電動歯ブラシは「手で磨くより早く、効率的に歯の汚れを落とせる」メリットがあるとされるが、電動歯ブラシを使ってさえいれば歯や口腔の健康を維持できるわけではない。中には歯周病を悪化させてしまうケースも報告されている。

 日本歯周病学会のホームページにある「歯周病Q&A」コーナーには、〈電動と普通の歯ブラシはどちらが歯周病にかかった歯には良いのでしょうか?〉との設問がある。

 回答欄には、〈電動歯ブラシだけでお口の中を隅々まで磨くのは難しいですし、長期に使用することにより歯が余分に磨り減ってしまう可能性があります〉とあり、電動歯ブラシのリスクが指摘されている。

 では、歯周病予防や治療の基本となる「正しい歯磨き」はどんな方法か。日本歯周病学会元副理事長で日本歯科大学生命歯学部歯周病学講座教授の沼部幸博氏がアドバイスする。

「歯と歯茎の境目に歯ブラシの毛先を入れ、力を入れずに1か所で20回くらい、左右に小刻みに振動させます。この時、力が入りすぎないように歯ブラシはグーで握らず、ペンのように持ち、細かく力をコントロールします。歯周病の患者さんは、歯茎が腫れている場所と腫れていない場所、歯間の隙間が多い場所と少ない場所があるので、特に注意が必要です」

 歯ブラシのサイズや硬さはどう選ぶべきか。

「サイズは前歯2本分相当のものであれば問題ない。ブラシの硬さは歯茎が傷ついてすり減らないよう、健康なら『普通』を、歯周病がある場合は『やわらかめ』を勧めます」(同前)

 キーデンタルクリニックの小林保行院長は、歯ブラシに加え「糸状のデンタルフロスや歯間ブラシの併用が必要」と強調する。

「歯ブラシで磨けるのは7割と言われ、プラーク(歯垢)を取り切るにはデンタルフロスや歯間ブラシの併用が不可欠です。欧米に比べ、日本では男女ともに使用率が非常に低い。歯ブラシで完璧に磨いたつもりでも、フロスを使うとプラークが残っています。少なくとも、1日1回はフロスや歯間ブラシをしてください」

 ただし、歯間ブラシはサイズがいくつにも分かれており、合わないものを無理に使うと歯と歯の間の歯茎が傷ついて下がってしまうリスクがある。適正は「スカスカでも太すぎでもなく、軽く抵抗を感じながら入るくらいのサイズ」(沼部教授)だという。

 さらに、電動歯ブラシを使う際の注意点として小林院長が掲げるポイントは次の4つだ。

(1)歯にぶつかったりしないよう、スイッチは口に入れてからONにする
(2)電動歯ブラシはどのタイプもパワーがあるので、軽く当てる
(3)当てる角度は歯に対して90度、歯と歯茎の間は45度
(4)手でゴシゴシ動かさず、当てるだけ

 また、電動歯ブラシを使う際は、歯磨き粉選びも大きなポイントとなる。

「電動歯ブラシで研磨剤入りの歯磨き粉を使うと歯が削れて知覚過敏を引き起こす恐れがあります。歯周病が進行し歯茎が下がると、硬いエナメル質で覆われていない歯根部分がどんどん削れてしまう。電動歯ブラシ時はジェルタイプを潤滑剤のような感じで使うとよいでしょう。量は米粒大で十分です」(小林院長)

 加えて、電動歯ブラシのブラシ部分は「最低でも2〜3か月に一度は交換しないと清潔が保てないうえ、毛先が開くことでブラシが口内で暴れ、歯肉を傷つける可能性がある」(同前)という。

 道具は正しく使ってこそ、効果を発揮するのだ。

※週刊ポスト2021年7月30日・8月6日号