【書評】『なぜ世界中が、ハローキティを愛するのか? ──“カワイイ”を世界共通語にしたキャラクター』/クリスティン・ヤノ著/久美薫訳/作品社/本体3600円+税

 本書は、ハワイ大学人類学部教授の日系女性人類学者が、ハローキティがいかにして世界に広がり、どのように受容されていったかを、足かけ12年にわたって、日米のサンリオ関係者、アメリカにおけるキティファン、批評家などへのインタビューと文献の調査によって解き明かそうとした大著。

 著者は〈「カワイイ」を体現した物品や図像が、日本から世界各地に国境を越えて広まっていく現象〉を〈ピンクのグローバリゼーション〉と名付け、キティをその先頭走者と位置付けている。

 レディー・ガガなどのセレブがキティを好んでいることはよく知られているが、その一方、アメリカでは、キティは「従順でおとなしい」というアジア系女性のステロタイプなイメージの権化と捉えられ、それゆえに他ならぬアジア系女性のフェミニストから憎しみの対象となっているという。そうかと思うと、非西洋世界から侵入してきたグローバリゼーションへの警戒感からか、一部のキリスト教右派からは「ジャップの悪魔的な狂信教」などと糾弾されている。

 逆に、パンク、アングラ、ゲイ、レズビアンなどのマイノリティにとって、反逆や解放の象徴になっている。本書にはキティを模ったプラカードを掲げてパレードをするアジア系ゲイ団体の写真も掲載されている。

 キティは、西洋が非西洋を支配するという権力構造に抗って西洋に浸透したキャラクターと捉えられ、反逆や解放のシンボルになったのだ。ちなみに、アメリカのシンボルであるミッキーマウスは決して反逆、解放のシンボルにはならないという。

 日本人の知らないさまざまなキティ現象が具体的に紹介されており、非常に興味深い。

※SAPIO2017年8月号