103年前の史実「米騒動」に基づいて、「家族の命を守りたい!」と立ち上がった富山県の女性たちの活躍を描いた映画『大コメ騒動』が1月8日から全国公開されている。同作に出演する室井滋さんと柴田理恵さん、そして本木克英監督という、富山出身の3人が語り合った。

〈1918(大正7)年に富山県の“おかか”が起こした「米騒動」を基にした映画『大コメ騒動』。富山の貧しい漁師町で高騰するコメの価格に我慢が限界に達したおかか=母たちが立ち上がる姿を描き、富山出身の本木克英監督を筆頭に、作品には富山ゆかりのキャストが集結。おかかたちのリーダー・清んさのおばばを室井滋、おかかと対立する米商店の女将・とみを左時枝、妹・きみを柴田理恵が演じ、立川志の輔、西村まさ彦、内浦純一らも顔を揃える〉

柴田:今回、富山の先輩である左さんの妹を演じながら、「私たち、顔が似ているなぁ」と思って(笑い)。頬骨や鼻の形が似ているし、うちのおばちゃんと左さんがそっくりなんですよ。きっと富山でも同じ系統の顔なんでしょうね。映画では裕福で身なりの整ったきれいな役でしたが、自分の性としてはおかか側だと思います(笑い)。おかかだったら、清んさのおばばの手下のようなポジションをぜひやってみたかったなぁ。

本木:冨樫真さんが演じてくださった、おばばの腰巾着役ですね。

室井:もしその役だったら、おばばがいじめてやったんに(ニヤリ)。

柴田:わはは! でもその関係性に喜びを見出す手下って、実際にもいるじゃないですか。強いリーダーにいじめられながらもしっかりついていく感じ、富山にはありますよね。

室井:うん、うん。

本木:婦人会的な制度というか、女性のネットワークの存在は、ぼく自身も幼い頃から肌身に感じていました。

柴田:姉の店がやり玉に挙がって新聞片手に「ねぇちゃん、ねぇちゃん!」と駆け込むあたり、きみにも腰巾着の要素は少なからずありましたけど。でも、とみときみも、昔は清んさのおばばと一緒で貧乏だったんですよ。それなのにいいところへ嫁に行ったもんだから、まるで自分たちが元からいいところの人だったような言い方をしてるんです。それがまた庶民だなと思っちゃう。

本木:人間らしい部分でもありますね。そういえば富山の女性はとっても夫思いだと、とみ役の左さんに聞いたのですがいかがでしょう。

室井:すごく夫思いですよ。理恵ちゃんだって、ねぇ?

柴田:そうそう。滋ちゃんだってそうじゃない。富山の女性はみんなすごく夫思いだもの。

室井:ウチのおじさんは夫じゃないけど。

柴田:あぁ、そうだったね(笑い)。

本木:ところで柴田さん、清んさのおばばをどうご覧になられました?

柴田:おばばは強いなって。清んさのおばばみたいな人が本当に近所におられたもの。社会の中でもおばばは絶対的な存在。ウチのおばばは辻政信に土下座させたことがあるの。

室井:えーーっ!!

本木:あの関東軍の……!?

室井:ほんとけ!

柴田:(うなずきながら)辻さんが戦争から帰還して参院選かなんかで近くへ来たときにおばばが、「なんで、おまさ、生きて帰って来たがだ!」と言ったんだって。私のおじさんが戦死してしまったから。

室井:おまさ、は「あなた」ね。

柴田:「ウチの大事な息子は死んだがに、おまさはなんで、生きて帰って来たがだ! 土下座して謝れっ」と、おばばが詰め寄ったんですって。

本木:それで辻政信に土下座を。

柴田:うん。おばばクラスになるとそういうことを平気でするようになるんですよ。よって富山の女性は強い。どうしてあんなに強くなるんだろうかと、不思議だけど(笑い)。

室井:年を重ねるとね。理恵ちゃんも私も昔からこうじゃなかったと思うもの。でもだんだん、そんなふうになってきている……(笑い)。それともう1つ、富山は年寄りを立てる風習が強いんじゃないのかな。最近は核家族化が進んでいるけれども昔は大家族で住んで、おじいちゃんでもおばあちゃんでも長老の意見にまず耳を傾けるという意識が、私たちも子供の頃からありましたよね。

柴田:そうそう。おばばは長く生きているから「こういうときにはこうするもんだ」という知恵を持っている。おばばに聞けばたいていのことに答えが出てくる、というのはウチも同じでしたよ。映画でも井上真央ちゃん演じるいとの姑・タキの語る言葉に、食卓で家族がじっと耳を傾けるシーンがありましたね。

本木:自分が苦労をした経験を振り返って、おかかはどんな覚悟で家族を守っているかという話をタキは孫たちに伝えるのですが、年長者からそうした体験談を聞く機会は最近少なくなりましたよね。自分もやっぱりじいさん、ばあさん、さらにそのお仲間のネットワークから生き方を学んで育ってきたので大事にしたいと思って、映画にも入れました。

柴田:ネットワークね。よそのお嫁さんにまで説教したりしてね。

室井:ああ、する!(笑い) 自分のところならわかるけど、よその家のお嫁さんや全然関係ない人にも。

柴田:誰にでも、延々と説教を。

本木:おかしいと感じたら、近所の人にもちゃんと意見する。腹に溜めないのが富山の女性ですよね。劇中で、おかかたちが清んさのおばばを囲んで米騒動につながる大事な意思決定をしたときにも、お互いへの不満や気持ちを打ち明け合った。相手が自分のことを嫌っているとわかったうえで団結すべきときには力を合わせる。陰にこもらないコミュニケーションは富山らしいですね。

柴田:富山らしいといえば、清んさのおばば。あれはおばばが偉いんですよ。布団で死んだふりなんかして、おかかたちがこれからは自分たちがしっかりしなきゃいかんと団結して飛び出した途端に、にやりと目を開けて金歯を“キラ〜ン”とさせて。

室井:あれは自分でもおかしかった。劇中、おかかたちが大挙して米商店へ押しかけたことで見せしめに清んさのおばばが投獄されてしまう。おばばは牢屋で抵抗を続けるも次第に衰弱し、リーダーを失ったおかかたちの結束は次第に緩んでいく……。そんな中おばばが釈放され、おかかたちは床に伏して“死にかけた”おばばを囲んで決起集会を開き、再び立ち上がる。

柴田:リーダー格のおばばはみんなをまとめるために、ああやって知恵を働かせる。あの感じ、よくわかるなぁ。で、後になっておばばは偉いもんだねと、みんな言うんです。

室井:おばばは偉大なのよ。ウチの祖母も孫娘に格言とまでは言わないけれど、「悪いことがあったら落ち込むのではなく、厄落としできたと思いなさい」など教訓的なことを、よく説いてくれましたね。子供の頃はどういう意味なんだろうと思ったけれど、忘れない。大人になったいまでも何かにつけ、祖母の言葉を思い出します。そういう役割が富山のおばばにはあるんじゃないのかな。

柴田:私が小さい頃、宿題をさぼっていると、ウチのおばばは「明日ありと 思う心の仇桜、 夜半に嵐の吹かぬものかは!」と怒って、この世は儚いよと。面倒くさがって「明日やるわ」なんて言うと、必ずそうたしなめられたものです。

【プロフィール】
室井滋(むろい・しげる)/1981年に映画『風の歌を聴け』でデビュー。『居酒屋ゆうれい』『のど自慢』『ヴィヨンの妻〜桜桃とタンポポ〜』などで映画賞を受賞。『ヤットコスットコ女旅』や絵本『会いたくて会いたくて』(1月末発売)ほか著書多数。

本木克英(もとき・かつひで)/1963年生まれ。1998年『てなもんや商社』で監督デビュー、藤本賞新人賞を受賞。『超高速!参勤交代』でブルーリボン賞作品賞、日本アカデミー賞優秀監督賞など、『空飛ぶタイヤ』で日本アカデミー賞優秀監督賞を受賞。

柴田理恵(しばた・りえ)/劇団東京ヴォードビルショーを経て1984年にWAHAHA本舗設立。2016年6月には出身地である富山市特別副市長に就任。主な映画出演作に『化粧師 KEWAISHI』『その日のまえに』『ほしのふるまち』『来る』など。

構成/渡部美也 撮影/政川慎治

※女性セブン2021年1月21日号