日本人の死因の3位である肺炎。その死亡率は高齢になるほど増加するといわれている。肺炎の中でも死に直結しやすいのが、本来は胃に入るはずの食物が誤って肺に入ってしまうことで生じる誤嚥性肺炎だ。

 抗菌薬を使用することで、食物とともに肺に入った炎症の原因菌を死滅させるという治療が行なわれるケースが多い。が、昨年4月に日本呼吸器学会が刊行した『成人肺炎診療ガイドライン2017』では、誤嚥性肺炎を繰り返す患者や、体力が衰えた終末期の患者に対し、「QOL(生活の質)を重視した治療やケアを提供することも選択肢だ」という趣旨が盛り込まれた。

 背景には、高齢者に特有の事情がある。北品川藤クリニック院長の石原藤樹医師が指摘する。

「抗菌薬の使用し始めは炎症を抑えることができるのですが、高齢者は飲み込む力が低下してしまっているために誤嚥性肺炎を繰り返してしまうことが多い。そうなると抗菌剤を使い続けないといけないのですが、そうすると『耐性菌』が体内で生まれてしまい、今度は薬が効かなくなってしまいます。

 抗菌薬には発疹や下痢などの副作用がある。副作用に耐えながら“いずれ効かなくなる薬”を飲み続けるよりも、生活の質を優先して薬を飲むのを止めるという選択をする患者さんは少なくない」

 初期は足腰の痛みや痺れなどが生じ、悪化すると下半身の脱力や感覚障害などが現われる脊柱管狭窄症。椎間板ヘルニアと症状は似ているが、加齢とともに症状がひどくなる点が異なり、60歳以上でも手術を選択するケースは多い。

 それでも、80代になると手術のリスクが大きくなる。清水整形外科クリニック院長の清水伸一医師が指摘する。

「背骨を削る手術のため、体の弱った高齢者は自分の体を支えきれなくなり、術後に新たな腰痛を覚える可能性が高い。また全身麻酔で手術を行なうため、術後に心肺機能や認知機能が低下するリスクもある。杖を使って歩ける程度の症状なら、ハイリスクの手術に踏み切る必要はありません」

※週刊ポスト2018年6月8日号