない存在となった理由は何か。「表現・さわやか」のメンバーとしてともに活動し、テレビドラマでもたびたび共演してきた女優の佐藤真弓氏は、「イケテツのちょっとここが凄い」と題して次のような魅力を語ってくれた。

「湯水のように溢れ出るアイディアの人なんです。劇団時代、台本には文字としては一切書かれていない“おもしろ”を行間から捻り出し、または捻り込む技が見事過ぎて、たびたび呆れるほどでした。

『表現・さわやか』では、イケてる女からイケてない女まで、女装へのこだわりが強かった。そして彼の女装は意外に可愛い。ただ、年々身体が大きくなっていったので、衣装に使う布量も凄かったです。

 それと、どんな時も堂々として動じない。本番中、セリフを忘れたイケテツが高舞台の上から『(セリフ)なんだっけ?』と、大きな声で叫んだことがありました。窮地に陥って逆に輝く人を目の前で見ました。

 あと、美脚。長いし綺麗。羨ましいです」

 呆れるほど面白い。そんな声が元劇団メンバーから思わず漏れてしまうほど、“イケテツ”は溢れ出る才能を発揮する。50代に突入した今、芸能界でますます重要な存在となっていくに違いない。

◆取材・文/細田成嗣(HEW)