警察庁の調べによると行方不明になる認知症の人の数はここ7年連続で最多を更新中。家族としては気が気ではない。

 しかし、行方不明の心配がある人こそ積極的に外に出る機会をつくるべきだと認知症介護研究・研修東京センターの永田久美子さんは言う。外に出て時空間の感覚を維持し、自分らしく過ごす何気ないひとときが大切なのだ。

「認知症の人の行方不明は、かつて“徘徊”という言葉で大きな誤解を生みました。言葉の意味は“あてもなくウロウロする”ことですが、認知症の人が行方不明になるのは、目的や意志がある場合がほとんど。徘徊ではありません。

 買い物など行きたいところがあったり、気晴らしに散歩に出たりして、その途中、いつもならわかる道がわからなくなってパニックになり、どんどん歩いて帰れなくなることが多いのです」(永田さん・以下同)

 しかも行方不明になる人の約7割は認知症のごく初期の人だという。親が認知症になるとできないことばかりに目が行き、本人なりに目的をもって行動する力を維持している点を見落としがちだ。

「普段はしっかりしているようでも、ささいなことでパニックになりやすく、行方不明になる危険がある…など特徴を家族は知っておくべき」

◆認知症の人の外出を守る情報化と絆づくりを

「認知症の人とのかかわり方のコツは、本人が“自分でできてうれしい”を増やすこと。家族がよかれと思うことをしてあげるのではなく、本人のやりたいことを1つでも叶えることが大事です」

 外出も“機能が低下しないように”ではなく、親が行きたい場所に楽しんで行ってこそ効果がある。普段の会話からさり気なく探り、聞くだけでなく、情報として書き留めておくといいという。

「どこに行きたいかという対話には、心理的空間を広げる効果もあります。“去年の花火大会はきれいだったね”“田舎の叔母さんは元気かな”などと話すうちに、家にいながら心は外へ向かい、外出したようなエネルギーもわいてきます」

 また親が街の中でよく行く場所や、地域の知り合いも知っておくといい。

「親のことを知る人がどこにいるかを把握し、できれば連絡が取れるようにしておくと安心。行方不明になりかけたとき、もちろん警察も捜してくれますが、実際に助けてくれるのは地域の顔見知りの人だったりします。このつながりは最大の防御策です」

 最近は自治体と警察が連携し、行方不明者を捜す体制づくりも進んでいる。各自治体に事前登録をしておくと、行方がわからなくなったとき、登録番号を伝えると一斉に捜し始めてくれるしくみだ。

「家族は、親が行方不明になったときにすぐ相談できるよう、地元の警察署、管轄の地域包括支援センターなどの番号を携帯電話に入れておく。

 また親本人には、外出を楽しみ続けるために、緊急連絡先などを書いたヘルプカードの携帯をおすすめします。認知症に対する考え方も少しずつ変わり始めていて、オープンにして助けを求める人たちも増えています」

◆認知症の人が安心して外出を楽しむために… 

【家族の携帯電話に入れておくべきSOS連絡先】
・地域包括支援センター
・ケアマネジャー
・介護事業所
・管轄の交番
など

【認知症の人本人が持っておきたい『ヘルプカード』】
 家族などの緊急連絡先、本人の名前、身体情報など、万一わからなくなったとき、保護してくれた人に助けてほしい内容、情報を。認知症であることをオープンにする人も増えている。

※女性セブン2020年8月13日号