ちょっとした体の不調はドラッグストアで購入できる市販薬で治すという人も多いだろう。しかし、薬の使い方を間違えると、症状が悪化してしまうこともある。市販薬こそ正しい使い方をしなければならない。

◆胃酸を出すべきか抑えるべきか

 静岡県の上村静香さん(39才・仮名)が話す。

「ママ友が集まって居酒屋で忘年会をしたんですが、そこで食べたかきにあたったみたいでお腹が痛くなり、いつものんでいる胃腸薬を服用して寝たんです。そうしたら深夜に激痛で目覚め、トイレで悶絶しながら一夜を明かすことに…あんな痛みはもう経験したくないというほどひどかったです」

 何が間違いだったのか。薬剤師で銀座薬局代表の長澤育弘さんが指摘する。

「食中毒(食あたり)などが疑われる時には、『H2ブロッカー薬』を含む薬はのんではいけません。『H2ブロッカー薬』には、胃酸の分泌を抑える働きがあります。このタイプの薬は暴飲暴食などで胃酸が過剰に分泌された時に起こる胃痛、もたれ、胸やけ、むかつきには効果的ですが、食中毒の場合は逆効果になります。

 胃酸は本来塩酸並みの強酸性で、食中毒の際には原因菌を殺菌し、食い止める働きがあるので、分泌が抑えられてしまうと食中毒症状の悪化につながるのです」

 これから食中毒の一種であるノロウイルスが流行する季節がやってくるだけに、間違えないよう覚えておきたい。

 また、「胃が痛い時に、痛み止めとして解熱鎮痛薬をのむと、かえって胃の痛みを強める可能性がある」と言う。

「胃の粘膜は、プロスタグランジンという物質に守られています。ところが解熱鎮痛薬はこの物質の働きを抑えてしまう。ゆえに、胃の粘膜が守られず、胃炎を起こしてしまうことがあるのです」(長澤さん)

◆頭痛薬、症状の2大タイプでのみ分ける

 頭痛持ちの女性は多い。だが、同じ「頭が痛い」でも、頭の中ではまったく別の症状が引き起こされている可能性がある。

 新潟大学名誉教授で医師の岡田正彦さんは、「頭痛には大きく分けて2つのタイプがあるが、それを見分けるのは非常に難しい」と話す。

「最も多く見られる頭痛が『緊張型頭痛』。同じ姿勢を続けたあとや、肩こりなどから始まることが多い。この頭痛は、血管が収縮することによって痛むタイプです。他方、『片頭痛』は、血管が拡張して頭痛が起きるタイプ。

 市販の頭痛薬として用いられる『解熱鎮痛薬』は、緊張型頭痛に有効ですが、片頭痛の重い症状には効きません。片頭痛には血管を収縮させる薬が必要ですが、市販はされていないので病院で処方してもらうのがいいでしょう」(岡田さん)

 状態に合った薬をのまないと、症状は長引くだけだ。

 片頭痛に関しては、呼び方は「片」頭痛だが、両側が痛むことも珍しくないという。やはり素人の自己判断は禁物である。

◆かぜ薬 「治療」ではなくあくまでも「緩和」

 気温の低下とともにかぜも猛威を振るい始める。無意識に総合感冒薬に手が伸びそうになるが、それも一考の余地がありそうだ。

「昨シーズン、夫と同じ日にかぜをひいてふたりで寝込んでしまったんです。夫は絶対に市販薬をのまない派。私はいつものかぜ薬をしっかりのんで寝ました。鼻水、のどの痛みの症状は私の方がすぐ治まったのですが、完全復帰は夫の方が早かったような…」と北海道の主婦、小林春菜さん(47才・仮名)は首をひねる。

 これはどういうことなのだろうか。

「かぜの時には体温が上がります。熱が出るのは、かぜのウイルスと戦えるように、人体の免疫細胞が活発に動ける温度に上げているためです。42℃以上になると脳症の危険がありますが、それ以下の熱であれば無理に下げなくていい。かぜ薬はせきや鼻水などの症状を抑える効果はありますが、根本のかぜ自体を治すわけではないことは理解しておくべきです」(長澤さん)

 手軽で便利な市販薬。不調を早く治すためにも、味方につけるほかない。自己判断による間違ったのみ方には充分に気をつけて、上手に活用しよう。

※女性セブン2019年12月19日号