無観客であることに寂しさはあるものの、2021年のGI戦線がいよいよ幕をあける。競馬ライターの東田和美氏が考察した。

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 思えば競馬場で普通にレース観戦をしたのは、昨年のフェブラリーステークスの日が最後だった。冬場のダートGⅠなので春秋のシーズンほどではないが、それでも東京競馬場には5万人以上(50985人)が集まった。レースは2018年の安田記念馬モズアスコットが、ダート2戦目にして戴冠。2着には最低人気のケイティブレイブが入り、馬連は3万6230円もついた。そのモズアスコット、さらに長年ダート界をけん引してきた2017年の最優秀ダート馬ゴールドドリームも昨年いっぱいで引退して種牡馬になった。

 残された現役のダート3強が10戦8勝でGⅠ4勝馬クリソベリル、東京大賞典3連覇中で帝王賞勝ちもあるオメガパフューム、そして昨年のチャンピオンズカップでクリソベリルを破ったGⅠ3勝馬のチュウワウィザードであることに異論はないだろう。昨年の年間レーティングがトップだった帝王賞の1〜3着である。クリソベリルは2019年、チュウワウィザードは2020年の最優秀ダート馬に選出されている。

 この3頭は今回出走していない。クリソベリルは故障、オメガパフュームは距離不適で回避。チュウワウィザードは1着賞金10億円というサウジカップに遠征した。

 今回中央のGⅠ勝ちがあるのは2019年のフェブラリーSを勝ったインティだけ。ダートGⅠで連対した馬は他にいない。GⅡ勝ち3頭はここ3年の東海ステークスでのもの。今年このレースを経て出走してくるのは勝ち馬オーヴェルニュとインティだけだ。

 ならば昨年の帝王賞で4着だったワイドファラオを狙いたい。

 ここ2戦は南部杯7着、みやこSは9着。角居師は「収まりがよすぎて弾けなかった」としているが、しっかり休養を取りここに照準を合わせてきた。

 JRAホームページの「第38回フェブラリーステークス(GⅠ)プレレーティング」でワイドファラオは「115」でトップ。該当レースは昨年5月のかしわ記念。2月のフェブラリーSを勝って芝ダートGⅠを勝ったモズアスコット、2018年の最優秀ダート馬ルヴァンスレーヴ、今回も人気になっているサンライズノヴァやアルクトスを相手に、悠々と逃げ切っている。地方交流レースは往々にして「2つの競馬」が行われがちだが、このレースは7頭という小頭数で地方馬は1頭だけ。福永騎手が絶妙のペースを創り上げたとはいえ、狭い競馬場でマグレがあったということではないはずだ。この時ワイドファラオを追い詰めたケイティブレイブは前述の帝王賞でも6着だったが、やはり今回は出走していない。

 東京のダート1600mはスピードが不可欠。ワイドファラオは3歳時に芝GⅡのニュージーランドトロフィーを勝ち、GⅠNHKマイルカップでもコンマ4秒差に粘っている。同厩のカネヒキリがスピードを研くため、フェブラリーステークスの前に芝で追い切ったのは有名な話。海外より日本での活躍が目立つヘニーヒューズ産駒といえば、2016年にモーニンが勝っているし、芝でのGⅠ勝ちもあるアジアエクスプレスがいる。

 相手にはやはり芝での実績があるエアスピネル、東京コースが会うサンライズノヴァ、唯一の中央GⅠ馬インティも今度は好走する順番か。そして5歳ながら強豪とのレースで揉まれてきている地方馬ミューチャリー。過去20年の2着馬のうち12頭は暮れの大井・東京大賞典か川崎記念からの地方交流組だ。

 開業以来20年、定年まで10年以上を残して競馬界を去る角居勝彦調教師にとって最後のGⅠ。2001年の開業年に早くもGⅠ阪神ジュベナイルフィリーズに福永祐一騎手騎乗のシェーンクライトで初参戦して以来、GⅠレースにのべ200頭以上を送り出して現役2位の26勝。「引退記念のG1出走」などと思うこともなく、いつも通り入念に仕上げてくるはずだ。

●ひがしだ・かずみ/伝説の競馬雑誌「プーサン」などで数々のレポートを発表していた競馬歴40年、一口馬主歴30年、地方馬主歴20年のライター。