東京オリンピックが終わってから、多くのテレビ番組からオファーが寄せられたメダリストたち。中でもさまざまなジャンルの番組に出演し、人気No.1といわれるのが柔道男子100kg級で金メダルを獲得したウルフ・アロン選手(25才)だ。その人気の理由について、コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する

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 東京オリンピックの閉会式から2か月あまりが過ぎた今なお、民放各局のバラエティにはメダリストたちの出演が続いています。

 なかでも断トツの人気は、柔道男子100kg級金メダリストのウルフ・アロン選手。この1か月あまりを振り返ってみても、9月は18日の『炎の体育会TV』(TBS系)、21日の『デカ盛りハンター』(テレビ東京系)、22日の『世界くらべてみたら』(TBS系)、24日の『バズリズム』(日本テレビ系)、26日の『THE鬼タイジ』(TBS系)、27日の『有吉ゼミSP』(日本テレビ系)、29日の『東大王』(TBS系)、30日の『ダウンタウンDX』(読売テレビ・日本テレビ系)。

 10月に入っても、1日の『まんぷくダービー』(TBS系)、3日の『DASHでイッテQ!行列のできるしゃべくりナンデス!日テレ系 秋のコラボSP』(日本テレビ系)、5日の『爆笑!ターンテーブル』(TBS系)、9日の『オールスター感謝祭’21秋』(TBS系)、12日の『今夜はナゾトレ 2時間SP』(フジテレビ系)、13日の『水野真紀の魔法のレストラン』(MBS・TBS系)、15日の『熱盛テレビ〜熱く盛り上がるスポーツの秋SP』(テレビ朝日系)、16日の『新しいカギ!2時間SP』(フジテレビ系)、17日の『スクール革命』(日本テレビ系)、17日の『くりぃむナンタラ 初回1時間SP』(テレビ朝日系)に出演。

 今週末も23日の『出没!アド街ック天国 〜新小岩〜』(テレビ東京系)に出演したほか、24日の『戦闘中〜忍の逆襲〜』(フジテレビ系)への出演が発表されています。

 東京オリンピックのメダリストには、バラエティ慣れした卓球・水谷隼選手や、ユニークなキャラクターのボクシング女子フェザー級・入江聖奈選手、女子バスケットボール・馬瓜エブリン選手らもいる中、なぜウルフ・アロン選手にオファーが殺到しているのでしょうか。

 各局のテレビマンや番組関係者への取材を進めたところ、いくつかの納得できる理由が浮かび上がってきました。

何でもできる万能タレントだった

 まず前述した出演番組の内訳を見ると、『炎の体育会TV』『THE鬼タイジ』などのアスリートらしい身体能力を生かしたものに加えて、『東大王』『オールスター感謝祭’21秋』ではクイズ、『デカ盛りハンター』『有吉ゼミ』『まんぷくダービー』では大食い、『ダウンタウンDX』『スクール革命』ではトークに挑戦。

『オールスター感謝祭’21秋』で総合2位に輝くなどクイズをそつなくこなすほか、『まんぷくダービー』では計4kg超もの食べっぷりを披露し、『ダウンタウンDX』では魚をさばく姿を公開。あの内村光良さんから「しゃべりが達者なんです」と称えられるなど、タレントとほぼ同じポジションでのゲスト出演が目立ちます。

 さらに見逃せないのは10月に入ってから、『爆笑!ターンテーブル』でお笑いネタのリアクション、『新しいカギ』でコント、『くりぃむナンタラ』でドッキリの仕掛け人と、よりお笑い要素の濃いポジションでの出演が増えていること。

 とりわけ『くりぃむナンタラ』では、「ウルフ・アロン選手を有田哲平さんが遠隔操作する」という企画に合わせてボケを連発し、次々に笑いを巻き起こしていました。明らかに業界内でバラエティ特性を評価されている様子が伝わってきますし、まだまだオファーが増えそうなムードが漂っています。

 ウルフ・アロン選手が業界内で評価されているのは、昭和のころから年齢層を問わず印象のいい「気は優しくて力持ち」というタイプのアスリートであること。柔道界で「強さの象徴」と言われる重量級の王者でありながら、常にニコニコと笑顔を絶やさない穏やかな物腰が目につきます。また、時にとぼけた表情を見せ、服の間から胸毛や腕毛をチラつかせるなど、まるで、ゆるキャラのような脱力感を漂わせていることもポイントの1つでしょう。

 その上、制作サイドの意図を汲んでノリよくボケられるため、作り手にとっては「笑いの手数」という意味で計算ができる存在。「バラエティの出演者は同じ芸人ばかり」と言われがちな中、日本の英雄であるだけでなく、トークもクイズも大食いもこなし、笑いも取れるのですから、オファーが殺到するのも当然でしょう。

すべては愛する柔道普及のために

 これほど出演が続けば当然、「バラエティに出すぎではないか」という批判的な声が挙がってしまうのも無理はありません。しかし、ウルフ・アロン選手は、そんな声を承知の上でバラエティに出演し続けているのです。

 ウルフ・アロン選手は今年いっぱいを休養期間にあてて、年明けに再始動することを明かしていました。また、何度か「その休養期間で、柔道の競技人口やファンを増やすための活動をしていきたい」「柔道のイメージを変えられたら」などの発言をしています。

 つまり、「出すぎ」と言われることは想定内であり、むしろ現在は柔道の普及につながりそうな手応えを感じているころなのかもしれません。もともとクレバーなウルフ・アロン選手なら3年後に行われるパリオリンピックへの道筋を逆算した上で、「今は休養が必要」「その間に普及活動をしよう」と思っているのではないでしょうか。

 ウルフ・アロン選手はテレビ出演だけでなく、5日にはZOZOマリンスタジアムでロッテVS西武の始球式に挑み、8日には千葉県浦安署の一日警察署長を務めました。その際も、前者ではロッテのマスコットキャラ「謎の魚」を投げ飛ばすパフォーマンスを見せ、後者では署員とのエキシビジョンマッチを行うなど、しっかり柔道の普及活動を行っていたのです。

 少なくとも今年いっぱいはバラエティだけでなくさまざまな場で、ウルフ・アロン選手の活躍が見られるのではないでしょうか。

【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。