GI高松宮記念も無観客で行われることになった。馬券予想において下見所、つまりパドックを重視するファンとしては思案のしどころ。競馬ライターの東田和美氏が考察した。

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「無観客競馬」ということで、パドックでの様子はテレビで確認するしかない。この際無料で視聴できるグリーンチャンネルを大いに活用したい。

 解説者が「入れ込み気味」とか「落ち着いている」、「前進気勢がある」「踏み込みが深い(浅い)」と言うのは、実際にパドックを見ていても感じることだし、テレビ画面を見ればなるほどと思うことはある。パドックで見る場所によっては毛艶の良し悪しも分かるかもしれない。 

 しかし「体がスッキリしてきた」「馬体に身が入ってきた」となるとどうだろう。さらに「重っ苦しい」「緩さがある」などは、画面を見てもすんなりとは入ってこない。首を上下に振っていたりしていても「少しうるさいですが、いつもこんなもの」とか「この程度なら許容範囲」と言われてしまうと、なおさら分からない。ましてや「馬体にメリハリがある」「仕上がり切ってしまった印象」という抽象的な表現になると、もう手に負えない。「好感が持てる」「いい雰囲気」「楽しみ」となると完全に解説者の主観だ。

 平常時のパドックで(しかも4階5階から)知人同士「毛艶がピカピカだな」とか「気合が入っているな」と話しているのをたまに耳にするが、それはパドック解説での独特の言い回しが記憶にあるからだ。

 毎日トレセンで追い切りを見ている競馬記者にしてみれば、それは長年の経験から掴み取ったものなのだろう。他の記者が見ても同じように感じることがあるに違いない。しかし我々は、分かったような気になって馬券を買う(投票する)わけにはいかないのだ。

 パドック解説は、まず出走馬についてひととおりの評価をし、まとめとして「パドックでの状態を踏まえた推奨馬」を、出走頭数によって3〜6頭、推奨順にあげるのが基本だ。前半は5レースまで、後半は6〜12レースと1場あたり2人の記者が担当する。

 3月20〜23日の3日間競馬で、この「推奨馬」は平地競走69レース中47レースで勝っている。勝率は7割近い。

 実に3回に2回は的中している、と聞けばさすがと思うが、これはあくまでも3〜6頭あげたうちの1頭が勝ったというだけ。1番手にあげた馬が勝ったケースになると14回で勝率はおよそ2割だった。しかもそのうち12回は1番人気馬、あとの2回は2番人気馬だ。

 そもそも1番人気馬は69レース中67レースで「推奨馬」にあげられており、2番人気も65レース。この数字を見て「とりあえず上位人気馬をあげておけば無難なのだろう」という意地悪な見方もできるが、状態がいいからこそ上位人気に推されたとも言える。ちなみに推奨されなかった1番人気馬2頭は、いずれも連対を外している。

 しかし1番手にあげた馬を軸に、2番手以下の推奨馬に流して的中した時の払戻額は、最高でも1100円程度。ほとんどが三桁配当でこの買い方では当然赤字。推奨馬がワンツーになったのは26回あるが、人気馬同士が中心になっており、推奨馬すべての馬連ボックス買いなどでは、やはり赤字。あげた馬すべてが3着以内に入ったのは8回あり、うち2回は3連単で4万円以上ついていたが、毎度毎度あげられた馬すべての3連単ボックスなど買い続けられるはずもないし、買ったとしても当然大赤字だ。

 つまり漫然と「推奨馬」を参考に買っていても、儲かりはしない。そこで人気薄の「推奨馬」について集計してみると、これはなかなか厳しい。人気薄を1番手に指名することは稀で、6番人気以下は、だいたい3,4番手に名前をあげる。

 6番人気以下の「推奨馬」が勝ったのは5回、2,3着に入ったのが3回。21日阪神2レースを9番人気で勝ったバルボア(単勝2380円)を、3番手に推奨していたのは見事だが目立つのはそれくらい。

 ある解説者は10番人気馬を1番手に指名したが、結果は最下位。さらに別のレースでも12番人気を1番手に指名したが、これも人気通りの12着。解説者が人気薄を1番手にしていると、ついつい買ってみようかなと思ってしまう。実際当初70倍ぐらいあった単勝オッズは最終的に50倍になっていた。

 この2頭はいずれもこの記者が紙面で◎を打った馬。中継では「元気はあるが、もうちょっと踏み込みの強さがあれば」と控えめ。つまり、“パドックからの推奨”ではなく、日々の調教などから判断しての1番手。パドックを見て、「紙面での私の◎、パドックを見たら全然ダメでした」と言えないのは当然だ。

 厳しい評価を覆す結果も多い。「見るからに太い」「歩様の硬さが気になる」「落ち着きがない」「前走はもっと活気があった」。さらには、強い口調で「絞れたけどまだまだ中身がない」と強い口調で酷評されたり、「厳しいでしょうね」と鼻で笑われるように言われた馬が好走した例は少なくない。好走した馬の関係者が解説を聞いていたら、文句の一つも言いたくなるだろう。

 しかし一方で、人気薄でも高評価の馬がいる。たとえば、20日中山のフラワーカップを12番人気で勝ったアブレイズのパドックでの評価は「少しうるさい面はあるがトモが立派で力強さを感じさせる。好気配」というものだった。推奨馬には入れていなかったが、そそられる言い方ではないか。他にも人気薄なのに、「力を出せる状態」「増減なしだが体が締まってきた」「久々だけど落ち着いて周回できている」というような評価の馬が穴をあけているケースはあった。

 紙面では無印だし、「推奨馬」にも入っていないけれど何気なく高評価、これがまさしく「パドックでの特注馬」だ。パドックではその馬の能力まではわからないはずだが、プロの目から見て「走ってもおかしくない」状態にあるのは確かなのだろう。もちろん3日間だけの集計だけで決めつけることはできないし、解説者の能力やキャラクターにもよる。しかし、自分が狙った人気薄の馬の評価には耳を傾けておきたい。

 さて、高松宮記念。

 1200mのGⅠになって24回、とにかく一筋縄ではいかないレースだ。1番人気馬はオッズ1倍台だったことが3回あって1勝、2倍台は12回でやはり1勝のみ。5勝2着3回は、2番人気馬の4勝2着6回、3番人気馬の7勝2着4回に連対率で劣り、4番人気馬の5勝(2着2回)と同じ勝率。馬券圏内の3着内率を見ても、4番人気までは結果にほぼ差がない(5番人気になると極端に落ちている)。

ただし2、3着に人気薄(といっても2着馬は2年前の覇者だったのだが)が飛び込んで、3連単が449万円もついた昨年はともかく、実は上位馬総崩れということは少ない。2000年以降2018年までは、3着以内に4番人気までの馬が必ず2頭は入っており、馬連の万馬券は4回しかなかった。ワイドにしても昨年こそ1-3着と2-3着が高配当だったが、それ以前は万馬券が1回あるだけ。

 つまり「上位拮抗」。人気上位4頭を1、2着に、3着にはそれに穴っぽい3頭を加えた60通りの3連単でどうか。3連単の発売が始まってから1万円に届かなかったのは、1、2、3番人気で決まった2回だけ。1頭でも4着以下がからめば、着順一つでそれなりの配当に巡り合える。

 3着付けに母系が魅力のアウィルアウェイ、前走降着の憂き目にあったダイアトニック、重馬場歓迎というノームコアあたりを考えている。このうちパドック解説でそそられる馬がいたら、人気上位馬4頭への馬連とワイドも買っておくということでどうだろうか。

●ひがしだ・かずみ/伝説の競馬雑誌「プーサン」などで数々のレポートを発表していた競馬歴40年、一口馬主歴30年、地方馬主歴20年のライター。