国民の意見が二分されるテーマはいくつもあるが、2020年東京五輪を前に、マラソン代表をめぐる論戦も真っ二つに分かれているのではないだろうか。

 男子マラソン代表3枠のうち、中村匠吾(27・富士通)と服部勇馬(26・トヨタ自動車)がすでに2019年9月15日開催のマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)で代表に決定。残る1枠はMGCファイナルチャレンジとなる2020年3月1日の東京マラソンか、3月8日のびわ湖毎日マラソンで2時間5分49秒という高い設定記録を突破した最速の選手が3人目の代表となる。

 残る一選手は誰がふさわしいのか。MGCではスタートから独走したものの37.4kmで追い抜かれ14位に終わった設楽悠太(28・Honda)か。MGCファイナルで誰も設定記録を更新しなかった場合に代表となることが決まっている日本記録保持者の大迫傑(28・ナイキ)か。そこで見解の異なる2人の識者の意見を紹介しよう。

●酒井政人氏(スポーツライター・大迫派)

 大迫選手はレースの流れの中で自分のポジションを判断し、上位に食い込んでいく。逆に設楽選手はMGCで見せたように自分から仕掛けられる。正直、タイプの違う2人とも東京五輪に出てもらいたかったが、残りの枠はひとつしかない。

 設楽選手の一か八かの走りの魅力は捨てがたいものの、より確実に安定した走りができると考えられるのは大迫選手です。初マラソンとなった2017年ボストン、同年の福岡国際、日本新記録を樹立した翌2018年のシカゴ、そして2019年のMGCと、ゴールしたマラソンはすべて3位に入っています。海外勢に囲まれるなかで上位へ入ってきた安定感は、日本の男子マラソンでナンバーワンです。

 大迫選手はとにかく入念に準備するタイプ。五輪本番に向けても、しっかり調整してくれるでしょう。

●宗猛氏(旭化成陸上部総監督・設楽派)

 大迫はトップ集団のなかで“守りのレース”をするタイプ。たぶん、守りじゃ五輪は勝てない。

 MGCでは設楽が飛び出したが、私なら後ろについた。そのままついていき、勝負所でスパートすれば大迫は楽勝だったはず。守り過ぎて、最後のドタバタで3位に終わった。

 ペースメーカーがいない五輪では、スタートから誰かが飛び出すなど予想外の展開があり得る。だから対応力のある(すでに代表が確定した)服部勇馬に期待していますが、大迫か設楽なら、一発屋気質の設楽のほうが結果を残すチャンスがあるだろう。

 ただ、現実的には設楽の代表入りの可能性は低い。飛び出すスピードは凄いものがあるから、あとは(日本記録更新が代表入りの条件となる)3月の東京マラソンまでに、最後までもつスタミナが蓄えられるかだ。

※週刊ポスト2020年1月17・24日号