毎回、視聴率10%以上を記録し、好調が続くドラマ『過保護のカホコ』(日本テレビ系)。脚本を務めるのは、数々のヒットドラマを手掛けてきた遊川和彦氏。遊川氏は、2012年のNHK連続テレビ小説『純と愛』をはじめとして数多くの問題作を手掛けてきたが、今作の脚本には今までの描き方と大きな変化が見られるという。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。

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 現代親子の関係性を描いた『過保護のカホコ』が話題を集めています。

 同作の実質的な主役は2人。1人目はヒロイン・加穂子を演じる高畑充希さんで、極端な箱入り娘をユーモアたっぷりに演じています。

 2人目は脚本の遊川和彦さん。これまで『幸福の王子』『女王の教室』『家政婦のミタ』『〇〇妻』(いずれも日本テレビ系)などの過激な筋書きで物議を醸してきましたが、実は昨年あたりから作風に変化が見られています。

 昨夏に特別養子縁組をテーマにした『はじめまして、愛しています。』(テレビ朝日系)、今年1月に監督を兼任した映画『恋妻家宮本』は、ともに過激さのないハートフルな物語でした。

 そして、親子の関係性を描く今作でも、かつて『純と愛』(NHK)で見せたような過激な筋書きは影を潜めています。

◆「自分が子どもっぽい」から怒る毒親

『純と愛』は、ヒロイン・純(夏菜)の勤務先が買収や火事に遭い、思い入れのある実家のホテルが売却され、母親・晴海(森下洋子)が認知症になり、父親・善行(武田鉄矢)も海に落ちて死亡。さらに夫・愛(風間俊介)が脳腫瘍を患い、昏睡状態のまま幕を閉じるなどのショッキングな展開が続いて「問題作」と言われました。

 救いのない物語の中でも視聴者の批判が多かったのは、善行のキャラクター。義父から継いだホテルの経営に失敗して借金を増やしたあげく、家族をだまして自宅ともども売却してしまう。客や取引先にペコペコする反面、頑固さとプライドの高さは人一倍。子どもたちの言葉に耳を傾けず、すべて否定と説教で返す、という強烈な毒親でした。

 特に、一人娘でかわいいはずの純に対する風当たりは強く、「そこまで言うか」というほど厳しい言葉を浴びせていました。「娘のために叱っている」というより、「自分が子どもっぽいから怒っている」という幼稚で攻撃的な毒親だったのです。

 しかし、『過保護のカホコ』では、毒親の描き方がガラッと変わりました。

◆過保護の毒は親の親にも問題あり

 加穂子の母親・泉(黒木瞳)は、「娘のためにやっている」という大義名分のもとに支配するタイプの毒親。毎日の服選び、駅への送迎、弁当作り、恋や就活への口出しなど、「娘のために」という大義名分をオブラートで毒を隠し、加穂子をコントロールしているのです。

 穏やかそうないい母親にも見えることもあり、経済的な援助もあるため、子どもはさしたる疑問を抱かずに育ちますが、加穂子のように就活で問題が顕在化。社会への適合や自立ができず、困ってしまいます。『純と愛』の善行は、周囲からも分かりやすい毒親でしたが、問題が潜伏化・長期化するという意味では、毒性は泉のほうが強いのかもしれません。

 さらに同作は、加穂子の祖母・初代(三田佳子)の過保護ぶりにもクローズアップ。初代は泉の母親だけに、「過保護という毒は、親の親にも問題あり」というところまで踏み込んでいます。

『純と愛』の善行は、家族に黙って退職したほか、妻が認知症にかかると行方をくらましてしまうなど最後まで毒親のままでした。対して、泉は終盤に向けて変化を見せるのか、変化しないのか。最近の遊川さんはハッピーエンドを選ぶ傾向があるだけに、泉は毒親を卒業できるような気もします。

◆ヒロインの相手役は「毒親対策」だった

『純と愛』との比較で、もう1つ挙げておきたいのが、ヒロインの相手役。『純と愛』の愛は、「『人の心が見える』という特殊能力を持ち、対人トラブルを避けようとして専業主夫になる」というキャラクター。一方、『過保護のカホコ』の初(竹内涼真)は、「思ったことをズバズバ言い、画家の夢を追いかけてアルバイトに励む」というキャラクターです。

 真逆のキャラクター設定をしている理由は、それぞれの毒親対策。「人の心が見える」愛は、自分の振る舞いに後ろめたさのある善行の、「正論をズバズバ話す」初は、加穂子への過保護に依存する泉にとっての天敵なのです。

 つまり、「ヒロインの相手役は、毒親たちの暴走を止めるキーパーソンとして設定されている」ということであり、今後、泉と初が対峙するシーンがあれば盛り上がるでしょう。遊川さんの脚本は、社会風刺を効かせるとともに、中盤から終盤にかけて、視聴者の予想を裏切る展開を用意しているので期待できそうです。

 最後に余談を1つ。同作はネットPRの一環として、“AIカホコ”という新たな仕掛けを用意しました。これは「LINEで友だち登録すると、“AIカホコ”と1対1でやり取りでき、トークを重ねるほどドラマ内の加穂子と同じように成長していく」というもので、友だちの数は1か月で20万人に迫る勢い。

 高畑充希さんの役作り、遊川和彦さんの練られた脚本、独自のネット戦略など、随所に渡って進化が見られる作品であることがわかります。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本前後のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。