1970年1月、四次元ポケットから夢と希望に満ちた“ひみつの道具”を取り出すネコ型ロボット・ドラえもんが誕生した。50周年を記念して、作家の瀬名秀明氏に、22世紀に伝えたいドラえもんの場面を聞いたところ、『大長編ドラえもん5 のび太の魔界大冒険』の一場面が選ばれた。

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 藤子先生も影響を受けたと思われるイギリスのSF作家アーサー・C・クラークの有名な言葉に、「十分に発達した科学は魔法と区別が付かない」があります。ドラえもんが出す道具は「十分に発達した科学」であり、魔法と見分けがつかないような不思議なことをやってくれます。

 物語のラストシーンはそれを象徴する名場面です。前半、魔法の世界なのに魔法を使えないのび太が、初めて魔法の呪文で動かせたのがしずかちゃんのスカートでした。これがラストシーンの伏線となります。

 元の現実世界に戻って魔法は使えないはずなのに、魔法の呪文を唱えたらしずかちゃんのスカートがフワッと動く。「風だよね、きっと」と、のび太。答えは誰にもわからない。

 科学と魔法。一瞬混ざり合い、少し不思議なことが起こるドラえもんの世界観を22世紀も受け継いでいってほしいです。

【『大長編ドラえもん5 のび太の魔界大冒険』とは】
 魔法を使えたら楽しいだろうなと夢見るのび太。電話をかければ空想の世界が本物になる道具「もしもボックス」を使って、人間が魔法を使うことができる魔法世界を作り出した。その魔法世界で魔学博士とその娘・美夜子に出会い、地球侵略を企てる魔界が大接近していることを知る。のび太やドラえもん、しずかちゃん、ジャイアン、スネ夫たちは地球を救うため、大魔王を倒すべく魔界へ乗り込んでいくが、次から次へと危機が襲いかかる。

●せな・ひであき/1968年生まれ。静岡県出身。1995年、東北大学大学院薬学研究科在学中に小説『パラサイト・イヴ』で日本ホラー小説大賞を受賞。ドラえもんマニアとして知られ、『小説版ドラえもん のび太と鉄人兵団』(小学館)の著書もある。

(C)藤子プロ・小学館

※週刊ポスト2020年3月13日号