《ある日、僕は部長に告白された》。刺激的なキャッチコピーで世に衝撃を与えたのは、昨年放送されたドラマ『おっさんずラブ』(2018年、テレビ朝日系)。

 不動産会社のモテない営業マン春田(田中圭・34才)が突然、職場の部長 (吉田鋼太郎・60才)と、イケメン部下である牧(林遣都・28才)から愛の告白をされ、三角関係になるという予想外の展開で、人気を博した。

 春田を「はるたん」と呼び、手の込んだ“デコ弁”を作って喜ばせようとしたり、LINEの語尾に「〜だお」と付けるなど、春田を前にすると乙女っぽさがあふれてしまう部長の姿や、突然春田にキスつきで告白する牧の描かれ方は王道のラブコメディー。

 放送終了後も“おっさん愛”は冷めず、今年夏には映画版公開が決定。テレビドラマの続編放送も発表され、多くのファンが歓喜した。

「『おっさんずラブ』は、私が幼い頃から少女漫画や同人誌を読んでずっと憧れてきた“禁断の世界”。映画化や続編に、今からワクワクが止まりません」(静岡県・55才主婦)

 他にも、主人公の料理上手の弁護士を西島秀俊(47才)、その同居人の美容師を内野聖陽(50才)が演じるドラマ『きのう何食べた?』(テレビ東京系、よしながふみ著・講談社)が4月にスタート予定。

 関ジャニ∞の大倉忠義(33才)と成田凌(25才)が初共演する映画『窮鼠はチーズの夢を見る』(水城せとな著・小学館)は2020年に公開予定だ。

 これらの作品に共通するのは、ヒロインとして登場する女性がいないこと。主人公とそのパートナーはすべて男性なのだ──。

◆セクシャルマイノリティーの人が読んでも嫌な気持ちにならない

 現在、ドラマに大きな地殻変動が起きている。放送中の『家売るオンナの逆襲』(日本テレビ系)では、主演の北川景子(32才)がどんな客にも不動産を買わせるメインストーリーがある一方、フリーランスの不動産屋役の松田翔太(33才)に思いを寄せる不動産営業マン役・千葉雄大(29才)の恋が描かれている。

 昨年放送された『昭和元禄落語心中』(NHK)でも、視聴者をくぎ付けにしたのは、男たちだった。

「岡田将生(29才)演じる美しすぎる落語家と、山崎育三郎(33才)演じる天才落語家の絡みに胸がドキドキしました。原作コミックを描いた雲田はるこさんは、ボーイズラブ(以下、BL)作品の名手だけに、随所に萌えるシーンが満載でした」(東京都・58才主婦)

 男性同士の愛情や特別な絆を描くBL。狭義には、BL専門誌に掲載された作品を指すが、最近では、男性同士の恋愛要素のある幅広い作品群をBLとして楽しむ人が増えている。

『BL進化論 ボーイズラブが社会を動かす』(太田出版)の著者で、BL研究家の溝口彰子さんが指摘する。

「基本的にBLは男性同士が恋愛すれば、後は何をしてもいい自由なジャンル。最近は才能ある書き手が続々と現れて、どんどん進化しています」

 明治大学で「ジェンダーと表象」を教える藤本由香里さんはこう話す。

「もともと女性が楽しむマニアックな読み物として発展したBLには、少し閉じた感じがありました。しかし最近ではそれが少しずつ現実に対しても開かれてきて、溝口さんも著書で指摘するように、当事者が見ても共感できる作品が増えているように感じます。

 なかでも『おっさんずラブ』は、男同士の恋愛を“特殊な恋愛”として描かず、『人が人を好きになるとはどういうことか』という普遍的なテーマを丁寧に描いていました」

 BLといえば、性交渉シーンを“お約束”として思い浮かべる人も多いだろう。だが、それが必須というわけではないという。マンガ研究者のヤマダトモコさんは言う。

「BLの世界は本当に多様です。ハードな性交渉を描くものもある一方で、性交渉はなく、男性同士の固い絆だけを描くものもある。内容の幅広さが現在のBLの大きな特徴です」

 東京・渋谷のスクランブル交差点の目の前にある書店、SHIBUYA TSUTAYA。地下1階のコミック売り場には、BL作品が平積みされる。

「ここ数年で売り上げは右肩上がりです。映像化作品も増え、間口が広がり、読者層は20〜30代女性を中心に10〜50代まで幅広くなり、男性購入者も増えました」(SHIBUYA TSUTAYA BL担当者)

※女性セブン2019年3月7日号