結婚を夢見ながらも、結婚に惑う女性たち。彼女たちは男性に何を求めているのか? せっせと婚活をしながらも、なぜ結婚ができないのか? 婚活女性たちの結婚の「分岐点」をレポートするシリーズ第4回。

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◆結婚相談所で出会ったのに、「結婚」が話題に上らない理由

「結婚は縁というけれど、私の場合は、諦めたときにやってきたもの、でした。これからどうなるかはわからないけど、この子がいるから、どうなろうとも、頑張らなくてはいけません」

 りさ子(40)は、生後6か月になる息子を愛おしそうに抱きかかえながら、ゆっくりと語った。和服が似合いそうな、涼やかな美人。結婚願望はずっとあった。けれど、30代前半は不倫にはまり、30代後半に突入するとさすがに焦り始めて不倫を清算したが、もはや自然の出会いなど期待できない現実を知った。結婚相談所に入会したのは38歳のときだった。

「相談所で最初に紹介されたのが、夫です。私はあまり自分から男の人を好きにならないんです。そんなに好みがないというか(笑)。40を前に焦っていたのもあって、会話がある程度楽しくて、生理的にイヤでなければ、誰でも、という気持ちでした」

 いろいろ選ぶのも大変だろうから、もうこの人で、という気持ちで交際を始める。りさ子は都内のエステサロンで働くエステティシャン。相手の亮太は当時42歳で、会計事務所に勤務する公認会計士だった。亮太はバツイチで、元妻とのあいだには小学4年生になる娘が1人いるが、親権は元妻にあり、娘とは3か月に1回は会う、良好な関係を保っているという。

「うちは親が離婚していることもあって、彼がバツイチなのは気になりませんでした。私も会社員ではなく、フリーで働く身だし、彼もいずれ独立を考えている人。ライフスタイルがあっているのがよかったですね。付き合っているあいだは、平日に休みをあわせて、年に4、5回は海外旅行に行っていましたね。私、付き合ったらわりと早くに一緒に旅行に行くんです。旅行に行って大丈夫な人とは結婚できる、と聞いたことがあって」

 結婚相談所で出会い、付き合いはじめたカップルの多くは、3か月〜半年以内に結婚を決めるという。それは当然だろう。「恋愛」ではなく「結婚」するために、安くない金額を払って入会しているのだから。しかし亮太の口からは、半年がすぎても「結婚」の言葉は発せられなかった。

「ヤキモキして、39歳になったときに、『結婚についてはどう考えてるの?』って問いただしたんです。普通に付き合ってたら、聞きにくかったかもしれないけど……、相談所で出会ってるんだから、結婚が前提にあるはずで、だから聞けたんです。そうしたら彼の顔が曇って、『ごめん、もう少しだけ待ってほしい、って……』

 ここで思いがけない事実が判明する。亮太には婚外子がいたのだ。

◆これで私の人生は変わるな、と思った

 亮太は、結婚相談所に入る前に付き合っていた彼女がいたこと、そして、その女性とのあいだに、まだ1歳にならない男の子がいることを告げた。

「正直、驚きました……。前の奥さんに子どもがいると知ったときは、特になんとも思わなかったのですが、結婚していない人にもいるとなると……、やっぱり、女性関係に問題ある人なのかなと。それで、なぜその人と結婚しなかったのか、聞いたんです」

 亮太によると、女性のほうから別れを告げられたということだった。しかし、亮太としては息子を認知したいと思っている、また、養育費を支払うなど、子育てへの協力も望んでいる。いまだ話し合いの最中で、それらが決着してから、りさ子と結婚したいんだと説明した。

「私は、できれば子どもが産みたい気持ちもあったけれど、結婚できればそれで十分、とも思っていました。当時、すでに39歳だったし、若いときに不倫をしていた後ろめたさや自責の念もあって……。いまの仕事は好きだけど、いつまで続けられるか、将来への不安もある。一生独りでは生きていけないとも思っていました。

 なので、待つことにしたのです。彼も結婚相談所に登録している以上、結婚への意志はあるのだろうと、信じることにしたんです。友人には反対されましたが、これから新しい人を探すのも、亮太さんを待つのと同じくらい、大変だろうからと。歳をとると、エネルギーがなくなってくるんですよ(笑)」

 亮太は交友関係が広く、平日は仕事関係者や友人たちとの飲み会でほぼ埋まっているため、ふたりは、週末のどちらかを共に過ごすようにしていた。

「私もあまり家庭的なタイプではないので、毎晩6時に帰宅するような人はダメなんです。彼は、いつも外食でいいから、無理して料理しなくていいよと言ってくれた。そういうところが、一緒にいてラクだったかな」

 楽しい日々はあっという間に過ぎていく。40歳が目前に迫っていたころ、りさ子は異変に気付いた。妊娠したのだ。

「まさか、と思いました。できないと思っていたので。嬉しくもあり、不安でもあり、やっぱりしあわせでもあり、これまで感じたことのないような感情がこみあげてきました。あのときの気持ちをうまく表現できませんが……、確かなのは、これで私の人生は変わるな、と思ったことです」

◆流されるままに生きて、辿りついた場所

 妊娠を告げると、亮太は無邪気に喜んでくれた。が、次の瞬間、りさ子は頭を殴られたようなショックを覚えた。

「前の彼女との問題がまだ解決していないから、結婚はできないというのです。かれこれ1年がたつのに、なぜだろうと……。私も、その後、追及してなかったのですが、まだ引きずっていたとはショックでした」

 籍はまだ入れられないが、一緒に住もうという提案を受け入れ、2人は同棲を始める。新居は、りさ子1人では到底住めない、贅沢なマンションだった。

「私は彼の年収を知らないんですが、暮らしぶりから、私よりはそうとう稼いでいることがわかりましたし、生活費もほとんど彼が出してくれていたから、不満はなかったんです。女にはだらしないかもしれないけど、ケチではないんですよ、彼。いつしか、彼が望まないなら、入籍しないままでもいいかな、と思うようになってきました。調べると、いまは婚外子だからといって生まれた子どもが法律上、不利になることもほとんどないようですし。いわゆる事実婚ってので、いいのかなぁと。私、諦めたんです。思いがけず赤ちゃんを授かったんだから、それだけでいいや、2つは望まないって」

 以来、2人のあいだで、「結婚」が話題になることはなくなった。りさ子は出産準備をしながらできるだけ仕事に励み、亮太と休みが合えば旅行をする……充実した毎日が過ぎていった。

 りさ子は自分の人生を「流されるままに生きてきた」と、自嘲気味に笑う。しかし、流されて辿りつく場所もある。予定日を1ヵ月後に控えたある日、亮太が婚姻届けを差し出した。「長く待たせてしまって、ごめんね」

◆韓国人彼氏との結婚を反対されていた友人の場合

 事実婚でいいと思っていたりさ子だが、亮太の気持ちが変わったことは素直に嬉しかったという。

「詳しくは聞いていないので、前の彼女とのあいだに何があったのかはわからないんです。私にとってそれはもうどうでもよくて、私と結婚しようと思ってくれたのを、愛情の証だと受け止めることにしました。りさ子は都合がいい女すぎるって、友人に言われます。でも、この歳で、何もかもそろった人にめぐり合えるはずがないじゃないか、とも思うんですよ」

 幸いなことに無事に出産、仕事復帰を模索しながら、いまは子育てを楽しんでいるという。

「学生時代の同級生が、同時期に出産したんです。ある意味で私と似た境遇で、2人で笑いました。彼女の場合は、付き合っていた相手が韓国人で、双方の親に結婚を猛反対されていたんですね。いろいろ大変だったみたいで、疲れて、一度は別れたんだと。ところが、その直後に妊娠が発覚して、彼女は一人で産むことにした。そうこうしているうちに、彼ともよりを戻し、そうしたら、親たちも許してくれて、はれて結婚、となったんです」

 腹をくくった女は強い、か。ところが、話にはさらに続きがあった。

「友人は、一緒に住み始めたら許せないところ出てきて、ケンカばかりで、すでに離婚を考えてるって言ってました。別れるなら早いほうがいいからと。一寸先は闇、ですね」