俳優・山田孝之(37)の勢いが止まらない。6月24日からNetflixオリジナルの主演ドラマ『全裸監督 シーズン2』がスタートするほか、今年に入ってからは共同監督を務めた映画『ゾッキ』や主演映画『はるヲうるひと』が公開されるなど、精力的に活躍している。その魅力を探った。

『全裸監督 シーズン2』は、2019年からNetflixで配信されている賛否両論を巻き起こしたドラマの続編で、セクシー業界の帝王と呼ばれる村西とおる監督の半生を綴ったノンフィクションを原作にオリジナルのストーリーとして再構成した作品だ。山田孝之は村西とおる氏をモデルとした同名の主人公を演じる。

 シーズン1の配信では、特徴的な話術で知られる村西とおる氏と“そっくり”な山田孝之の演技も話題を呼んだ。だがシーズン1の会見で山田が「モノマネではなく、自分なりの村西とおる像を作りたかった」と語っていたように、あくまでも演技である点は重要だ。映画評論家の寺脇研氏は、山田孝之の演技力をこう評価する。

「モノマネとは全く異なります。モノマネのように形を真似るだけではなくて、中身まで成り切っていることが重要なんです。そうすると、表面的な形だけを比べても似ていなくても、視聴者に“ここに××がいる”と思わせてしまうことができる。山田孝之さんにはそうした力があります」(寺脇研氏)

 さらに寺脇氏は、山田孝之が“ここに××がいる”と視聴者に感じさせることができるのは演技力だけではないと指摘する。

「山田さんは2005年に『電車男』で映画初主演を務めて、その後は『クローズZERO』シリーズがヒット作になりましたけど、一番の転機となった作品は主演作の『闇金ウシジマくん』シリーズでしょう。『闇金ウシジマくん』は漫画が原作なのでそのままモノマネすることは不可能ですが、山田さんが演じることで誰もが“これは(主人公の)丑嶋馨だ”と感じてしまうような強烈なキャラクターを確立してみせました。

 それは演技力はもちろんですが、プロデュース能力が非常に高いからだとも言えます。山田さんは普通の役者じゃないんですよね。“コレだ!”と思った作品に没入できる稀有な俳優です。だからこそ、『山田孝之の東京都北区赤羽』や『山田孝之のカンヌ映画祭』のようにマイナーなテーマでも話題作に仕上げてしまうことができるし、映画監督としても才能を発揮することができるのだと思います」(寺脇氏)

 演技派と呼ばれる俳優は数多くいるが、プロデュース能力にも長けた人物となると限られてくる。そんな山田孝之という役者について、寺脇氏はある“大スター”との共通点を感じると明かす。

「没入力という点では山田孝之さんは群を抜いています。同世代の他の役者を見渡しても彼のような才能を持つ人物はいません。ただ、過去を含めると、山田孝之さんは実は勝新太郎さんと似たところがあるなと感じることがあるんです。

 もちろん山田さんは勝さんのような破天荒な人物ではないと思いますし、昭和の大スターと呼ばれる勝さんと21世紀に活躍している山田さんを単純に比べることは難しいとは思います。ただ、二人の活躍を見ていると、色々と重なるところがあるんです」(寺脇氏)

 ではどのような部分が共通しているのだろうか。寺脇氏はこう続ける。

「勝さんもキャラクターに成り切る力とプロデュース能力に長けた人物なんですよね。『座頭市』シリーズや『悪名』シリーズでのキャラクターが有名ですけど、一方では30代後半の頃に勝プロダクションを設立して、テレビドラマや映画を製作したり自分で監督を務めたりするようになっていく。

 勝プロダクションの最初の成果が1968年の映画『燃えつきた地図』で、原作が安部公房、監督が勅使河原宏、音楽が武満徹と、芸術色の強い作品でした。勝新太郎のヒット作といえば『座頭市』シリーズですが、表現者としての彼の成果はむしろ30代後半以降に生まれてくるんです。

『燃えつきた地図』が公開された時の勝さんは36歳。実は今の山田孝之さんとほぼ同い年の時のことなんです。そう考えると山田さんがこれからどんな風に化けていくのか、とても興味があります」(寺脇氏)

 勝新太郎と言えば、俳優の松平健を弟子に取り、時代劇のスターへと育て上げたことでも知られている。いずれは“山田孝之の弟子”が活躍する日も来るのだろうか——。

◆取材・文/細田成嗣(HEW)