ここ最近、バラエティーに引っ張りだこなのがX JAPANのToshI(52)だ。海外でも活躍する大物ロックミュージシャンが今、数々の番組で笑いを巻き起こしているのはなぜか。コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。

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 6月に入り、上半期も残り1か月を切りました。例年のような若手のブレイク芸人が出ない中、テレビ業界における「陰のMVP」と言われているのがX JAPANのToshIさん。

 1月に『ペコジャニ∞!』(TBS系)で極度のスイーツ好きをカミングアウトしたほか、2月に再出演して料理教室に挑戦。『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』(TBS系)では、銀座の母から「大凶」「一生苦労を背負う」などの辛口鑑定を受けて話題を集めました。

 3月には、またも『ペコジャニ∞!』に出演して、商店街の街ぶらロケに挑戦。さらに『めちゃイケ』(フジテレビ系)のコントに遺体役で出演し、洗脳騒動をイジられ、岡村隆史さんから「バケモノアゴ男」と呼ばれたあげく、代表曲『紅』を歌うときのテンションで「『めちゃイケ』最終回だー!」とシャウトして爆笑を取りました。

 4月には、超難関のクイズ番組『99人の壁』(フジテレビ系)で100万円を獲得する快挙の一方、『芸能人が本気で考えた!ドッキリさせちゃうぞGP』(フジテレビ系)ではドッキリを体験。5月も、14日にすっかり準レギュラーとなった『ペコジャニ∞!』で、ひふみん(加藤一二三)と爆笑トークを繰り広げたほか、28日にはスタジオや茶室のある豪華な自宅を初公開しました。

 6月に入っても、さっそく2日に『ネタパレ』(フジテレビ系)で、ToshIさんのモノマネをするレイザーラモンRGさん、くっきーさんと共演。純然たるお笑い番組で芸人に混じってネタを披露するなど、今年1月から毎月さまざまなバラエティー番組に出演して、必ず笑いを取っている様子がうかがえます。

 バラエティー以外でも、1〜3月クールの連ドラ『MASKMEN』(テレビ東京系)に俳優として出演し、スイーツ漫談を披露。情報番組では、『ノンストップ!』(フジテレビ系)の密着企画を受けるなど、番組の枠にとらわれない活躍を見せてきました。

 上半期の約半年間、制作側の熱と視聴者の笑いは冷めるどころか、ますます加速しています。ToshIさんに、なぜこれほどオファーが殺到し、なぜスベリ知らずなのでしょうか?

◆心根のおおらかさとツッコミどころ

 X JAPANやToshIさんの実績や実力に関しては、今さら言うまでもないでしょう。レジェンドであるとともに、現役バリバリのアーティストとして世界のトップシーンで活躍する姿がベースであり、そのことは老若男女を問わず知られています。

 キャラクターのベースとしても「ロック」「クール」のイメージがあり、それを崩さないアーティストが多い中、ToshIさんは真逆のスタンス。天然キャラも、過去の洗脳騒動も、すべてをひっくるめた振る舞いは、大物のゆとりを漂わせ、ギャップとしての笑いを生み出しています。

 そもそも、トレードマークのサングラスに、真っ白にメイクされた顔、全身スタッズ(鋲)だらけのレザージャケット&パンツなど、異星人のようなビジュアルのベースもインパクト十分。誰と共演しても、どこへ行っても、違和感が生まれ、そこにいるだけで面白さを醸し出すことができます。

 たとえば、商店街では地元のおばちゃんに圧倒され、アポなし交渉で店主から取材拒否を受け、銀座の母にも言われっ放し。芸人たちからは洗脳騒動をイジられ放題。それらを受け止めてしまう、心根のおおらかさが視聴者の好感度につながっています。

 加えて、「シャウト芸」という鉄板ネタも、制作サイドにとっては頼もしい存在。trf・DJ KOOさんの「DJ芸」と似たネタでバラエティーでの汎用性は高く、すでに番組内のコーナーを締めくくるキラーフレーズになりました。

 今年1〜2月ごろは、自然なリアクションやお決まりのシャウトをしているだけでしたが、最近は自ら正座してパンツのスタッズが足に食い込んで痛がったり、「ここで一句」と共演者にムチャ振りしたりなど、「天然なのか?狙いなのか?」、どちらとも取れるボケが炸裂。何をしても何を言っても、「レジェンドなのに」「その見た目で」「そこまでやるの?」「マジメか!」などとツッコミどころだらけのため、スベリ知らずなのです。

◆YOSHIKIの高視聴率連発がいい助走に

 ToshIさんは過去にも『水曜日のダウンタウン』(TBS系)の「ものまねショーに本人がそっくりさんとして出ても意外と気付かれない説」に出演するなど、バラエティーに出演して話題を集めましたが、今年の出演ラッシュは当時をはるかに上回るものがあります。

 これは、年末年始にX JAPANの盟友YOSHIKIさんがバラエティーに出演して高視聴率を連発し、業界内に「X JAPANは数字を獲れる」というムードが生まれたことも大きいでしょう。バトンを受け継ぐようにバラエティーに出演しているToshIさんは、旬の芸人・くっきーさんとの共演も多いなど、さらなる追い風も吹いています。

 また、「基本的に番宣なしでも出てくれる」「テレビでのPRに頼らない」ことは大物の証であり、制作サイドと視聴者の心をつかんでいるという点も見逃せません。本業の歌から過去の失敗まで何でも披露してくれる振り幅の大きさを踏まえると、今後はMCや冠番組が実現しても不思議ではないでしょう。

 銀座の母から「頼まれたらノーと言えないところがあるでしょ」と断言された人の良さがあるだけに、制作サイドは次なるオファーを考えているはず。音楽活動で多忙ではあるものの、どんな展開があっても驚かないですし、楽しみは下半期につながっていく気がしています。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。