今クールの夏ドラマの中で、断トツの視聴率を記録しているのが『コード・ブルー〜ドクターヘリ緊急救命〜THE THIRD SEASON』(フジテレビ系)だ。7年ぶりに月9に登場したシリーズ3作目は、これまでのシーズン1、2と何が変わり、何が変わらないのか。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが好調の理由に迫る。

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 初回視聴率が夏ドラマトップの16.3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録し、2話目も15.6%と好調をキープ。ここ数年、ネットメディアに「また最低視聴率更新」「いよいよ打ち切りへ」と散々な書かれ方をしていた“月9”にとっては、ひさびさのヒット作になっています。

 とは言え、鳴り物入りで放送された前期の『貴族探偵』がふるわなかったこともあって、放送前に不安の声があったのも事実。第1弾は9年前、第2弾は7年前に放送されたため、「何で今さら」「もう完結したでしょ」「過去の遺産にすがるのか」という否定的な声も少なくありませんでした。

 なぜ7年ぶりの第3弾は視聴者に受け入れられたのか。変わっていないところと変わったところの両面を挙げながら、その理由を探っていきます。

◆『救命病棟24時』がないことによる期待

 まず変わっていないのは、緊急救命らしいスリリングかつスピーディーな物語。次々に緊迫した状況が起こり、複数の患者を同時に治療しながら、周囲の人々を含めた人間ドラマが展開されています。

 フジテレビのドラマで先輩格にあたる『救命病棟24時』シリーズが2013年を最後に放送されていないこともあり、視聴者の『コード・ブルー』への期待値は思っていたよりも高かったのかもしれません。

 災害現場での大規模なロケや、空撮などのスケール感も健在。ヘリが飛び立つシーンの緊張感、凄惨な現場、血まみれの負傷者、要所で流れるBGMなど、ディテールにこだわった演出が視聴者の心拍数を上昇させています。

 メインのキャラクターも前シリーズを踏襲。クールで野心家の藍沢耕作(山下智久)、マジメで優等生タイプの白石恵(新垣結衣)、気は強いが情に厚い緋山美帆子(戸田恵梨香)、冷静で仕事のできる冴島はるか(比嘉愛未)、お調子者だが心優しい藤川一男(浅利陽介)というように、5人の人柄は7年の時を経ても変わっていませんでした。

 もう1つ忘れてはいけないのは、エンディングで流れるMr.Childrenの『HANABI』。今回も劇的な救命ストーリーの余韻に浸らせるとともに、次のエピソード(次回予告)につなげる役割を果たしています。

◆脚本家の変更で、若者群像劇へ

 一方、変わったところは、主に2つ。

 最大の変化は、メインの5人が指導側にまわり、新たなフェローと看護師が加わったこと。淡々とした現代っ子の名取楓馬(有岡大貴)、心優しいが気が弱い灰谷俊平(成田凌)、マイペースで夢見がちな横峯あかり(新木優子)、向上心が強くかつての冴島を思わせる雪村双葉(馬場ふみか)と多彩かつフレッシュなキャラクターがそろったことで、必然的に人間ドラマの数が増えるでしょう。

 そこでポイントになるのが、脚本家の変更。今作から『医龍』(フジテレビ系)、『GM〜踊れドクター〜』(TBS系)らを手がけた医療ドラマの名手・林宏司さんから、『リッチマン、プアウーマン』(フジテレビ系)、『失恋ショコラティエ』(フジテレビ系)らを手がけた仕事に恋を絡めたドラマが得意な安達奈緒子さんに変わりました。

 この変更によって、医療モノとしての質を保ちつつも、若者群像劇の要素がアップ。前シリーズまでのキャラクターがより強調され、キャリアや妊娠などのリアルな人生にもフォーカスが当たっています。序盤は現場で足手まといになるフェローたちの描写が過剰に見えますが、これも彼らのキャラクターと人生を際立たせるための前振りでしょう。

◆作品の魂は変えず、前向きな挑戦を支持

 端的に言うと、「スリリングかつスピーディーな展開と、主要キャラクターは変えず、新たな脚本家を招いて人間ドラマを掘り下げている」ということ。現段階では、“作品の魂”とも言える部分を変えず、その上で作品の幅を広げようとした前向きな姿勢が視聴者に受け入れられているのでしょう。

 今後の期待は、やはり過酷な現場での活躍。大規模な災害現場で、トリアージ(重症度や緊急度に応じて治療と搬送の優先順位を決めること)をめぐる厳しい現実や、シビアな決断を迫られるシーンが再び見られるはずです。

 また、現時点で前振りがあるものだけでも、“指揮官”白石の采配、藍沢と新海広紀(安藤政信)のトロント行き争い、冴島の妊娠・出産、橘啓輔(椎名桔平)と三井環奈(りょう)の息子の病気、そして「藍沢と白石の恋はあるのか?」など、見どころは目白押し。さらに、緋山やフェローたちの新たな物語も期待できそうです。

 先日フジテレビに行ったとき、受付ロビーに高視聴率を知らせる紙が貼られ、関係者には安堵の顔が見られました。重症患者のような苦境が続く同局にとって『コード・ブルー』は、まさに緊急救命のような存在となっているようです。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本前後のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。