「倉本聰がシニア世代に贈る大人のための帯ドラマ」として4月から放送を開始し、シニア世代のみならず大きな注目を集めている石坂浩二主演の平日昼の帯ドラマ『やすらぎの郷』(テレビ朝日系)。

7月31日から8月4日に放送された第86話〜90話(第18週)では、ルポライターの立木公次郎(きたろう)が登場したことをきっかけに「戦争」について考えさせられる展開となり、また最後には九条摂子(八千草薫)の意外な“初めての体験”が描かれた。

そんな第18週のストーリーを、まとめておさらいしていこう。(写真はすべて©テレビ朝日/無断転載禁止です)

 

◆震える姫の手。栄は思わず…!

テレビに功績のあった者だけが入れる老人ホーム「やすらぎの郷」。

ここに入居する脚本家の菊村栄(石坂浩二)は、過去に妻がいながら恋してしまった当時の若手女優・安西直美の孫、榊原アザミ(清野菜名)から脚本を預かっていた。

若き日の直美と瓜二つのアザミと初対面し、当時を思い出して気分が高揚していた栄だが、直美が東日本大震災の津波で亡くなったと聞いて、そして、脚本家を目指しているアザミが「読んで欲しい」と渡してきた『手を離したのは私』という題名のシナリオを読んで混乱していた。

震災に見舞われた祖母と孫の物語を紡いだ『手を離したのは私』には、栄がかつてアザミの祖母である安西直美に宛てたラブレターの内容だと確信できる描写が入っていたのだ。

アザミは、栄と直美のことをすべて知っていて読ませたのか? だとすれば、その意図は一体…?

栄がそんなことを考えているなか、日本の芸能史を連載中のやり手ルポライター・立木公次郎(きたろう)が、戦前から活躍する大スター、“姫”こと九条摂子(八千草薫)を訪ねて「やすらぎの郷」にやってくることになった。立木は、昭和の大監督であり、姫にとって初恋の特別な存在である千坂浩二監督の話を聞きに来るのだという。

姫は戦争で辛い経験もしており、姫にデリケートな話をさせるわけにはいかないと警戒する施設の人間たちだったが、入居者の女優・水谷マヤが立木の人間性に太鼓判を押したこともあり、姫はこの取材に応じることに。

しかし、最初こそ生まれ育った京都における若き日の映画人との交流について生き生きと語る姫だったが、話が千坂監督のことに及ぶと様子が一変。立木がアメリカの公文書館から入手したという、太平洋戦争中に千坂監督が撮影したとされる国策映像を見せ始めると、姫の手は隣で取材に立ち会う栄が見てわかるほどに震え始める。

そして、“ある映像”が始まり、姫が「(映像を)とめてください」と感情的になった刹那、栄は姫の手を握った。姫はその手をすぐにほどいたが、アザミの脚本『手を離したのは私』を読んでいた栄は、姫が“手を離した瞬間”がその後ずっと頭から離れなかった。

そうして、姫が取り乱したことによって終わった立木の取材。

その原因となった千坂監督が撮ったとされる幻の国策映像には、軍の命令下で撮影された戦意高揚を促す衝撃的な戦争の場面がうつっていた。

栄は、この取材に立ち会ったことで、自分自身の軍国少年時代を否が応にも思い出す。マヤと施設内のバー・カサブランカで語りながら、日本人が愛国心に燃え戦争の正しさを信じていた時代に、千坂監督はどんな思いで戦闘シーンを撮影したのか? そして、どんな思いで“ある映像”を差し込んだのか? その意図に思いを巡らしていた。

姫が思わず「とめて」と言った“ある映像”。それは、戦闘シーンの後に唐突にあらわれる、姫の故郷・京都の情景が撮られた映像だ。戦争とは直接関係のない映像に思えるが、そこにはなんと、若き日の姫らしき少女の姿がうつっているのである。

夜、栄の住むヴィラを訪ねてきた姫は、この映像について語り始めた。

姫は、立木に悪意がなかったことや取材意図を十分に承知していたうえでも、千坂監督が戦場で、その場にいながらおそろしい映像を撮らされていたのだと思うと気分が悪くなり、震えてしまったのだという。

そして、京都の情景にうつり込む少女。姫は、その少女が自分であると認め、撮影が行われたときの思い出を栄に語り始めた。

千坂監督が出征する直前に撮られたというその映像。当時は男女ふたりで一緒に外を歩くことができなかったような時代で、ある日突然姫のもとを訪ねてきた千坂監督が、いわゆる“ゲリラ”的に夜明けから早朝にかけて撮影を行ったのだという。

そして、この撮影のときに小さく言われた「サヨナラ」という言葉が、千坂監督と姫の最後の会話だったそうだ。千坂監督は昭和18年6月、アッツ島の玉砕のなかで戦死することとなる。

夜遅くまで話を聞いていた栄。自ら「送ります」と言い、夜道を姫とふたりで歩くが、ふと、姫がつまずく。

そんな姫を見て栄は、少しいたずらっ気まじりに、「手をお出しなさい。繋いで歩きましょう」と提案する。これに姫は、「いいの?」と一言。

そうして手を繋ぎながら歩くふたりだが、ここで姫が驚くべきことを話す。

「あたし、殿方と手を繋いで歩くの、ほんと言うと生まれて初めてなのね」

栄は、この言葉に衝撃を受ける。戦前から長きにわたって活躍してきた大スター・九条摂子が、まさか男性と手を繋いだことすらなかったとは…。

そして、「この人を最後まで守らなければいけない。決して手を離すことをしてはいけない」という気持ちになるのだった。

姫(八千草薫)が栄(石坂浩二)に語った千坂監督との“撮影裏話”は、その始まりから終わりまで、これ以上にドラマチックなことはないと思えるほど、切なく美しい思い出話だった。

そして、その後のふたりが手を繋ぐシーン。姫は思わず「誰かに見つからないかしら」と言っていたが、姫にとって初めての経験だと知って、観ていて同じようにドキドキしたという人は少なくないだろう。

『やすらぎの郷』は、8月4日(金)の放送で第90話を終えた。残すところ、あと40話となっている。