関ジャニ∞の大倉忠義(35才)が主演を務める新ドラマ『知ってるワイフ』(フジテレビ系)が話題だ。既に放送された3話までの視聴率は6〜7%台と芳しくないものの、SNSを覗くと「ワンオペ育児で感情的になる妻がリアル」「育児に非協力的なダメ夫の典型」といった共感の声が多く並ぶ。中でも、ヒロインを務める広瀬アリス(26才)に大きな注目が集まっている。映画や演劇などに詳しいライターの折田侑駿さんが、彼女の魅力について解説する。

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 この冬新たにスタートした『知ってるワイフ』は、韓国の同名ドラマのリメイク作。リメイクに際し多少の設定の変更が施されてはいるが、一組の夫婦をめぐって“本当に大切なことは何か?”という問いを描いている点は同じ。「自分の結婚生活はこんなはずではなかった。過去に戻って人生をやり直したい」と嘆く恐妻家の主人公・剣崎元春(大倉忠義)が、ある日過去にタイムスリップし、妻(広瀬アリス)を別の女性と入れ替わってしまう物語だ。

“恐妻”を演じているのが広瀬である。モデル業を活動の中心としていた時期から数えると10年以上のキャリアを持つ彼女は、いまや映画やドラマなどエンタメ界に欠かせない存在だ。コメディエンヌとしての才能を開花させた連続テレビ小説『わろてんか』(2017年)を皮切りに、“月9”でメインキャストの一人に名を連ねた『ラジエーションハウス〜放射線科の診断レポート〜』(2019年)、主演映画『氷菓』(2017年)や『巫女っちゃけん。』(2018年)に続き、2020年には映画『AI崩壊』と『サイレント・トーキョー』でベテラン勢に囲まれながら重要なポジションを担った。ジャンルや作品の規模にかかわらず、とにかく引っ張りだこなのだ。

 今でこそ俳優としてのキャリアが正当に評価されている広瀬だが、かつては“広瀬すず(22才)の姉”ということばかりがフォーカスされていた。しかし、先に挙げた作品群からも分かるように、芸人や放射線技師、粗暴な性格の巫女、新米刑事など早くからさまざまなキャラクターに挑戦し続け、今では“何でも演じられる俳優”というイメージが広く浸透しているようだ。バラエティ番組などで見せる素の一面とのギャップも好評で、それがさらなる俳優としての評価にも繋がっているのだろう。

 そんな広瀬の演じ手としての器用さは、今作『知ってるワイフ』でも遺憾なく発揮されている。彼女は、瑞々しい女子高生姿から就活に苦労する大学生、感情的な恐妻、爽やかで理知的な社会人まで、年代や置かれている環境ごとに見事にヒロイン・澪を“演じ分け”ている。澪という一人の人間が年齢を重ねていくにつれての変化や、元春が過去を変えてしまったことによって見えてきた本来の彼女の可能性を、巧みに表現しているのだ。それぞれの澪があまりに乖離してしまえばこの物語のリアリティは失われてしまうはずだが、この不可思議な物語を成立させるため、広瀬が背負っているものは大きいと思う。

 広瀬が恐妻を演じているときの、夫に向けた「フザケンナ!」などの罵声の数々は強烈だ。演じる広瀬の形相は凄まじく、テレビの前でつい耳を塞いでしまう。だが、筆者はここにも広瀬の芝居の幅を感じた。広瀬は夫に対し、怒りという一方的な“アクション”を起こしているように見えるが、実際は元春が放つ“ダメ夫ぶり”によって澪の怒りがさらに増幅する。広瀬は“ダメ夫”を演じる大倉の好演を受け取って、“リアクション”としてまた別の怒りを表現しているのだ。

 その一方で、彼女が見せる天真爛漫で奔放な高校生姿には違和感や嘘くささが微塵も感じられない。もちろん、演じる本人の見た目が若く、学生服を着ているという事実もあるだろう。しかしそれ以上に、恐妻役や、社会人役を確実にものにしているからこそ、対極にある高校生役を演じられるのではないだろうか。広瀬本人は一般的な社会人経験はないようだが、同世代の俳優たちとの共演ばかりでなく、主演という大役を担ったり、時には作品の脇役としてベテラン勢に交ざってキャリアを重ねてきたことが、自身が経験したことのない役柄にも活かされているのではないかと思う。

 先述したように、そもそもキャリアから見て、広瀬の芝居の振れ幅は大きい。本作での彼女は、一つの作品、同一人物でさまざまな姿を披露できる、彼女の本領発揮の機会ともなっているのだ。澪の笑顔、悲しむ顔、怒った顔、どれもがそれぞれに強い魅力を放っている。大倉演じる元春が、そんな澪に翻弄されてしまうのも頷けるというものだ。

【折田侑駿】
文筆家。1990年生まれ。映画や演劇、俳優、文学、服飾、酒場など幅広くカバーし、映画の劇場パンフレットに多数寄稿のほか、映画トーク番組「活弁シネマ倶楽部」ではMCを務めている。