4月と6月に公開となった映画『るろうに剣心 最終章/The Final』、『るろうに剣心 最終章/The Beginning』に続き、『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』が6月18日より封切りとなり、注目のアクション映画が目白押しだ。主演を務める前者の佐藤健(32才)と後者の岡田准一(40才)、2人の“アクション俳優”っぷりに注目が集まっているが、それぞれの魅力について、映画や演劇に詳しいライターの折田侑駿さんが解説する。

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 身体能力の高さに定評のある佐藤健主演の『るろうに剣心 最終章』と、格闘技に精通している岡田准一『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』がそれぞれ公開中だ。SNSなどには、「佐藤健に岡田准一、どちらもアクションがキレキレで凄い」、「2人の動きが速すぎて目が追いつかない」、「2人のダブル主演のアクション映画を希望」といった声が多く上がり、異なるタイプの映画だが“アクション俳優”として注目が集まっているようだ。筆者も、いつか2人の“対決”が実現することを期待してしまう。

『るろうに剣心』シリーズ最終章となる2作では、『The Final』にて主人公・緋村剣心(佐藤健)にとって最後の強敵との死闘が描かれ、『The Beginning』は物語のすべての“はじまり”が描かれている。国民的人気マンガ『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』(集英社)を原作とし、映画『3月のライオン 前編/後編』(2017年)や『億男』(2018年)などを手掛けた大友啓史監督(55才)が実写化したもので、全5部作にも及ぶ超人気シリーズだ。

 一方の『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』は、2019年公開の『ザ・ファブル』に続くシリーズ第2弾。南勝久(50才)による同名漫画を原作に、これまでに手掛けた数々のCMが高く評価されてきた江口カン監督(53才)が実写化したものだ。“伝説の殺し屋”と呼ばれる主人公・ファブル(岡田准一)が、佐藤明という一般人として新たな生活を送っていこうと奮闘する姿が描かれる。世間知らずな主人公が繰り広げる、スリル満点のアクションとコメディのバランスが心地良い作品だ。

 佐藤と岡田に共通するのは、既に口コミにもあるように、時に“アクション俳優”と称される存在だということ。両者ともに「身体能力が高いからアクションができる」というのが世間一般の評価ではないかと思う。だが、そうした曖昧なものではない違った魅力がそれそれにあるのだ。

『るろうに剣心』シリーズには、青木崇高(41才)や新田真剣佑(24才)、さらには格闘家の経歴を持つ須藤元気(43才)や独自の踊りを世界中で展開する田中泯(76才)など、優れた身体能力を持つ俳優たちが多く集ってきた。須藤や田中に関しては身体を扱う“プロ”だ。ここから分かるのが、本シリーズはチーム全員で質の高いアクションシーンを作り上げているということ。大人数での乱戦はチームワークが必要不可欠だ。

 だがその錚々たる顔ぶれの中でも、佐藤の動きの俊敏さはずば抜けていると思う。佐藤は“とにかく速い”のである。アクションは、受け手のレベルによってもクオリティが変わってくる。佐藤の高速のアクションを的確に受け止められる演者たちがあってこそ、高品質の作品が成立しているのだ。そんな座組において、生まれ持っての身体能力を持ち合わせた佐藤が座長の“格”であることは、シリーズが5作も続いたことが証明しているはずである。

 対する『ザ・ファブル』では、登場人物の大半はアクションを行わない。また、主人公・ファブルと敵対する者たちが手にするのは拳銃だ。だが、それゆえ敵と対峙する岡田の身体能力が、本作では非常に際立つ。何より本作で岡田は、 “ファイトコレオグラファー”としてアクションの振付けも担当しており、アクションシーンの動きを自ら考え、作品に落とし込んでいるのだ。

 岡田がさまざまな格闘技のインストラクターの資格を持っていることは広く知られているだろう。過去作を振り返れば彼の基礎的な身体能力の高さは言わずもがなだが、本作での岡田は、作品に適応するための“身体”だけでなく、“脳(知恵)”も駆使したアクションで魅せてくれている。これを体現できるのは、彼の長年の鍛錬とアクションへの深い理解があるからに他ならない。

 本作で殺し屋役を演じた安藤政信(46才)が、「何で岡田に指導されなければいけないんだという気持ちでいたけど、岡田の動きやアクションの考え方、哲学みたいなものを見て、すぐに『弟子にしてください。道場に通いたいです』と伝えました」と語っていることからも分かるだろう。

 佐藤は俊敏性に特化しており、岡田は俊敏性に加え、訓練に裏打ちされた知識と技術がある。両作品は毛色の異なる映画ではあるものの、現在奇遇にもトップクラスの“アクション俳優”の主演作が公開されており、ある意味では“対決”が実現してと言えるのではないだろうか。いつか2人が本格的に手合わせするところを想像せずにはいられない。

【折田侑駿】
文筆家。1990年生まれ。映画や演劇、俳優、文学、服飾、酒場など幅広くカバーし、映画の劇場パンフレットに多数寄稿のほか、映画トーク番組「活弁シネマ倶楽部」ではMCを務めている。