「結婚かキャリアか」の二者択一だった時代を経て、表向きには「結婚もキャリアも」「出産もキャリアも」が選べる時代になったとされている。しかし、立ち止まったり休んだりした後に、その前と同じような環境が用意されている場合は、決して多くない。それは一般の女性だけでなく、女優という仕事においても同じである。トップに上り詰めた女優・深田恭子(38才)でさえも恐れた「女性が仕事を休む」ということ──。

 深田恭子が帰ってきた。

 10月6日、フジテレビ系の「2021FNS歌謡祭・秋」に、深田はゲスト出演。久しぶりのテレビ出演に視聴者は注目した。ところが、声がかすれてろれつが回らない場面もあり、番組を見たファンからは「まだ復帰は早かったのでは?」などの心配の声が寄せられた。

 彼女が適応障害の治療のため、芸能活動を休止したのは5月下旬。「当時は主演映画の撮影現場でハイテンションに笑ったかと思えば、次の瞬間に大泣き。常に不安定で夜もよく眠ることができず、撮影を終えた直後に倒れてしまったのです。超がつくほど頑張り屋で、どれだけ多忙な日々が続いても、文句ひとつ口にしない彼女がダウンしただけに、早期復帰は難しいと思われました」(芸能関係者)

 しかし、8月末には来年のカレンダー撮影ができるまで回復。9月27日には、都内で行われた映画『劇場版 ルパンの娘』の完成披露試写会にも登場したのである。

「深田さんはデビュー以来封印していた水着の写真集を30代半ばで復活させ、ドラマ『ルパンの娘』(フジテレビ系)ではボディーラインが露わになる全身タイツの衣装を披露した。近年は肉感的なセクシー路線が目立ちますが、試写会では少し頬がこけてグラマラスなむっちり感がなくなり、全体的にやつれた印象。さらにFNS歌謡祭での様子を見るにつけ、やや復帰を焦った感じがしました」(芸能記者)

 4か月の休養期間中、深田の側には常に誰かが寄り添い、サポートしなければならなかったという。その役割を担ったのが、2019年秋から交際する不動産会社シーラホールディングスの杉本宏之会長(44才)と、深田の母親だった。

「24時間、誰かが必ず深田さんの傍らにいないと心配な日が続いたようです。部屋から出られないほどの状態で杉本さんとお母さんが交代交代で付き添っていたようです」(前出・芸能関係者)

 深田が倒れたのち、周囲はこう話していた。

「最近の彼女は忙しすぎた印象です。周囲からは、『もう充分に実績があって売れっ子の女優さんなのに、なんであそこまで仕事に力を入れるんだろう』という声が上がっていたほどです」(テレビ局関係者)

 ここ数年、深田が特に力を入れていたというのが、CMの仕事だ。

「映画やテレビで女優の仕事を頑張りながら、CMの仕事を精力的に増やしていました。昨年夏にユニクロのCMが決まったときは『グローバルな仕事ができてうれしい! 仕事をもっと頑張りたい』と大喜びで、実際にUQモバイルやキリンの『午後の紅茶』など、テレビで深田さんの姿を見ない日はなかった。多くのCM出演でお茶の間のイメージはアップ、芸能人としての格がもう一段上がろうというタイミングだったと思います」(前出・テレビ局関係者)

出産で姿を消す女優を見てきた

 常に目の前の仕事に全力で取り組んできた深田だったが、最近より一層、全精力を傾けたのには、ある理由があるという。

「実は深田さん、数年前から『そろそろママになりたい』との願望がありました。けれど、若いときから芸能界にいる彼女は、妊娠・出産で姿を消していく女優さんをたくさん見てきたそうです。深田さんにとって、妊娠・出産は、幸せの象徴である一方で、自分の居場所を失うことにもなるイメージもあった。何より事務所や仲間たちに支えられてきたのだから、でき得る限り恩返ししたいという気持ちも強かったはず。

 結婚もまだですし、すぐにどうこうということはないでしょうが、可能なうちにできる限り仕事をこなして、今後に備えようと頑張っていた。CMを意図的に増やしたのも、いわば“箔付け”の意味合いもあったと思います」(前出・芸能関係者)

 深田の頭に「ママ」という言葉がちらつき始めたのは、2017年頃だった。

「ちょうど妹さんに2人目の男の子が生まれたんです。幼い甥っ子2人をあやす深田さんは、彼らにメロメロで、『やっぱり兄弟はいいね〜』と自分の子供のように喜び、ミルクからオムツの交換まで楽しそうにひとりでこなしていました」(深田の知人)

 2018年のドラマ『隣の家族は青く見える』(フジテレビ系)の出演も大きな転機となった。ドラマで深田が演じたのは妊活に励む30代女性。何度も妊活にトライしながらも失敗して、ようやく体外受精に成功したのに流産してしまうという、難しい役柄だった。

「撮影中は楽しそうにしていた深田さんですが、妹の出産やドラマを経て、『どんなに健康に気をつけていても、女性にはリミットがある』『一度過ぎてしまった時間は取り戻せないんだ』との思いを深めていった。当時の彼女は30代半ば。妊娠するには、自分はもうそれほど若くないことに気づいたんです」(前出・深田の知人)

 ちょうどこの頃、深田の前に現れたのが、杉本氏だった。知人の紹介で知り合ったふたりは急ピッチで関係を進展させた。深田は杉本氏との交際に幸せを感じながらも葛藤を抱えていたという。

「交際開始時からふたりは結婚を意識していました。だからこそ財産や今後の生活について婚前の契約書を交わしたんです。子供のことも意識していたと思います。40才が近づくにつれて避けられない『リミット』が重くのしかかり、さらに子供への思いが強くなった。

 そんなとき、卵子凍結、受精卵凍結というアイディアを友人から聞いて深田さんは『そういう選択肢もあるよね』と一気に前のめりになった。ふたりの将来のためにも必要なことだからと、専門家の話を聞いたり、具体的に行動に移し始めたようです」(前出・芸能関係者)

採卵にかかる費用は50万〜80万円

 近年は晩婚化などに伴い、約5.5組に1組の夫婦が不妊検査や治療を受けたことがあるといわれる(国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査」より)。

 タイミング法、排卵誘発法、人工授精などと並び、不妊治療の一環として実施されているのが卵子凍結だ。医療法人オーク会の医師、船曳美也子さんが語る。

「未受精の卵子を採取して凍結保存する方法です。将来的にはその卵子とパートナーの精子を顕微授精(※細いガラス針の先端に精子を入れ、卵子に顕微鏡で確認しながら直接注入する方法)させ、できた受精卵を子宮に戻して着床・妊娠に至ります」

 卵子凍結には、がん治療などを始める前に、将来の妊娠を見据えて行う「医学的適応」と、加齢などによって妊娠や出産の可能性が大きく下がることを回避するため、若いときの卵子を温存する「社会的適応」がある。

「自分の望むタイミングでの妊娠が期待できることから、近年は社会的適応として30代〜40才前後で卵子凍結する女性が増えています。なお日本生殖医学会のガイドラインでは、39才までに卵子を凍結して44才までに顕微授精することを推奨しています」(船曳さん)

 忘れてはならないのは、卵子も加齢とともに老化することだ。出生時、約200万個ある卵子は初潮を迎える思春期までに20万〜30万個に減少する。その後も加齢とともに数が減り、質が低下し、妊娠する能力が衰えていく。会社員の飯田理央さん(仮名・37才)は昨年、卵子凍結に踏み切った。

「私は家族がすごく仲よく、自分に子供がいない未来が想像できませんでした。でも、『いつか』『3年後までには』と思っているうちに、責任ある仕事を任されるようになり、気づけば、『いまは産めない』『いまは休めない』という状況になった。現在は、結婚したい相手もいません。

 35才になってから自分の出産リミットを気にするようになり、友人からすすめられて卵子凍結を決断しました。実際に凍結すると安心感が生まれて、それまでは耳を閉ざしていた同世代の友人の出産や育児話を穏やかな気持ちで聞くことができました。まだキャリアを積み上げたい自分にとって、卵子凍結はブランドのバッグやシューズよりも心が落ち着く保険のようなものなんです」

 そう話す飯田さんのように、社会的適応として卵子凍結を望む多くの女性が妊娠と天秤にかけるのが仕事である。

 女性の社会進出が進んだとはいえ、いまでも女性が妊娠、出産すると、出世コースから外れたり、望む仕事を任せられなくなるケースが少なくない。特に30?40才の女性は脂がのってポジションを手にし、まだ上が目指せる時期でもあるので仕事が楽しく、妊娠や出産に踏み切れない。その間にも「リミット」は刻々と迫り、仕事と子供の狭間で悩みを抱えるケースが多いのだ。そんな女性たちにとって、卵子凍結はひとつの希望でもある。

「卵子凍結をすれば、加齢に伴う卵子の老化を防ぐことができるし、何よりキャリアを中断しなくて済む。精神的なゆとりが生まれて、将来設計が立てやすくなるメリットもあります」(船曳さん)

 一方でデメリットもある。まず、卵子凍結は将来の妊娠を100%保証するものではない。

「1個の凍結卵子による出産率は、採卵時の年齢30才で11.3%、35才では8.3%、40才で6%です。子供を産める率は決して高くありません」(船曳さん)

 体への負担も軽くない。採卵数を増やすためのホルモン注射や採卵前の自己注射のほか、採卵日に合わせて厳格なスケジュール管理が課されることもネックだ。健康保険が適用されないため、費用の負担も大きい。

「当院では、一度に10個採卵した卵子を5年間凍結保存すると50万〜80万円ほどの費用がかかります。また融解後の顕微授精などに15万〜20万円程度かかります」(船曳さん)

 他方、ここ数年で卵子凍結の情報が広まり、患者に変化がみられるようにもなった。

「数年前までは、パートナーが見つかる予定がなく、将来のための安心材料として卵子凍結を行う人が多かったのですが、最近はパートナーと相談したうえで来院するかたも。この先のライフプランを考えて、計画的に卵子凍結を選択する若い世代が増えている印象です」(船曳さん)

 医療ライターの大場真代さんは、「これからの女性は、ますます将来の妊娠に備えたライフプランが必要になります」と指摘する。

「最近の女性は見た目が若々しくアンチエイジングが見事ですが、卵巣や子宮はアンチエイジングできません。現在は赤ちゃん20人のうち1人が体外受精で生まれますが、女性の社会進出と晩婚化によってこの数は今後さらに増えていくはずです。不妊治療は時間やお金がかかり、パートナーの協力も必要になるので、これからの女性は将来の妊娠を考えながら、現在の生活やキャリアに向き合うことが求められます」(大場さん)

 今後、不妊治療と仕事の両立はますますクローズアップされていくだろう。来年4月からは不妊治療に保険が適用される。

「退任した菅前首相の功績です。卵子凍結に適用されるかはまだわかりませんが、保険適用で不妊治療がさらに身近になることは間違いありません」(出産ジャーナリストの河合蘭さん)

 卵子凍結を選択しても100%子供が持てるわけではない。でも人にはそれぞれの生き方があるように、妊娠の仕方やタイミングにも多様な形があってもいい。

 11月2日、深田は39才の誕生日を迎える。自分らしく輝く選択肢を見つけた彼女はいま、どんな決断を下すのか。

※女性セブン2021年10月21日号