現地時間の8月22日〜8月25日、2019年WRC(世界ラリー選手権)第10戦「ラリー・ドイツ」が開催される。激しいチャンピオン争いが続くなか、ここからのラリーでは大きく結果を落としたくないところ。攻める姿勢と守る姿勢、そのバランスが重要になってくる。

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ラリー・ドイツは、2002年にWRCカレンダーに加わった比較的新しいラリーイベントだ。丘陵地帯にあるワイン畑の間を走行するSS3の映像が有名である。

水はけの良い石灰質系の土壌はワイン生産地として向いており、ラリー・ドイツが開催されるモーゼル湖畔は白ワインの名産地として有名。この地域での生産は、じつに9割が白ワインとなっている。

なかでも世界的に有名なのが、黒猫のエチケットラベルでお馴染みの「ツェラー・シュワルツ・カッツ」だろう。エチケットだけではなく、猫型のブルーボトルなどもあり、ワイン好き、そして猫好きならば一度は見たことがあるかもしれない。

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話をラリーに戻そう。チャンピオンシップを見ると、現在トップはトヨタのオット・タナック(180ポイント)、2位にシトロエンのセバスチャン・オジェ(158ポイント)、3位はヒュンダイのティエリー・ヌービル(155ポイント)と続いている。

4位につけるフォードのエルフィン・エバンス(78ポイント)は大きく引きはなされており、事実上この上位3人によるチャンピオン争いとなっている。

製造メーカーの争いであるマニュファクチャラーズタイトルは、1位がヒュンダイ(262ポイント)、2位トヨタ(238ポイント)、3位シトロエン(198ポイント)、4位フォード(158ポイント)となっており、こちらも上位3チームの争いになりつつある。

このドイツを得意とするのは、2年連続で勝利しているトヨタのタナック、過去3度勝利しているシトロエンのオジェ、1度勝利した経験のあるヒュンダイのヌービルだ。奇しくも上位3名それぞれがここを得意とする。マシンをどのようにセットアップして挑むかが勝負の分かれ目となるだろう。

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ラリー・ドイツの難しさについて、シトロエンのエサペッカ・ラッピは公式テレビにこう答えている。

「SS3、ここは確かにターマック(舗装路)なのだけど、自然の中のターマックというか、土埃がどうしても路面に乗ってしまう。すると、簡単にグリップレベルが違ってしまう。同じ路面だけどカーブごとにグリップレベルが違うという難しさがあるね」と、ワイン畑の間を走るターマックの難しさを語った。

そして、ここで2年連続優勝し、今年はスリーピート(3年連続優勝)がかかっているタナックは、公式テレビに意気込みを語った。「可能性はいろいろとあるけれど、ここドイツのコースは好きだ。そしてトヨタのマシンはここで最高に強い。だから、できればまた完璧な週末にしたいね」と自信をのぞかせている。

◆勝田貴元、WRCデビュー

ラリー・ドイツでは、トヨタ、そしてタナックの3年連続優勝に期待がかかるところだが、それ以上にビッグなニュースが日本人ファンにはある。それが、トヨタの育成ドライバー・勝田貴元のWRCデビューだ。

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勝田貴元の名前、いや勝田という名字は、モータースポーツの世界、とくにラリーの世界では非常に有名だ。

というのも、勝田貴元の父親・勝田範彦は、全日本ラリー選手権を8度も制した、日本では圧倒的な強さを誇った名ラリードライバー。さらに、勝田貴元の祖父・勝田照夫は全日本ラリー選手権初代王者であり、WRCにも出場経験がある。祖父もまた名ラリードライバーなのだ。

つまり、勝田家は3代に渡ってトップラリードライバーを生み出している、世界的にも稀な一族なのである。

言うなれば、サラブレッドのような存在の勝田貴元。これまでWRC2クラスで戦い、昨年のラリー・スウェーデンと今年のラリー・チリで勝利。その実力も十分WRCに挑戦するレベルであることを証明している。

この週末、良い走りを見せれば、2020年のWRCフル参戦は間違いないところ。いよいよ日本人ドライバーが、世界最高峰クラスの舞台で世界のトップドライバーたちと互角の勝負をすることになる。

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そんな見どころ満載のラリー・ドイツは、木曜日にSS1を、金曜日にSS2からSS7、土曜日にSS8からSS15、そして日曜日にSS16からSS19までと、全19ステージで344.04km、リエゾン区間は884.19kmと4日間合計で1228.23kmを走破する。

はたして、トヨタとタナックは3連覇を果たすことができるのか。

また、一気に調子を上げてきたトヨタのヤリ‐マティ・ラトバラ、速さには定評のあるクリス・ミーク、そして、初出場ながら(もともと全日本F3まで進んだフォーミュラドライバーということで)ターマックへの対応力に期待が持てる勝田貴元らトヨタドライバーたちの活躍を大いに期待したいところだ。

まずは顔見世となる木曜日。SS1のスタート時間は、現地時間で19時13分。日本時間は23日深夜2時13分スタートとなる。<文/モータージャーナリスト・田口浩次>