京都大学大学院医学研究科消化器外科医の山本健人氏が上梓した『医者が教える正しい病院のかかり方』は、病院にまつわる初歩的な疑問の数々に丁寧に答えた内容で、“気になっていたけど先生には聞きづらかった”と読者の共感を集めているという。

「手術を受けるとき」によく聞かれる疑問3つに山本氏が答えてくれた。

 * * *
【Q:病院は何を基準に選べばいい?】

 私は「がん治療認定医」の資格を持っていますが、医師か病院のことでもっとも質問が多いのはやはりがん手術に関することです。とくに病院選びは患者さんの大きな関心事でしょう。

 かかりつけ医がいる人はそこですすめられた病院がベストですが、そうでない場合、自身の病状と照らして、著しく症例の少ない病院はやめたほうがいいと言えます。症例数については各病院のHPなどで確認できます。

 また、「手術をしてもらいたい医師がいる病院に行きたい」という患者さんもいらっしゃいます。

 しかし医療は総力戦です。執刀を担当する医師以外に、麻酔医師も入れば看護師や臨床工学技士などの医療スタッフもいる。術後のリハビリや緩和ケア、退院後の地域医療との連携も重要な要素です。

 執刀医が良くてもそれ以外が整っていなければ意味がない。「がん診療連携拠点病院」に指定されている病院かどうかが1つの指針になると言えるでしょう。

【Q:セカンドオピニオンと病院紹介は何が違う?】

 かかりつけ医が別の医師を紹介して専門の治療を受けることと、「セカンドオピニオン」を混同されている方がいらっしゃいます。

 セカンドオピニオンは治療中の病気に対して他の医師の意見を聞く仕組みです。決して別の病院の診察を受けることではありません。

 新たに検査を行なうことも治療を開始することもない。元の病院の医師が作った診療情報提供書を見てコメントするだけです。保険診療ではないので1万〜4万円の費用もかかります。

 別の医師の客観的な意見を参考にしながら元の医師と改めて治療について相談するというのがセカンドオピニオンの正しい理解です。

【Q:手術と抗がん剤、どちらを選べばいい?】

 がんになったら手術、抗がん剤、放射線治療など様々な治療の選択肢がありますが、「このがんのこのステージ、この症状であればこの方法がもっとも予後がいい」というデータが揃っています。これに合わせて決定された治療方法を「標準治療」と呼びます。

 これは「並の治療」という意味ではありません。現在検証し得る最上の科学的根拠に裏付けられ、標準化された治療という意味です。

 科学的根拠とは、数百、数千といった大勢の同じ条件の患者を集め、厳密な規則にのっとって薬の効果が解析された臨床試験の結果です。もちろん薬の効果には個人差がありますが、より多くの人に効いた、つまり勝率の一番高いものが「標準治療」とされ、保険診療で受けられるようになっています。

 保険の利かない高額の治療のなかには、標準治療のように臨床試験で効果が確認されていないものもあるので注意が必要でしょう。

 医師が「標準治療です」と言って勧めてくれた方法が患者にとって「最も有効な治療」ということになるのです。これは「1000人のがん患者を診てきた専門医師」の個人的意見よりも信頼できます。

※週刊ポスト2020年1月3・10日号

医者が教える 正しい病院のかかり方 (幻冬舎新書)