加齢にともなう視力低下を甘受するだけの時代は終わった。最新の技術で視力を取り戻せる時代が到来している。進化を遂げる視力回復医療の最前線について紹介しよう。

 レーザーによって角膜を変形させる、角膜屈折矯正手術の主流であるレーシック。レーザーで角膜の表面にフラップ(蓋)を作り、角膜中央の細胞を削ることで形状を変形させて再びフラップを戻す。レーシックを体験したプロゴルファーの芹澤信雄さん(TSI所属)はいう。

「30代半ば頃から距離感が掴みにくくなり、グリーンの傾斜も見にくくなってきました。成績が落ちてきたのを目のせいにすることも考えたのですが(笑い)、先輩から紹介されて40歳前にレーシックを受けることにしました。手術はわずか10分くらいで、術後にはすでに『人の顔って、こんなにくっきり見えるんだ』と感動したほど回復していました。もう成績の悪さを目のせいにできないのが残念です(笑い)」

リレックススマイル

 レーシックよりさらに進化したレーザー視力矯正手術であるリレックススマイルは、切開口から矯正部位の角膜片を抜き取るのが特徴。フラップを作らないのがレーシックとの大きな違いで、角膜の切開幅もレーシックの約1割で済む。フラップを作るレーシックは角膜の剛性が弱まり、視力のリバウンドが起こりやすいというデメリットがあるが、リレックススマイルの場合は剛性が損なわれにくいため、リバウンドが少ないとされる。

フェイキックIOL

 フェイキックIOLは、眼内にコンタクトレンズを移植する手術。角膜に切開口を作りレンズを挿入する。角膜と虹彩の間に挿入するのを「前房型有水晶体眼内レンズ」(前房型フェイキックIOL)、虹彩と水晶体の間に挿入するのを「後房型有水晶体眼内レンズ」(後房型フェイキックIOL)と呼ぶ。

 角膜を削るレーシックと違い、近視や老眼が進行して度数が変わった場合でも、レンズを交換できる可逆性を持ち、強度近視や角膜に十分な厚さがないと診断されレーシックを受けられなかった人でも施術できるのが特徴。近年、タレントの指原莉乃が施術を受けたことで注目を浴びている。フェイキックIOL体験者の竹内薫さん(サイエンス作家)はいう。

「中学生の頃から目が悪く、20歳の頃は視力が0.01。かろうじて手元が見えるという状態でした。このままでは生まれたばかりの娘を守れないと思い、フェイキックIOLを受けました。私の場合、右と左で違う度数にするモノビジョンという施術を選びました。慣れは必要ですが、これにより生活の中で近視だけでなく、老眼も克服できるからです。手術から10年以上経ちますが、今もメガネなし(写真は伊達メガネ)の生活を送れています」

多焦点眼内レンズ

 多焦点眼内レンズは「水晶体」と呼ばれる目のピント調節機能を持つ部位を人工のレンズに置き換える方法。ストロー状の器具で「水晶体」を吸い上げ、そこへ小さく折りたたんだ眼内レンズを挿入する手術で、白内障の手術に用いられている。

 保険適用となるのは、患者が日常的によく見る距離に合わせた単焦点レンズに置き換える手術。「遠・中・近」の多焦点でピントを合わせることができるレンズであれば、白内障だけでなく、老眼も克服できる。

 多焦点レンズはこれまで自費診療だったが、2019年に「遠・中」に対応したレンズが保険認可された。現在、海外製の5焦点に対応するレンズが登場しているが、国内では「遠・中・近」の3焦点レンズを選ぶ患者が多いという。

取材・文/小野雅彦

※週刊ポスト2021年4月16・23日号