井上真央主演の映画『大コメ騒動』が話題を集めている。特に、“清んさのおばば”を演じる室井滋(62才)の存在感が際立っている。コラムニストのペリー荻野さんが室井の演技について解説する。

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 先日公開された映画『大コメ騒動』は、第一次大戦の好景気に沸く1918(大正7)年、富山の小さな漁師町で米の急騰に怒ったおかか(女房)たちが「家族に腹いっぱい食べさせたい!」と起こした「米騒動」を痛快に描く。

 監督は富山出身の『超高速!参勤交代』の本木克英。室井滋、立川志の輔、西村まさ彦、柴田理恵、左時枝など富山出身キャストも多数出演。米米CLUBが書き下ろした主題歌『愛を米て』も話題だ。

 私も早速見た。いよいよ行動に出た大勢のおかかたちが、砂浜を走って米俵やそれを運び出す男たちに体当たりする。その先頭に立つのが、真っ黒に日焼けした主演の井上真央、すぐ後ろでしゃもじ片手にバシバシと戦っているのが鈴木砂羽、みんな縄は投げるわ、棒は振り回すわ、地元エキストラの女性たちも参加して、もう大変。個人的には「米騒動」については教科書に載っていたな〜というくらいの知識で、これが「井戸端から社会を変えた」「日本史上初めて女性が起こした市民運動」と言われていることや、この騒動が新聞に「女一揆」と大きく報じられて全国に広まったということ、その結末も含めて、「そうだったのか」と驚くことばかりであった。

 そんな中、私が注目したのは、室井滋のおばばぶりだ。室井が演じるのは、おかかたちのリーダーである“清んさのおばば”。おばばは、出稼ぎに出た夫を待ちながら毎日60キロ(!)もの米俵を担いで働くおかかたちに頼りにされる存在だ。米の値段を吊り上げる米屋にも堂々と苦情を言い放ち、大事な米の運び出し阻止のため、おかかたちと動く。合言葉は「コメを旅に出すなー!!」である。ぼーぼーの白髪頭にごつごつした日焼け顔、鋭い眼光にへの字口。なかなかに迫力があるおばばだ。

 室井のおばばといえば、2007年の映画『ゲゲゲの鬼太郎』の砂かけ婆も印象深い。この映画も本木監督、井上真央出演作である。灰色の着物にどろーんとのびた白髪、目の周りには真っ黒いクマができた砂かけ婆、いざとなると爪の伸びた手から砂をかけて目つぶしする妖怪だ。だが、比べてみると砂かけ婆よりも清んさのおばばのほうがインパクトがある感じが。人間なのに…。資料によれば、幼いころ、家の近所に清んさのおばばに相当する人がいて、室井はその姿を見ただけで泣いていたらしい。おばばがリアルでイキイキして見えるのは、実体験があったからなのだ。

 そして、このおばばっぷりを見て、私は樹木希林を思い出した。樹木希林が若いころから老け役をしたことはよく知られる。代表作のひとつ1974年の『寺内貫太郎一家』では主人公の貫太郎(小林亜星)の母きん役で孫の西城秀樹から「ばあちゃん」と呼ばれた。実際は30代に入ったばかりで、ぼさぼさ頭にシミの出た老けメイクに徹し、手の若さが映らないように手袋をしていた。そうして出来上がったばあちゃんは、わがままなことも言うが、時には人生の知恵とか鋭い人間観察力も見せる。ドラマの面白さの中心だった。

 物語に厚みを出すおばばになれる俳優はとても少ない。室井滋は、エッセイやナレーションでも評価が高い。令和の名物おばば女優として、いろいろな場に出没してほしい。