生活の一部となっているスマホ。その弊害として近年、若者世代の「スマホ依存」が囁かれており、『スマホ脳』(新潮新書)がベストセラーとなった。しかし、真に注意すべきは50〜60代が陥りやすい中高年の「スマホ脳」である。

 脳神経外科医で『その「もの忘れ」はスマホ認知症だった』(青春新書)の著書がある、おくむらメモリークリニック院長の奥村歩医師によれば、IT機器による脳の機能低下を「スマホ認知症」と名付けて注意を促している。

 また、スマホ依存が進行すると、感情のコントロールが難しくなる例も少なくないという。ある40代主婦は、スマホゲームに没頭する75歳の父親のイライラに悩まされる日々が続いている。

「コロナでなかなか外出できないこともあり、暇つぶしになればとスマホを渡したんです。パチンコや麻雀が好きなので、それらのゲームアプリをダウンロードしてあげたのがよくなかった。

 最初はほどほどに楽しんでいたが、しばらくして歯止めが利かなくなった。口を開けばゲームの話ばかりで、食事中もゲームをしているので注意すると感情的になって“うるさい!”と怒鳴り返される。以前の温和だった父からは考えられません」

 奥村医師は、スマホ依存による前頭葉の機能低下が影響しているのではないかと指摘する。

「人間の脳で最も発達している前頭葉は、社会生活を送るために自分の感情をコントロールする機能を果たします。しかしスマホの過剰使用で脳疲労の状態になってしまうと、これまで抑えてきた感情が顕在化してしまう。怒りっぽい人が暴力的になったり、神経質な人がふさぎ込みがちになってしまう場合もある。

 そもそも前頭葉の機能は加齢と共に低下するため、中高年では特に異変が生じやすい。さらに、脳疲労は前頭葉の血流を低下させ、自律神経の働きを悪化させるため、めまいや肩こり、食欲不振、睡眠障害など体のあちこちの不調につながる可能性もあります」

 また、スマホ依存は眼の不調にも直結する。二本松眼科病院副院長の平松類医師が言う。

「スマホを長時間使用し続けると、眼の毛様体筋が疲労しピントが合いにくくなる。それが『スマホ老眼』と言われる症状です。50〜60代ですでに老眼の症状がある人が『スマホ老眼』を起こすと、70〜80代の老眼患者と同じレベルまで一気にピント調節能力が低下する可能性もある。

 さらに、スマホを見続けると、眼はスマホから出ているブルーライト(紫外線に近い可視光線)を浴び続けることになります。長時間浴び続けると、水晶体と網膜の中心部にある黄斑部に影響し、白内障や黄斑変性を引き起こす可能性も考えられる」

※週刊ポスト2021年4月30日号