三浦春馬さん(享年30)最後の主演映画『天外者(てんがらもん)』が、12月11日から全国で公開中だ。公開初日から3日間で観客動員数約11万8000人、興行収入は約1億6600万円を記録し、ランキングでは初登場4位と好スタートを切った。口コミには「三浦春馬の演技に圧倒された」、「最後にして彼の代表作」など、主に主人公・五代友厚を演じた三浦さんへの賛辞の言葉が多く並んだ。映画や演劇などに詳しいライターの折田侑駿さんも「まさに三浦さんのための映画」と話す。

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『ブレイブ -群青戦記-』や『太陽の子』など、公開を控えている三浦春馬さんの出演映画はまだあるが、主演としては最後の作品である『天外者』。本作は、現在の大阪商工会議所や造幣局の創設など“大阪経済の礎”を築き、「天外者」(鹿児島の方言で“すさまじい才能の持ち主”の意)と称された偉人・五代友厚の生涯を描いた歴史群像劇。五代の“想いと志”を次世代に継承するため、製作総指揮を務めた大阪弁護士会所属の弁護士・廣田稔(74才)氏をはじめ、大阪財界の有志ら中心に映画製作の 「五代プロジェクト」を立ち上げ、7年越しで公開に至った。

 映画化に挑んだのは、『利久にたずねよ』(2013年)、『サクラサク』(2014年)、『海難1890』(2015年)でタッグを組んできた監督の田中光敏(62才)と脚本家の小松江里子(58才)だ。三浦さんが演じる五代の生き様を、オリジナルストーリーで壮大かつ繊細に描き出している。

 また、三浦さんを中心とした座組も素晴らしい。五代の盟友ともいえる坂本龍馬役に三浦翔平(32才)、ダブルヒロインには森川葵(25才)と蓮佛美沙子(29才)がそれぞれ扮し、榎木孝明(64才)、かたせ梨乃(63才)、筒井真理子(60才)、生瀬勝久(60才)といったベテランが脇を固めている。この並びを見ただけで手堅い作品となること請け合いだ。

 三浦さんと三浦翔平との共演作といえば、今秋放送された『おカネの切れ目が恋のはじまり』(TBS系)が記憶に新しいが、2008年放送の『ごくせん』(第3シリーズ/日本テレビ系)でも共演を果たしている。子役としてキャリアをスタートさせた三浦春馬さんは、その人生のほとんどを「俳優」として過ごし、『ごくせん』の頃から10代とは思えない個性と才能を見せつけてきた。当時の三浦さんのみずみずしい芝居や体の線の細さは一際目を引き、少年から青年へと成長するこの時期だからこそ見られる彼の貴重な作品と言える。

 しかし本作では、線の細いかつての姿はない。五代が刀を構えた時にスクリーンから伝わる気迫には、客席で思わず息を呑んでしまったほど。もちろん、カメラワークや演出の効果も大きいだろうが、三浦さんの鍛え上げられた体幹をはじめ、凛々しい表情や主役としての存在感など、これまでの経験から培われてきたものがスクリーンいっぱいにみなぎっていた。『天外者』での演技には、まさに彼の集大成のようなものが垣間見られ、三浦さんの生き様が刻まれているようだった。

 五代の活躍を追っていると、彼を演じる三浦さん自身とどこか重なるものも感じた。両者の共通点を一言で言えば、周囲を魅了して止まず、変えていく点である。劇中で五代は、「誰もが夢を見られる国にするんじゃ」という印象的なセリフを口にするが、これは、五代の強力なリーダーシップのもと、周囲と手を取り合って明るい未来を作ることを見据えた言葉。その言葉を口にする彼自身が皆の希望となっている。

 三浦さんが生涯をかけて取り組んできた「俳優」も見る者に多くの夢を与える職業であり、彼の作品にかける熱量やプロ意識、全身全霊で挑む姿は強いリーダーシップを発揮し、周りのキャストやスタッフにも大きな影響を与えていたことだろう。黎明期の日本において多くの人に影響を与え、激動の時代を駆け抜けた五代との重なりを感じずにはいられない。

 かくいう筆者も、三浦さんからは多くの影響を受けてきた一人だ。1990年生まれの同い年であり、彼の活躍は早い段階から追ってきた。そんな中でも、2019年に上演されたブロードウェイミュージカル『キンキーブーツ』での彼の姿は鮮烈に印象に残っている。2013年に本場で同ミュージカルを観劇し衝撃を受けた三浦さんは、日本版が上演される際には必ずや自分が演じたいと熱望し、オーディションを経てドラァグクイーンのローラ役を射止めたという。広大なステージ上で堂々と歌い、キレのあるダンスを披露する彼の自信に満ち溢れた姿と笑顔は忘れられない。目標のため自身に大きなハードルを課し、そのために鍛錬を積み、やがて達成する姿をステージ上で目の当たりにした筆者は、勇気をもらい、夢を見せてもらったのだ。あの劇場にいた多くの人がそう思ったのではないだろうか。

 そうした三浦さんの生き様が、偉業を成し遂げた五代友厚という人物との重なりを感じさせた。五代と同様に語り継いでいくべき人物である。

【折田侑駿】
文筆家。1990年生まれ。映画や演劇、俳優、文学、服飾、酒場など幅広くカバーし、映画の劇場パンフレットに多数寄稿のほか、映画トーク番組「活弁シネマ倶楽部」ではMCを務めている。