窪田正孝が主演ドラマ『僕たちがやりました』(フジテレビ系)で高校生役を演じていることが話題を呼んでいる。窪田の年齢は28歳。30代目前の彼がまさかの高校生役を演じた背景には、昨今のテレビ業界、芸能界を取り巻くさまざまな事情があるようで…。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんがその背景に鋭く迫る。

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「エッ? 窪田くんが高校生役?」と思った人は相当多かったようで、放送前からネット上には「コスプレでしょ」「(相手役の17歳)永野芽郁と11歳差はヤバすぎ」などのツッコミが飛び交っていました。

 しかし、放送がはじまってみると、笑ったときに目尻のシワが目立つなど多少の違和感こそあったものの、持ち前の繊細な演技で見事にカバー。20歳の新田真剣佑さん、21歳の葉山奨之さん、24歳の間宮祥太朗さん、17歳の永野芽郁さん、21歳の岡崎紗絵さんと同じ高校2年生として物語に溶け込み、“無責任で未熟でエッチな男の子”を好演しています。

 ただ、今回はたまたま窪田さんの演技力と童顔でカバーできましたが、「なぜ28歳の俳優が高校生を演じなければいけないのか?」という問題は棚上げになったまま。問題の背景には、テレビ局と芸能事務所が抱える構造的で根深い事情があるのです。

◆「朝ドラ出演」が民放主演の基準に

 まずテレビ局の事情から。昨今、ネットやスマホの普及で、テレビ番組視聴者の年齢層がグッと上がりました。特に、視聴率につながる「テレビ番組をリアルタイムで見る」視聴者は中高年層がメインとなり、知名度で劣る若手俳優には不利な状況となっています。

 実際、今年プライムタイム(19〜23時)のドラマで主演を務めた10〜20代俳優は、今作の窪田正孝さん、『愛してたって、秘密はある。』(日本テレビ系)の福士蒼汰さん、『視覚探偵 日暮旅人』(日本テレビ系)の松坂桃李さんだけ。3人とも「朝ドラ出演で知名度を上げた」という経歴を持つだけに、現在の民放連ドラが「中高年層に知られていない10〜20代俳優を主演に起用しない」という方針であることが分かります。

 起用を避ける理由は「視聴率が取れないから」であるのは明白ですが、一方の芸能事務所サイドも、「期待の若手に“低視聴率俳優”のレッテルを貼られたくない」と主演オファーに対しては慎重。「助演として、もう少し認知度と演技力を上げてから」「視聴率で叩かれない映画や舞台で経験を積ませよう」という方針の芸能事務所も少なくありません。

 また、10〜20代前半の俳優にとって主戦場となるはずの「学園ドラマが壊滅状態になっている」ことも、28歳の窪田さんが主演を務める理由の1つ。かつては、『GTO』(フジテレビ系)、『ごくせん』(日本テレビ系)、『WATER BOYS』(フジテレビ系)、『花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス』(フジテレビ系)などからスターが誕生していましたが、低視聴率を理由に学園ドラマが作られなくなってから、主演クラスの若手俳優が育つ場所がないのです。

 ちなみに、同じ10〜20代前半の女優では、土屋太鳳さん、高畑充希さん、芳根京子さん、有村架純さんなど、民放連ドラで主演を務められるスターが次々に誕生していますが、これはやはり朝ドラの影響に他なりません。さらに、今秋スタートの『わろてんか』では19歳の葵わかなさん、来春スタートの『半分、青い。』では17歳の永野芽郁さんがヒロインを務め、全国区の知名度を得ることは確実。この先も10〜20代前半は、「圧倒的に女優有利」の流れが続いていくでしょう。

◆視聴者の批判にさらされるテレビ番組

 ここまでテレビ局と芸能事務所の事情から書いてきましたが、問題はそれだけではありません。確かに、「『発掘し、育てる』という視点に乏しい」「作品の質よりも視聴率を重視」するテレビ局、「ルックス重視でスカウト」「消極的な育成プラン」の芸能事務所の姿勢に問題があるのは間違いないでしょう。

 しかし、「この人、知らない」「無名の役者では無理でしょ」などと、すぐに批判の声をあげがちな視聴者サイドにも問題の一端があります。テレビ番組がスポンサー企業からの広告収入で制作され、そのスポンサー企業も視聴者の声に反応しなければいけない風潮がある以上、批判の声は無視できません。

「テレビ局はスポンサー企業から広告収入を得る。スポンサー企業は視聴者に商品を買ってもらう。だから視聴者は番組を批判していいし、スポンサー企業もテレビ局も従わなければいけない」という一方的な関係性が強くなる現状では、若手俳優の抜てきはなく、「年齢的に無理があっても、知名度の高い俳優にしよう」という方針になっても仕方がないのです。

 もちろん視聴者には自由な発言をする権利がありますが、このままではドラマが中堅・ベテラン俳優ばかりになりかねません。若手俳優に対して、「スターを育てるつもりで見守ろう」と寛大な目で見られるかどうかが、彼らの未来を左右しているのです。

◆ドラマ版『デスノート』は終了直後に絶賛

 最後に、話を『僕たちがやりました』に戻すと、この先の展開は注目必至。孤独な逃亡劇を続けるトビオ(窪田正孝)は、ホームレスとなってゲイの男と出会うほか、ヒロイン・蓮子(永野芽郁)との切ない再会、友達の恋人・今宵(川栄李奈)との色っぽいシーンなど、ジェットコースター的な急展開が次々に訪れます。

 友情と裏切り、希望と絶望、理性と欲望の間で葛藤し続ける主人公を窪田さんがどう演じるのか。放送前に物議を醸したドラマ版『デスノート』(日本テレビ系)の終了直後、「やっぱり窪田くんでよかった」という声が続出しましたが、今作でもそうなるのではないか、と密かに期待しています。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本前後のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。