PRESIDENT Online 掲載

「広報強化のため、経営企画室長の候補を探してほしい」。ある上場企業からの依頼で、ヘッドハンティングされたのは消費財メーカーのトップセールスマン。転職は大成功で、現在は同社の副社長として活躍している。成功のポイントは何だったのか――。

■経営企画に必要な「What構築能力」

私どもに上場会社のクライアントから「経営企画室の室長候補を探してほしい」という依頼がありました。何人かの候補者をリストアップし、それぞれの方たちと面談を実施するなかで最終的に残ったのは、かつて消費財メーカーのトップセールスマンだったQさんでした。彼はビジネス雑誌の営業マン特集にも登場するほどの優秀な存在だったのです。

なぜ、まったく畑の違う職種の営業マンが最終候補になったのか。それはクライアント企業のニーズでした。同社は経営企画室が職掌する広報・IRの強化を望んでいたのです。会社が求めた資質を具体的にいえば「広報活動に必要な思考を持ち、営業的スキルの高い人材」ということでした。

クライアント企業の経営企画室は当時、財務・経理一筋のキャリアを積んできた人物が室長でした。確かに仕事は手堅いのですが、新たな企画を考えるというより、既存の業務を効率的にこなすことに長けているという印象がどうしても強かったようです。当時の同社のトップは「財務・経理畑の人材では、社内の各部署との調整や情報発信などが、どうしても遠慮がちになり、伝えたいことが伝わらない」と不満を持っていました。

そこで私は、営業職の人材を中心にアプローチをしていきました。そのなかの1人がQさんです。私が彼との出会いに恵まれたのは、消費財メーカーから出身地である西日本の食品製造会社に営業部長として招かれて活躍されていたときのことでした。そんな彼に冒頭の話を打診したわけです。話をしていくと、Qさんは経営に興味を抱き、独学で中小企業診断士の資格も取得していることがわかりました。本人も「いずれは経営企画の仕事をしたい」という気持ちを明かしてくれていました。

営業と経営企画では求められる能力は異なるように思われるかもしれません。しかし、どちらも課題の発見や解決手法を考え出す創造的思考力が必要だという点は同じです。これを私は「What構築能力」と呼んでいますが、常に「なぜ?」と考えながらイノベーションにつながるような改革や改善を発想できる力です。Qさんは間違いなくこの力を持っていました。