心筋梗塞による年間死者数は約3万7000人にのぼる。いま、コロナによる新しい生活様式が初期症状を見逃す一因にもなっていると指摘するのは、AIC八重洲クリニック・循環器内科科長の手塚大介医師だ。

「これまで駅の階段の上り下りなど、日常のちょっとした運動で息切れや胸の痛みを感じて受診をする人が多かった。しかし、通勤や外出、あるいは運動の機会が減ったことで、“異変に気づく機会”が減っているのです。

 また、コロナ感染を恐れて、通院を躊躇ってしまう人も多い。そもそも心筋梗塞の兆候は気づきにくく、ほとんどの患者は『まさか自分がなるなんて』と口にします。そのため、15分以上続く強い胸痛を感じ、会話もままならなくなってから病院に緊急搬送されるというケースが増えています」

 心筋梗塞はまさに時間との勝負だ。「2時間以内に治療を受けられれば、命を救える可能性が高く、後遺障害も残りにくい」(手塚医師)というが、コロナ禍で診療までの時間は延びている。

 2月10日、国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)のチームが発表した調査によると、2018年1月1日から2020年8月14日までに同センターに入院した心筋梗塞の患者422人のうち、昨年4月の緊急事態宣言後に入院した患者は、発症から同センターに到着し、診療開始するまでの時間が2.4時間から4.1時間と約1.7倍に延びたという(いずれも中央値)。

 患者に対しては狭くなった血管をバルーンで広げるカテーテル治療が用いられるケースが多いが、効果が失われる発症後24時間以上経過してからの処置割合は、宣言以前は14.2%だったのに対して、宣言以後は25.4%に上昇していた。

 こうした治療の遅れにより、心臓破裂などの合併症を患う割合は実に約4倍に増加したという。

「医療体制が逼迫していた1月には都内で10の病院で受け入れを断わられたケースもあったと報告されています」(手塚医師)

※週刊ポスト2021年3月19・26日号