世界的な感染拡大が続く新型コロナウイルス。これまで医療従事者や職員に新型コロナの陽性患者が出て外来を閉鎖したり、陽性患者の通院によって院内感染が広がり、医療現場がパンクするケースが報じられてきた。

 これに加え、現在急増しているのは、備品不足による病院の自主休診だ。実際に病院が閉鎖されたら何が起こるのか。糖尿病と心臓病の専門医である銀座泰江内科クリニック院長の泰江慎太郎医師が指摘する。

「ほとんどの通院患者は次回の受診までの薬しか処方されていません。そこで突然休診になったら、薬切れで多くの患者の健康状態に影響が出ると予想されます」

 最も懸念されるのは、国内患者数が1010万人に達する高血圧治療薬(降圧剤)が入手できなくなることだ。厚労省「国民健康・栄養調査」(2017年)によれば、60代の35.7%、70歳以上の51.7%が降圧剤を服用しているという。

 泰江医師は「降圧剤が切れると、ほかの薬より病態の急変につながりやすい」と指摘する。

「服用を急にやめると、普段は収縮期の血圧を140に抑えている人の血圧が2〜3日で180以上まで急上昇することがあります。そうなると、高血圧緊急症と呼ばれる重症高血圧になり、脳卒中や心筋梗塞を引き起こす怖れがあります」

 糖尿病治療薬の不足も最悪の事態を招きかねない。

「糖尿病で薬を止めると、強力な脱力感、冷や汗、目のかすみ、手足の感覚麻痺などに襲われることもある。特に一型糖尿病でインスリンを注射している人の場合、注射をやめると2〜3日で血糖値が400〜500と急激に上昇し、昏睡状態になる怖れがあります。糖尿病の9割を占める二型糖尿病でも、運動不足や過食などのリスク因子を持つ人がインスリン注射を止めたら血糖値が200〜300まで上昇し、脳梗塞などを発症するリスクが高まります」(同前)

 日本脳卒中協会常務理事で、獨協医科大学病院脳卒中センター教授の竹川英宏氏は、脳卒中の再発予防薬として処方される抗凝固薬が切れることも危険だという。

「不整脈のひとつである心房細動の患者は、血液をサラサラにして血栓を予防するために抗凝固薬を服用します。しかし、薬を1〜2日ほど切らすと心臓にできた血栓が脳や頚の血管でつまり脳梗塞を再発する危険性が高まる。また、一部の抗凝固薬は、定期的に血液検査を実施して、処方する用量を調整する必要があります。休診時は採血ができないため、用量を調整できず危険な状態になる可能性があります」

※週刊ポスト2020年4月10日号