父・花田光司氏(元・貴乃花親方)との間に生じている行き違いや、歌手やアートなど多方面で活動することへの疑問など、何かと世間の反発を受けがちな靴職人の花田優一氏。今年5月、そんな優一氏の素顔を探るべく「週刊誌記者」が弟子として“潜入”する異色の不定期連載が始まった。最初の修行で「才能がある」と認めた弟子との“交換日記”第2回をお届けする(別稿で記者本人のレポートあり)。

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 2週間前、「週刊誌記者が花田優一に弟子入りしてみた」の企画が始まって、第1回の記事が世に出た。自分の手で書いた文章が、ネットニュースに載るのは変な気分だった。これは絶対に面白い、と自信は持っていたものの、出版社やテレビ局など様々な関係者から直接連絡が来たことで、より一層やる気になった。

 この企画の面白い部分は、花田優一本人と週刊誌記者がそれぞれ記事を書き、同時にアップされるということだ。僕たちはそれぞれ、ネットにアップされるまでお互いの記事を読むことはない。

 二人とも同じ空間で、同じ景色を見ているのにもかかわらず、こんなにも文面の匂いが変わるのか、と驚きを隠せず、僕と記者はこんなにも違う目線で物事を見ていたのか、とほんの少し恐怖さえ感じるほどだった。

イタリアで学んだ日本人の“ゴシップ根性”

 フィレンツェで修行している頃、イタリア人の先輩に「“嫉妬”の対象は国によって違う」と教わったことがある。彼が言うには、アメリカ人の“嫉妬”の対象は“お金”。だから、アメリカで長者番付に載るような成功者は、多くの寄付をしなければならないし、身銭を切った活動をする意識が高いんだと教わった。

 次に、イタリア人の“嫉妬”の対象は“権力”だという。女遊びをしようとも、仕事をしっかりとしてくれれば良い。という国民性だが、政治家や協会がらみで、権力が動いたというゴシップは、注目される。

 そして、日本人の“嫉妬”の対象は“モテる”ということらしい。イタリア人の彼いわく、日本人の女性は世界で一番モテるけれど、日本人の男性は世界で一番モテない。だから、不倫や浮気に敏感に反応するし、それを犯した者の人生を奪うほど批判の対象になるのだと。

 一個人の意見なのかも知れないけれど、18歳の僕は妙に納得した。そして、25歳の今でも、そのゴシップという暇つぶしを作り出す週刊誌や、それを取り巻く世界を、僕は好きにはなれない。

 僕がまだイタリア語を話せない頃、師匠アンジェロは僕のことを、ルイージと呼び始めた。「“ユウイチ”はイタリア人には難しい発音なんだ。だからお前はルイージだ!」と言われ、なんだか嬉しくて泣きそうになった。

 週刊誌記者が僕の工房に弟子として入った2日目、

「呼び方を変えましょう」

 と提案してみた。呼び方一つで距離が縮まるなら、やってみよう、と思った。そして、彼は僕のことを“優さん”、僕は彼のことを“西さん”と呼ぶことにした。

このままだと「時間の無駄になる」という焦り

 西さんが、靴作りを完璧にできるようになるには、途方もない年月がかかるのかも知れない。でも、イタリアでの修行生活の頃、光が見えなくても、どうして続けられたかと思い返すと、「ルイージ!」と叱ってくれるアンジェロに、褒められたい一心だった。

 そのことを思い出して、西さんが工房で、少しでも心が穏やかになれば、と思った。

 僕と西さんは、お互いに仕事がある為、工房で会える時間は限られる。しかし、毎日寝る間を惜しんで、“やっと”習得できる靴作りを、1か月に数回やったぐらいで習得できるわけがない。案の定、西さんは前回教えたことをほぼ全て忘れていた。

 靴職人として生きていこうとしているわけではないし「仕方がない」と自分に言い聞かせつつも、こんな風に毎回振り出しに戻っていては時間の無駄だし、企画もつまらなくなる、と一瞬焦った自分を悟った。

 これは、西さんの責任ではない。僕が靴作りの楽しみを伝えきれてないし、求心力も足りない。自分一人の良し悪しを判断しているだけの日々は、どれだけ楽なものなのかと思った。弟子という存在を育てる人間になることは並大抵なことではないと、師匠と父の背中を思い出して、西さんへ再び声をかけた。

 最後に、次回工房で会うまでの間、靴作りを少しでも体で覚えておいて欲しくて、「1日5分でもいいので」という言葉とともに、「宿題」を出した。

僕が週刊誌記者を「弟子」に誘ったワケ

 実をいうと、西さんに、「僕の弟子になってみませんか?」と声をかけたのは、僕の方からだった。もし、僕の周りに助言をする人がいたら、「やめておけ」と言われただろう。それでも、そんな企画を提案したのには、理由があった。

 ありがたいことに、僕は名の知れた両親の元に生まれた。正直、普通の家に生まれたいと何度も思った。でも、外から見れば、恵まれていると思うだろう。日本に帰国してすぐに、たくさんのメディアに取り上げてもらった。でも、僕には他の靴職人にも世間にも負けない自信があったし、触れてもらえば絶対にわかる作品を創り出す自信があったから、きっかけが親だろうと何だろうと、良いと思ってきた。

 何事もメリットがあれば、デメリットも同じだけある。良いことも悪いことも、大きく取り上げられるのは仕方ない。

 僕はまだまだ未熟者で、もっともっと、もっと、向上しなくてはならない。それでも、今の僕だから発信できることがある。自分が成長するためには、一番嫌な所を見つける人が必要だ。それが西さんであると信じているし、西さんが包み込まれるほどの「圧倒的な靴職人の姿を見せつけたい」と思った。

 どうせメディアで揚げ足を取られるくらいなら、自分の靴作りの姿を知っている人に書かれた方がマシだ、と思う。西さんに書かれたら仕方ない、と思えるほど、僕は彼に、靴職人としての魂をすり込みたい。

 その先に、僕が目指す職人像があると信じている。

■花田優一(靴職人・タレント)