バラエティや情報番組などに出演するスイーツ好きのタレントは多いが、今引っ張りだこになっているのがお笑い芸人・ぼる塾の田辺智加(37歳)だ。昨今のスイーツタレントの流れを変えたという田辺についてコラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。

 * * *
 25日夜の『坂上&指原のつぶれない店』(TBS系)は、“緊急企画”と題して、ぼる塾・田辺智加さんによるスイーツ開発企画を放送。

『デニーズ』から田辺さんに名指しでSOSメールが入り、かつて大ブームを巻き起こした「ナタデココ」「ティラミス」を超えるヒット商品の開発に挑むそうです。同番組における田辺さんのスイーツ開発企画は、シャトレーゼ、ユーハイムに次ぐ3回目で、すっかり定番化したと言っていいでしょう。

 田辺さんはそれ以外にも、『今夜くらべてみました』(日本テレビ系)でおすすめスイーツを届ける「タナバーイーツ」、『ラヴィット!』(TBS系)で人気のスイーツを食べ尽くす「ぼる塾の芸能界スイーツ部」などに“芸能人ナンバーワンのスイーツマニア”というポジションで出演。その他の出演番組やインスタグラムなどでの発信も含め、スイーツタレントのトップに君臨しています。

 ただ、これまでバラエティや情報番組などで活躍するスイーツタレントと言えば、的場浩司さん、芝田山親方、真壁刀義さん、ToshIさんと男性ばかりでした。なぜ田辺さんは“スイーツタレント=男性”という流れをガラッと変えられたのでしょうか。

見た目やキャラとのギャップが不要に

“スイーツタレント=男性”というイメージを作ったのは的場さん。コワモテのイメージが強い的場さんがスイーツ愛を熱く語り、目尻を下げながら食べるギャップがウケて、バラエティや情報番組に引っ張りダコの状態になりました。

 続く芝田山親方は、大きな体と力士というイメージとのギャップ。「暴走キングコング」と呼ばれるプロレスラーの真壁さんも、コワモテと巨体とのギャップ。アーティストのToshIさんは、黒づくめの衣装でミステリアスな印象とのギャップ。いずれもベースには、見た目やキャラクターからのギャップがあり、それが面白さにつながる人がスイーツタレントのトップとして活躍してきました。

また、もともと「女性がスイーツ好きなのは当たり前」という観点から、ギャップを生みやすい男性が選ばれてきたという背景もあります。

 しかし、時代が変わり、個人が尊重されるようになって、「男(女)らしさ」「女(男)が好きなもの」などのイメージが徐々に無力化。コワモテ男性がスイーツ愛をちゅうちょなく話せるようになり、周囲もそれを当たり前のように受け止めるように変わりました。

 そんなときに登場したのが田辺さん。持ちギャグの「まあね〜」に象徴される明るくポジティブな振る舞いがスイーツ好きのキャラクターにも反映されていたことで、一気にスイーツタレントの座を手にしました。「ぽっちゃり体型でもスイーツが好きだから気にしない」という率直さで、スイーツ好きの視聴者をつかむことに成功したのです。

 もちろん現在の活躍は、田辺さんのスイーツにかかわる豊富な知識や、自作するほどのこだわりあってのものでしょう。番組の制作サイドも視聴者も、その熱量にもとづく説得力と、本当に好きだからできる嘘のない表情に笑顔を誘われ、信頼を寄せているのです。

 仕事の枠を超えて心から楽しんでいることが誰の目にも伝わったことで、田辺さんは「男女の性別、見た目やキャラクターとのギャップ」というこれまでスイーツタレントに求められてきた要素を超越してしまったのではないでしょうか。

早くもレジェンドとの共演が実現

 一方、各番組の制作サイドとしては、渡りに船。ぼる塾という旬の芸人がスイーツタレントという付加価値を持っているわけですから、オファーを出さない理由がありません。

 現在のテレビ番組はスイーツに限らずマニアの需要が大きいのですが、やはり『マツコの知らない世界』(TBS系)に出演するような一般人では、知名度、トーク力、リアクションなどに不安があるもの。知識を語ってもらうくらいで、バラエティの企画としては発展性が望みづらいため、やはり田辺さんのような人気有名人の中からマニアが出てほしいのです。

 さらに現在、朝の情報番組からゴールデンタイムのバラエティまで、飲食の企画が増えていて、なかでも多いのはチェーン店やコンビニなどの特集。まさに田辺さんのような幅広い知識と興味を持つスイーツ好きの存在はうってつけなのです。

 7月の『ラヴィット!』で放送された「芸能界スイーツ部」では、田辺さんとスイーツタレントのレジェンドである的場浩司さん、真壁刀義さんとの共演が早くも実現。仲よくスイーツ愛をぶつけ合うシーンを連発して番組に深みと笑いをもたらしていました。

 田辺さんの登場以前は、「プリンマニア」なら前園真聖さん、「あんこマニア」なら川田裕美さんなど、“スイーツタレントの細分化”に傾きかけた時期もありましたが、その流れは完全にストップ。現在は田辺さんの一人勝ち状態であり、今後もさまざまな番組での活躍は間違いないでしょう。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。