今クールの連続ドラマには警察モノが多いが、その中で異才を放っているのが『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』(フジテレビ系)だ。事件の解決までが描かれる警察モノでは、勧善懲悪で視聴者をスカッとさせるようなストーリーが主流だが、このドラマでは毎話、なんとも後味の悪い結末なのだ。その狙いについて、コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。

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 この春10本の事件解決ドラマが放送されている中、『CRISIS』が異彩を放っています。当初は小栗旬さんと西島秀俊さんのアクションシーンが話題をさらっていましたが、放送が進むにつれて、別の側面が浮かび上がってきました。

 それは、後味の悪い結末へのこだわり。ここまで6話のすべてで、スカッとしない、モヤモヤとした結末で視聴者を驚かせています。

◆すべて権力者の不正を守る形で終了

1話は、自殺に追い込まれた娘の復讐を企てた父親が逮捕された一方、もてあそんだ大臣の息子は罰を受けずに終了。2話では、児童買春をしているほか、少女を意識不明の重体に追い込み、さらに証拠を握ったジャーナリストを殺した政治家が摘発されず、むしろ出世してしまいました。

3話では、死に追い込まれた父親の恨みを果たすために国会議員を殺そうとした兄弟が、逮捕直前にお互いの頭を撃ち合って自殺。4話では、ボディガードしていた大学教授が、国家が雇った暗殺者に殺されるのを稲見(小栗旬)は黙って見守ることしかできませんでした。

5話では、政治家が企業との癒着を隠すために、暗殺者を雇って暴力団を壊滅。潜入捜査をしていた稲見も政治家に利用され、殺されそうになりました。6話では、無差別爆弾テロの実行犯が実は宗教団体への潜入捜査官であり、自分を裏切った警視総監を殺そうとしたが失敗。逮捕された直後に拘置所で自殺し、真相は闇に葬られました。

 ここまで6話すべて、国家や権力者の不正と嘘が守られる形で終了。その度に稲見や田丸(西島秀俊)は悔しそうな表情を浮かべ、視聴者にモヤモヤを感じさせています。近年、「正義が悪をやっつけてスカッと解決」という作風が全盛だけに、『CRISIS』の結末は異質。ネット上には、「後味が悪すぎて見ていられない」「ベタなハッピーエンドでいいのに」などの拒否反応も少なくありませんでした。

◆壮大な前振りか、さらなる後味の悪さか

 しかし、この後味の悪さこそ、『CRISIS』の本質。各話の犯人やテロリストが悪なのか? それとも、稲見たち公安機動捜査隊特捜班が守っている国家や権力者が本当の悪なのか? という2段構えにして、視聴者の心を揺さぶっているのです。

 それを6話まで続けた成果なのか、当初はモヤモヤしているだけだった視聴者も、徐々に物語の奥深さに気づきはじめました。田丸がつぶやいた「俺たちに勝ち目はあるのか……」、稲見が上司の鍛冶(長塚京三)に言った「もし私が権力に逆らったら殺しますか?」などセリフの妙もあり、悩み苦しむ彼らに感情移入できるようになっているのです。

 そんな後味の悪い結末を仕掛けた立役者は、原案・脚本の金城一紀さん。2014年に放送された同じ小栗旬さん主演作『BORDER』(テレビ朝日系)の最終回で、「主人公の刑事が犯人を殺してしまう」という後味の悪い結末で騒然とさせたことを覚えている人も多いでしょう。金城さんは常に予定調和を嫌い、視聴者の胸をざわつかせてきただけに、『CRISIS』は今後の展開が読めません。

 毎週積み重ねている後味の悪さは、本当の悪が成敗される最終回へ向けた壮大な前振りのような気がしますが、「いや、金城さんなら最悪の結末を用意しているかも……」とも思ってしまうのです。クライマックスに待ち構えているのは、より大きなカタルシスか? それとも、より大きな後味の悪さか? どちらもありえるだけに注目を集めるでしょう。

◆セオリーとは真逆の刑事ドラマ

 前述したように現在のドラマ業界は、勧善懲悪がベースの作品が多く、特に刑事モノはその傾向が顕著。実際、“勧善懲悪の刑事モノ”は、手堅く視聴率を獲るためのセオリーとされているくらいです。

 それだけに、「善悪がはっきりせず、ほとんど悪が裁かれない」という『CRISIS』のコンセプトは真逆であり、大いなる挑戦と言えるでしょう。アクションシーンのカッコよさと、視聴者の頭と心を動かす物語。両面とも終盤に向けてますます盛り上がることは間違いありません。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本前後のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。