銀歯にインプラント、部分入れ歯やブリッジ……中高年では、こうした歯が1本もない人のほうが珍しいだろう。ただ、“治療”したはずの歯が、さらに大きな問題の原因となることが少なくない。口腔内の問題は、放置すると全身疾患につながっていくこともある。『やってはいけない歯科治療』著者で、ジャーナリストの岩澤倫彦氏が患者に知らされてこなかった重大リスクをレポートする。

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 厚生労働省の歯科疾患実態調査(平成28年)では、60代の約6割が歯周病だという。歯周病は、細菌の感染で歯肉(歯茎)に炎症が起き、歯を支えている骨が溶けてしまう病気。日本人が歯を失う原因の1位で、虫歯よりも多い。

 中高年世代なら、ブリッジ治療を受けた人も多い。その方々は「スーパーフロス(*注)」を使ったことがあるだろうか? 名前すら知らないかもしれない。

【*スーパーフロス:ブリッジやインプラント専用のデンタルフロスの総称。1本が約60センチで、両端が硬くて中心部はスポンジ状になっている。ドラッグストアで販売しているところは少ないが、大手通販サイトで購入可能。100本入り、1000円前後でアメリカ製が多い】

 日本臨床歯周病学会・認定歯科衛生士の太田由美氏は、こう指摘する。

「ブリッジと歯肉の間は、プラークがとても溜まりやすくなっています。そこに片側が少し硬くなった、スーパーフロスと呼ばれるブリッジ専用のデンタルフロスを通してクリーニングする必要があります。でも、一度も使ったことがない患者さんが多いですね。放置していると、歯周病や口臭の原因になります」

 さらに太田氏は、60代の4人に1人が使っているという、部分入れ歯にも注意が必要だと話す。

「患者さんの中には、部分入れ歯を入れっ放しにしてしまう人がいます。

 隣の歯にかけるクラスプ(バネ)には、プラークが付きやすいので、虫歯のリスクが高くなります。就寝中も、歯や粘膜に負担がかかりますし、カビの一種・カンジダが増殖して、誤嚥性肺炎を引き起こすリスクを高めてしまいます」

 歯周病による全身疾患のリスク要因は意外なところにも潜んでいるのだ。不適切な治療を続けていると、歯周病が長期化して、結果として歯を失い、全身状態が悪化するケースもある。日本歯周病学会、日本臨床歯周病学会の専門医や認定歯科衛生士のいる施設を選んでほしい。

※週刊ポスト2018年6月8日号