役者が醸し出す雰囲気に変化を感じることは稀にあるものだ。ドラマウォッチを続ける作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。

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『白い濁流』(NHK BSプレミアム 日曜日午後10時)は薬品メーカーの研究開発最前線で起こる不正やねつ造、隠蔽の闇を描く“社会派エンターテインメント”。

 主人公は若手有望研究者の好並一樹(伊藤淳史)。そのライバルである柏木航(桐山漣)、そして一樹の幼なじみの恋人で新聞記者・河原智子(佐々木希)。3人を軸に薬品メーカー研究開発部で繰り広げられていくスリリングな展開。

 このドラマ、タイトルにある「濁流」がキーワード。「流れはしたたかに僕らを呑み込んでいった」という一樹のセリフが示すように、正しくないことを正しいと呑み込まざるを得ない濁流に身を置いた時、人はどうすればよいのか……。

 一樹は真面目な研究者で、「悪いことをしよう」なんて考えていない純朴な人。しかし、組織の中で必死に研究に没頭しているうちに、権力争いや利権の構造の中に組み込まれ気付いた時にはもはや自由に動けなくなっている。助教授職のポスト争い、企業と研究現場の癒着ぶり……大学ノートに細かく記された実験内容は、オリジナル研究の証拠。その貴重なラボノートを「渡せ」「いや渡せない」と、過去にどこかのニュースで見たようなシーンも登場してくる。濁流に巻き込まれていくお人好し。そう、この社会の縮図です。

 流されていく一樹を、必死にとどめようと「杭」になるのが幼なじみの新聞記者・河原智子。演じるのは佐々木希さん。その切れ味の良い演技が視聴者の耳目を惹き付けています。

「世の中に声にならない声がいっぱいあって、それを伝えるために記者になった」という智子のセリフ。演じる佐々木さんを包む空気は、これまでとはちょっと違う。スパっと爽快で男性的とも言える身のこなし。腹から声を出して素早く動く。サバサバとした口調が小気味良い。

 これまで佐々木さんといえば絶えず「色白の美人」「可愛い」「スタイルがバツグン」「似合ってる」と褒められ、SNSに写真をあげれば容姿についてのリアクションが集中していました。斜めから言うと、演技者としてよりも容姿の方がどうしてもアピール力が強かったのかもしれません。本人の意志はまた別として。少なくとも多くの人の目は、彼女の美しさにばかり吸い寄せられていた。

 しかし、このドラマの中では何か違う。「役者・佐々木希」として勝負に出た感すらある。

 恋人が濁流に巻き込まれる様を見て何とか流れから引き離そうとする智子。演じる佐々木さんに、過去を吹っ切るような勢いを感じます。役に賭けている感がハンパないのです。

「今まで生きてきた経験がいろいろな糧になっていて、それを生かせるお仕事だと思います」(「クランクイン」2021.9.1) と役者について意味深な言葉を語った佐々木さん。ここでいよいよ反転攻勢に出たのでしょうか?

 昨年、複数女性との不倫が発覚した夫・渡部建さんはいまだ身動きとれず。全レギュラー番組を降板、スポンサーなどへの違約金は1億円超とも報じられ、芸能界への復帰もままならない……。「渡部と夫婦であり続けるというのは、佐々木にとってもイメージが悪い。今後の仕事にも支障が出かねない」とまで指摘されました。一方で「4億円のマンションを自分名義で購入」というニュースも見聞きする昨今。果たして今後の仕事や生活は? 

 少なくとも河原智子役を見ていると「自分の足で立つ」と腹を決めた女優の顔をしています。旦那が稼げないなら私が稼ぐ、という決意でしょうか。そもそも佐々木さんは強い地を持っていて、しかし芸能界に入ってしばらくの間は可愛い方を強調する演技をしていた、そしてまた地に戻った、ということなのかもしれません。

 9月5日からは6年ぶりの舞台『醉いどれ天使』(黒澤明監督映画の舞台化・演出三池崇史)にも出演するという佐々木さん。いよいよ「女優」として大きく羽ばたくか。今後に注目です。