多くの人に愛されるゴルフ。大物俳優のなかでもゴルフ愛好者は多い。舘ひろしや神田正輝など、シングルプレーヤーが数多くいる石原軍団にあって、昨年8月に亡くなった俳優・渡哲也さんもシングルの腕前で知られていた。そんな渡さんを“ゴルフの師匠”と呼ぶのが、フリーアナウンサー・みのもんた氏だ。みの氏が振り返る。

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 渡さんとのお付き合いは50年近く前からですね。最初は銀座でよく会っていたけど、僕が文化放送でレギュラー番組を持っていた頃に、「吉永小百合さんをゲストに呼びたい」と言ったら、渡さんが本当に連れてきてくれた。それから“兄貴”と呼ぶようになりました。

 最初にゴルフに行くことになったのも、飲んで騒いでいるうちに盛り上がってそういう話になったんです。僕はまだ初心者で、渡さんはイロハから教えてくれた“ゴルフの師匠”でもあります。

 夏場にはウチのオヤジから子供までみんな連れて箱根に行って、渡さんと奥様と一緒にゴルフ合宿もやりました。忙しい方だから長くて3泊4日。箱根にある「仙石ゴルフコース」が多かった。

 渡さんのゴルフはとにかく豪快。石原軍団はみんな飛ばすけど、渡さんは特にドライバーが得意な飛ばし屋だった。それでいて気配りができる。マナーや謙虚さを大切にしていて、プレーもさることながらそういう面も最高でしたね。

 マナーの中で一番言われたのは、“ゴルフは静かにやらないといけない”ということかな。隣のホールの声が聞こえてくるのは一番ダメと教えられました。だから僕もゴルフ場ではデカい声では喋らないし、大声で笑ったりしない。渡さんはどちらかといえば無口な方だからね。弟子も静かにしますよ(笑)。

〈夜の銀座で盛り上がることと、朝が早いゴルフは両立しづらいように思えるが、みの氏は「そこも師匠の“厳しい教え”があった」と笑う〉

 渡さんから一番厳しく教えられたのは、前の晩の酒の飲み方ですね(笑)。ついつい飛ばして飲んでしまうから、渡さんに「飛ばすのはボールだけ。酒は飛ばしちゃダメだからね」と言われた。渡さんは朝が早い。こっちがいつもは寝る時間に集合なんだから、ゴルフの前の日は飲めないですよ。何から何まで細かく、きちっとした人だった。

 渡さんは電話ではなく必ずFAXを送ってくるんです。ゴルフの予定の確認も綺麗な自筆で送ってくれる。そのFAXは今も大事にとってあります。宝物ですよ。

 一度、箱根でのゴルフ合宿の時に左手首を痛めてしまったことがありました。骨にヒビが入ってしまい、ギプスをした状態になったので2日目からはプレーができずに、カートに乗ってボールボーイというか、キャディをやらせてもらいました。

 その後、左手にギプスをした僕が車で帰ろうとすると、渡さんが「危ないから運転してやるよ」と言って、僕を助手席に乗せて逗子の自宅まで連れて帰ってくれました。

 帰りは第三京浜とかが大渋滞します。ノロノロ走っている車の運転席に渡さんがいて、横にみのもんたが座っている。すれ違う車は何なんだと驚いただろうね(笑)。渡さんが運転する僕の車の後ろを、ドライバーに運転させた渡さんの車がついてくる。貴重な休みにそんなことになって申し訳ない気持ちでいっぱいでしたけど、そういう優しい人なんですよ。

 ゴルフは性格が出ると言いますが、渡さんの場合はおおらかでしたね。ゆったりしたスイングで遠くへ飛ばす。練習も相当していたと思うけど、そういう姿は見せないんだよね。打つ前の素振りでブンブン振り回すところも見たことがない。スマートなんです。スクリーン越しに観る渡さんと、ゴルフ場で見る渡さんは完全に同じ。かっこいいよね。優しくて、男らしくて、実のある人でした。

※週刊ポスト2021年11月5日号