厚生労働省によると、2020年5〜7月の妊娠届出数は20万4482件。前年同期比で11.13%減となった。逼迫する医療現場、家族間でさえ不自由を強いられる人の行き来、世の中全体に漂う不安感……それらが妊娠届出数の減少の背景にあるのかもしれないが、一方でそうしたアゲンストな状況をたくましく乗り越えた女性もいる。フリーアナウンサーの高橋真麻さん(39才)に、コロナ禍の出産を経て思ったことについて語っていただいた──。

 真麻さんは2020年4月末に第1子となる女児を出産した。4月7日に緊急事態宣言が発出されたあとのことで、家族は出産に立ち会うことができなかった。

 出産から4日後に退院した真麻さん。そこからコロナ禍での育児が始まる──。育児のベースは夫婦ふたりの共同作業。産後2か月間は、在宅での仕事が増えた夫の協力があったものの、止まらぬ夜泣きに途方に暮れたこともあった。

「夜の11時から朝方3時までの4時間、私が寝ている間、夫がおむつもミルクの世話もやってくれました。この『夜中の3時交代制』、本当に助かったし感謝しているんですけど、なぜか3時の交替後から朝10時までずっと泣いていることがあって……。“いまこんなに泣いてるってことは、3時までは静かだったんじゃないの? もしかして夫のシフトのときは、ラクしてたんじゃないの?”なんて、思ったりもしましたけど(笑い)」(真麻さん・以下同)

 ミルクもあげたし、おむつも替えた。室温調節だってちゃんと保っている。なのに、なんで7時間も泣いてるの? 寝不足でヘロヘロになってしまう。テレビをつければ、相も変わらずコロナのニュースばかりが流れている……。

「『コロナ疲れ』だと多くの人が吐露するなか、『私もこれ、コロナ疲れだわ』って一瞬、思ったんです。でも、あれ? ちょっと待てよ……『私のはコロナ疲れじゃなくて産後疲れだよな』って思い直しました。

 考えてみれば、そもそも世の中のすべてのお母さんたちみんながこうした苦労をずっと経験されてきたんだって、そのときハッと気づいたんです。コロナというマイナス環境があったから、自分ひとりが苦労したように思っていたけど、実は出産に伴う苦労はすべての母親が体験してきたことなんだ、と改めて気づいたんです。産後、たくさんの苦労を背負い込む世の母親たちは、いってみれば“ひとりコロナ”みたいなものだったわけですよね。

 そう考えたら、世の中のお母さんたちって本当にすごいなって思って。コロナ禍でなければ、みんな普通にバリバリ仕事をして外食やら飲みに行ったり、海外旅行にも出かけているなかで、自分だけ家にこもって育児に追われている状態だったはず。それはもう『どうして私だけ?』と、疎外感や孤独感を感じて相当つらかっただろうなと……。

 でも、このご時世、リモートワークで夫が家事や育児を手伝ってくれるし、昼間に出前をとるのも罪悪感なくできる。だから、逆にいうとコロナ禍での産休育休は、いままでのお母さんたちに比べて随分、ラクをさせてもらっているのかもしれません」

 コロナ感染拡大の影響で、3密を避けるために「母子学級」など、ママらの集まりも次々と中止に。育児の情報交換ができないと不安の声も多く上がっている。真麻さんはどうしているのだろうか?

「幸いなことに、周りの友人が何人も出産をしているんです。橋本マナミちゃん(36才)とフジテレビの山中章子アナウンサー(34才)、フリーアナの川田裕美ちゃん(37才)。フジテレビ時代の先輩・戸部洋子さん(39才)は私より1か月前に2人目を出産されたということで経験値も高いし、いつも後追いで育児の情報を教えてもらっています。

 同世代のママ友たちとのコミュニケーションツールはLINEです。この状況下、どうやって子育てしているのかもよく聞きます。ただ、コロナに対する意識というのは人それぞれですし、各ご家庭によっても異なるので、皆さんの温度感みたいなものを知るといった方が正しいかもしれません。『お散歩に行ってますか?』とか『人を家に呼んでいますか?』というような質問をして、何割ぐらいの人はこうしているんだなと、あくまでも参考にしているっていう感じですね」

コロナが終息したら家族で海外旅行に行きたい。だが、「今回のコロナによって、改めて学ぶべき点も多い」という。

「小さい頃、帰宅後はもちろん、人の家に行ったら手洗い・うがいは当たり前のことだと教わってきました。それが大人になって薄れてきつつあったなか、原則に戻った。これはよいことだったと思います。

 コロナもそうですが、災害が起こったときなども、その人の価値観が如実に表れると感じました。いままで楽しく遊んでいた友達でも、コロナに対する危機感や身の処し方によっては、ちょっと合わないなと感じるかもしれない。これまで気にしなかった違和感に気づくかもしれないですし。家族間、友人間、いろんな価値観を見つめ直すきっかけになったと思います」

レールの上は歩かせない

「以前の私は、将来、自分に子供ができたら、私立の学校に通わせてお稽古事はこれをさせて大学を卒業したらどこそこに就職して……という考えでした。でも、いざ娘が生まれてきてからは、“受験”もだとか“お稽古事”なんてまったく頭に過らなくなりました。

 これまで私が歩んできた人生、後悔はないんですけれど、結構、きっちりと敷かれたレールの上を真面目によい子で育ってきたというのがあって。しかも“高橋英樹の娘”ということで、何か取捨選択をするときは頭のなかで『この道を選んでもいいかな』と、常に親の名を傷つけないように生きてきたんです。

 30才を過ぎたあたりから、自分のキャリアやアイデンティティーが確立されてきて、『いま、私は高橋真麻の人生を歩んでいるんだ』とようやく自由を実感できるようになりました。

 だから、娘にも同じような負担を背負わせたくない。自分のやりたいことに突き進み、伸び伸びと楽しい人生を送ってくれたらいいです。それが親としていちばんの幸せですね」

【プロフィール】
高橋真麻(たかはし・まあさ)/1981年10月9日生まれ、東京都出身。2004年、フジテレビに入社。アナウンス室に配属。バラエティーや報道番組で司会を務めた後、2013年に退社。現在はフリーとして多方面で活躍中。2018年に一般男性と結婚。2020年4月に第1子を出産。

取材・文/加藤みのり 撮影(高橋真麻さん)/浅野剛

※女性セブン2021年1月21日号