元横綱・貴乃花(花田光司氏)の長男で靴職人・タレントの花田優一氏(26)が10月24日、映画『残照のかなたに』(2022年公開予定)に俳優として初出演することを記者会見の場で明かした。同作は年老いた作家と看護師の物語を描く短編映画で、優一氏は作家の主治医役を演じる。監督を務めるのは、母・河野景子さんの再婚相手として婚約中のジャッキー・ウー氏。近い将来に“義理の親子”となるであろう2人の“共演”とあって会見では報道陣から優一、ジャッキー両氏に「お母さんは何と言っているのか」「(河野と)籍は年内に入れるのか」などプライベートに関する質問が集中した。

 会見では終始、芸能記者からの質問を受け流していた優一氏が、「俳優挑戦」についてどの程度本気なのかは語られなかった。タレントや歌手としてテレビ番組への出演は多いが、本業はあくまで「靴職人」。会見を終え、映画出演のニュースが報じられると、ネット上では「真剣にやるつもりがあるのか」「演技を舐めるな」など批判の声も上がった。

 優一氏はどんな思いで出演を決めたのか――。会見では語られなかった俳優挑戦への想い、映画出演の裏にあった母・景子さんや“義理の父”になるジャッキー監督とのやり取りなどについて、優一氏本人が赤裸々に語った。

 撮影前にジャッキー監督と2人で語り合ったこと

 まずは、演技について素人の優一氏が出演に至った経緯についてだ。世間からは「コネで映画に出たのではないか」などと囁かれているが、母やその“再婚相手”であるジャッキー監督からオファーを受けたのだろうか。

「映画出演にあたって、ジャッキー監督からオファーをもらったワケではありません。もともとプロデューサーの新田(博邦)さんと知り合いで、1年ほど前から『演技をやってみないか』というお話しをいただいていたんです。ただ、監督がジャッキーさんとなると世間がまたいいようにネタにするでしょうし、『客寄せパンダとしてカモにされるのでは』と思ったので(笑)、最初はお断わりしたんです。でも新田さんは熱心に誘い続けてくださったので、真剣味を感じて『監督のほうがOKなら出ます』と伝えました。最終的に出演が決まったのはつい数か月ほど前。ギリギリの日程でした」(優一氏、以下カギカッコ内は同)

 当初は、ジャッキー監督も優一氏と同様の懸念から出演に難色を示したという。それでも脚本を一部調整することを条件に最終的にはキャスティングを了承。2人の間では撮影に入るにあたって、どのようなやり取りがあったのか。

「『男だけで話がしたい』ということでジャッキー監督と2人、会議室でお互いが思っていることについて語り合いました。監督は僕が世間から『コネで映画に出た』と批判されたり好奇の目に晒されたりするのではないかということを心配してくださっていたので、『慣れっこなので気にしないでください』と伝えました。その上で、どうせ出るなら『父や母との関係や複雑な生い立ちなどについて役柄に反映してもいいですよ』と言いました。

 ただ、ジャッキー監督は作品をまとめるにあたってはそうした話題作りのようなことはせず、『映画は僕の世界だから、安心して委ねてほしい。しがらみから守ります』と言ってくれました。僕はその気持ちに感謝して、『期待に応えられるよう、精一杯頑張ります』と伝えました」

景子さんから「大丈夫なの?」と電話が

 再婚相手と実の息子が監督と役者として“共演”することになり、複雑な立場になった母・河野景子さんとはどんな話をしたのか。

「僕からは何も相談していなかったのですが、先にジャッキー監督が話をしていたようで母からは電話がありました。『映画に出るなんて大丈夫なの?』と心配する内容だったので、一言『心配しないで』とだけ伝えました。映画出演に関して母と話したのはその電話1回きりです。僕は学生時代にバスケットボールをやっていたのですが、その試合の応援に来られるのが大の苦手だったんですよ(笑)。母はそんな僕の性格を知っているので、一度決めた後は何も言わずに任せてくれたのだと思います。

 以前からたまにジャッキー監督と母と一緒に食事をする機会はありましたが、そういう時は仕事の話は一切しません。母からすれば心配かも知れませんが、今回は監督と相談する時も母は関与させずに、男だけで話をしました。ですが出来上がった作品についてはぜひ母にも観てもらいたいですね」

 演技の仕事はこれが初めてというが、もともと興味を持っていたのか。

「『俳優になりたい』と思ったことはありませんが、芸能の世界にいると演技というのは身近なものだったので意識はしていた。漠然と興味はあったので、『もしオファーをいただけたら出てみたい』という思いはありました」

 信州・上田で行うロケは10月末から本格的に開始されるが、すでに「本読み(台本読み)」は始まっているという。演技指導や撮影の現場は「目からウロコの連続」だと語る。

「まず始めに驚いたのが、監督から『もっと上手に嘘をついて』と指導されたことです。嘘をつくことを自然にやるという作業は本当に難しいですが、“自分とは違う誰か”になることを突き詰めていく作業は“クセになりそうだな”と感じています。僕が演じるのは医師の役ですが、これまで靴職人として人の身体のことを考えてきたので親近感を抱いています。また今回は20分のショートムービーですが、2時間の映画を作れるくらいじっくり撮影をしています。満足いくまで何テイクでも撮り直すという仕事のやり方はいままで経験がなかったので凄く楽しいですね。また靴職人は個人事業主ですが、映画はチームプレー。多くの人と作り上げていくというのも普段と違って刺激を受けています」

アンチでも何でも「映画を観てもらえたら勝ち」

 主演を務める林与一氏(79)は俳優一家に生まれ、美空ひばりの相手役として人気を博した昭和の大スター。優一氏は稽古場での林氏の佇まいや会話からも学ぶことが多いと語る。

「初めて本読みに向かう時に、街でふと『粋だな、カッコいいな』と思うおじいさんを見かけたんです。どこか厳そかというか、佇まいが凜としている人だったのですが、歩けども歩けどもその人が近くにいて。で、同じスタジオに入ったところで『この人が林さんか!』とやっと気付いたんです(笑)。マスク姿だったので顔ははっきり分からなかったのですが、ほかの人たちとはどこか佇まいが違いました。

 いざ稽古が始まって林さんと休憩時間にお話をさせていただくと、会話のテンポや間が絶妙に聞き取りやすくて声もすごく素敵なんです。発する言葉や動きが力強くて御年79歳とは思えない、目に見えぬ“波動”のようなエネルギーを感じますね」

 今月末から信州に入り、本格的に撮影に臨んでいく優一氏。今回の「俳優挑戦」に対して賛否あることは本人も理解している。しかし、本人は「それすらも歓迎」と話す。

「素人の僕が演技をすることに対して、世間から色々な声があるのは理解しています。ですが、ジャッキー監督とも話しましたが作品には自信があります。僕のアンチでも何でもいいから作品を観てもらえさえすれば“勝ち”だと思っています。僕の演技がどうかについて語ることも含めて、観てもらわなければ何も始まらない。

 それにこの映画は来年のブリュッセル国際映画祭に参加する予定です。僕のことを誰も知らない海外で評価してもらえるというのもやりがいになります。もちろん生半可なことではないと思いますが、恥ずかしくないように頑張りたいですね」

 ジャッキー監督は自身の監督作『キセキの葉書』(2017年)で鈴木紗理奈がマドリード国際映画祭・最優秀外国映画主演女優賞、『ばあばは、だいじょうぶ』(2019年)で寺田心がミラノ国際映画祭の外国映画部門で主演男優賞を獲るなど「役者に賞を取らせる監督」と呼ばれている。今回の優一氏の役者挑戦がどう評価されるか――その本当の賛否は作品を観るよりほかない。