この4月からアメリカを拠点に活動することを発表したお笑いタレント・渡辺直美。渡米の直前には東京五輪の開閉会式をめぐる問題に巻き込まれる形でも話題になった彼女だが、今後は“世界で通用するエンターテイナー”としてますます活躍しそうだ。

 今年3月に東京五輪の開会式演出問題が報じられると、そこで名前の挙がった渡辺直美は翌18日、所属する吉本興業を通してコメントを発表。その中で、「私自身はこの体型で幸せです」「それぞれの個性や考え方を尊重し、認め合える、楽しく豊かな世界になれる事を心より願っております」とコメントしたことが、“神対応”として世間から称賛された。

 4月からは、アメリカへと拠点を移して活動することを発表している渡辺。吉本興業には所属したままだが、すでにアメリカのエージェント会社2社と契約。国内でのレギュラー番組への出演は3月いっぱいで終了することになり、自身のInstagramには「皆様が超楽しめる様な最強のエンターテイナーになれるように、お勉強してきます」と書き記している。

 もともとアメリカのシンガーソングライター・ビヨンセのモノマネでブレイクした渡辺。当初は一発屋のように見る向きもあったが、その後も『笑っていいとも!』(フジテレビ系)をはじめとしたバラエティ番組での活躍を続けていった。

 転機は2011年に開設したInstagramだった。徐々に国を超えて話題を集めるようになり、2016年には中国のメディアで「太っていてもオシャレ」と紹介された。彼女の国際的な人気の高さが日本にも伝わるようになるとともに、「太っていることは恥ずかしい」と見なされてしまう国内の遅れた価値観も露呈した。日本人のこうした価値観が未だに変わらないことは、五輪開会式の演出プラン騒動からもうかがえる。

 その後は“Instagramの女王”として知られるようになっていった。現在ではフォロワー数が940万人以上にも達し、国内の著名人の中では最も影響力のあるインフルエンサーのひとりだと言える。

 2020年3月からはYouTubeチャンネル「NAOMI CLUB」もスタート。7月にアメリカのシンガーソングライター、レディー・ガガのパロディーMVを投稿すると海外のファンからコメントが殺到したほか、ガガ本人からも称賛の声が寄せられた。チャンネル登録者数は開設から1年ですでに100万人を超えている。

 渡米前から海外で活躍するに十分な素地を整えていたのだ。五輪演出問題に大人の対応を見せたところは、多様性を尊重するグローバルな価値観の持ち主だからこそ可能だったのだとも言える。そんな彼女が“世界で通用するエンターテイナー”である理由を、お笑い評論家のラリー遠田氏はこう分析する。

「渡辺直美さんが世界に通用すると言える要素は2つあります。1つは、ビヨンセやレディー・ガガになりきるネタをはじめとして、言葉に頼らないパフォーマンスを得意としていることです。表情や動きで笑いを取ることも上手いので、そんな彼女の芸は日本語を理解できない外国人にも十分伝わるはずです。

 もう1つは、類まれなるファッションセンスとモデルとしての魅力があることです。彼女はインスタグラムで日本一のフォロワー数を誇っていて、流行に敏感な女性を中心に熱烈な支持を受けています。服装、メイク、写真の構図やポージングなどから伝わってくる彼女の思想とセンスが愛されています。モデルとしてもインフルエンサーとしても世界に通用する能力を持っていると言えます」

 まさに渡辺直美は五輪の開閉会式の舞台に相応しいエンターテイナーだった。その魅力を最大限に活かした、クオリティの高い演出プランであったなら──。

◆取材・文/細田成嗣(HEW)