PRESIDENT 2016年12月19日号 掲載

どれだけ自分が楽観的でポジティブでも、チームの雰囲気が悲観的でネガティブなら、チームのパフォーマンスはあがらない。ではどうすればいいのか。ポイントは「なぜ問題が起こったのか」という「問題志向アプローチ」ではなく、「こうなりたい」という「解決志向アプローチ」だという。「リチーミング」という最新理論を紹介しよう――。

■「旭化成陸上部」が躍進した理由

リチーミングは「チームを再構築する」といった意味の造語。1990年代前半に、フィンランドの社会心理学者であるタパニ・アホラ氏と、精神科医のベン・ファーマン氏が共同で開発した。通信機器メーカーのノキア、フィンエアーなど同国を代表する大企業も、組織の再活性化のために次々と採用。現在では日本、米国、英国など世界24カ国に広まっている。

そして、日本でリチーミングの普及の先頭に立っているのが、ランスタッドEAP総研所長の川西由美子さんだ。かつて川西さんは、心理カウンセラーとしてメンタルの不調を訴えた社員をケアしていたのだが、治療して復職しても、ストレスの多い社内環境が変わっておらず、再発するケースが後を絶たなかった。

「組織の体質を改善しない限り、根本的な解決にはならなかったのです。しかし、当時の日本には、臨床心理学的アプローチで組織開発を行うメソッドが存在していませんでした。そこで、そうした成功例がないか探したところ、リチーミングに出合いました」

風土改善と業績アップのために、日本で初めてリチーミングを採用したのは旭化成陸上部。メンタルトレーナーとしての川西さんの指導のもと、さまざまな取り組みによる相乗効果が出て、導入した2005年に15位だったニューイヤー駅伝の成績が、06年に8位、07年には2位へ上がった。それをきっかけにリチーミングの効果が日本でも知られるようになり、現在では数百社もの日本企業が採用している。

現場目線でストレスフルな状況でも、その原因を追究するのではなく、「こうなりたい」という自分たちの理想像を先に掲げ、その実現に取り組むのがリチーミングの特徴で、そうした方法を心理学では「解決志向アプローチ」と呼ぶ。これまでは何らかの問題を解決しようとする場合、「なぜ問題が起こったのか」と原因をまず究明し、そこから解決策を導く「問題志向アプローチ」が一般的で、日本企業の業務改善活動でも、「QC(品質管理)」のような問題志向アプローチが主流だ。