日本にとって中国はアメリカに次ぐ食料供給国であり、野菜と魚介類の依存度は輸入先1位である。新型コロナの感染拡大を機に日本で中国依存の見直しを求める声が高まるなかでもその状況は変わっていない。

 そんななか、6月15日に厚労省は、中国から輸入された生鮮ニンジンから残留農薬基準値を上回る農薬「トリアジメノール」が検出されたと公表した。厚労省は「どこにどれだけの数量が流通したのかは公表しておりませんが、一部が国内に流通したことは事実」(医薬・生活衛生局食品監視安全課輸入食品安全対策室)と認めた。

 国内2つの業者が別々に輸入した生鮮ニンジンから相次いで検出されたが、そのうちの1社は本誌・週刊ポストの取材にこう答えた。

「出荷したものが市場に出回った可能性はありますが、『わかる範囲で全部回収して廃棄する』と厚労省に届け出をしました」

 この業者は外食チェーンや食品メーカーを取引先としているが、どこに卸しているかは明らかにしなかった。食の安全に詳しいジャーナリストの小倉正行氏が指摘する。

「厚労省は食品衛生法に違反した食品をリストとして公表していますが、回収できずに流通した食品が実際にどんなスーパーやレストランで使われたかは明らかにしておらず、輸入業者にもそれを公表する義務はない。知らずに口にしてしまう可能性があるのです」

 現在はスーパーやレストランでは原産地表示がされているから、それさえ確認しておけば大丈夫、と安心するのは早計だ。

 食の安全意識の高まりを受けて2017年9月、生鮮食品や加工食品の原産地表示を厳格化する「新たな加工食品の原料原産地表示制度」がスタートした。しかし今は2022年3月末までの移行期間にあたる。

「加工食品は最も重量の大きい原材料の産地しか表示義務がない。しかもその食材を複数の国から輸入していた場合、重量が3番目以降の国や地域は『その他』と産地表示すればよい。複数の国の食材の割合などが頻繁に変動する場合は、国名などを記入せず『輸入』と括って産地表示しなくてよい決まりもある」(小倉氏)

 外食や弁当、惣菜の場合は対象外となることも課題だ。

「外食店や弁当店で調理された惣菜などは、消費者が従業員に原産地を確認できるため、原産地表示の対象となりません」(消費者庁食品表示企画課)

 このため外食店は独自にガイドラインを策定し、原産地表示を進める。外食産業の業界団体である日本フードサービス協会の説明だ。

「すでに大手レストランチェーンなどの飲食店では自社のHPに原産地を掲載するなど、自主的な情報提供に励んでいます。しかし、セントラルキッチン方式を取るファミリーレストランは総合的に原産地表示ができるが、中小の店は難しいのが現実です。

 外食や中食(弁当、惣菜など)は原材料の種類が多いうえ、気候条件などで産地が頻繁に変わるため、原産地表示を法的に義務付けるには課題が多い。また、現行の法律では、中国からそば粉を輸入して店舗でそば打ちしたら『中国産』だが、そば粉が中国産であっても日本国内の製麺所を経由していれば『国内製造』の表示になり、飲食店も消費者も原産地を知ることさえ難しい」

※週刊ポスト2020年7月24日号