PRESIDENT Online 掲載

日本の生殖医療技術は世界有数だ。だが、若年がん患者の「子供を持ちたい」という希望には十分に応えられていない。経済的負担の重さから、精子や卵子の凍結を諦める患者がいるからだ。聖マリアンナ医科大学の鈴木直教授は「子供を持つ可能性を残すことは、患者の“希望”になる。国が助成する必要があるのではないか」と問う――。(後編、全2回)/聞き手・構成=小泉なつみ

■男性がん患者への認知度は低い

国立がん研究センターの統計によれば、年間約2万3000人の39歳以下が、新たにがんに罹患している。だが、がん治療によって妊孕(よう)性=子供を作る機能が喪失する可能性があることを知っている人はどれくらいいるだろう。少なくとも4カ月前、35歳で大腸がんと診断された筆者はこの事実をまったく知らなかったため、治療の合間に情報収集や対応に奔走することになった。

2012年に「日本がん・生殖医療学会」を立ち上げ、がん患者の生殖医療に関する問題にいち早く取り組んできたのが、聖マリアンナ医科大学の鈴木直教授だ。女性がん患者の妊孕性温存について聞いた前編に続き、後編となる本稿では、あまり知られていない男性がん患者の現状と、若年層のがん患者への支援について聞いた。

――妊孕性温存を希望する男性がん患者は、増えているのでしょうか。

精子凍結の相談にこられる男性患者の方もいますが、聖マリアンナ医科大学病院生殖医療センターに来る人は9割が女性で、まだまだ男性の認知度は低いと感じています。

卵子と違って精子は約2カ月周期で新しい精子に作りかえられます。それが一生続くため、女性のようなリミットはありません。ただ、一度でも抗がん剤を体内に入れてしまうと精子に傷がついてしまうため、やはり女性と同様に、がん治療前に妊孕性の温存をしておく必要があるのです。

■「冷凍保存した精子」を使うケースはまれ

基本的には精子の採取には手術も必要なく周期も関係ないため、最悪、抗がん剤をやる数分前に「ちょっとトイレで取ってきください」でも成り立ちます。逆を言えば、その一言を医師から伝えられなかったがために、手遅れになってしまうこともある。

ですから少しでも子供を考えている男性の方は、臆することなく主治医にその意思を伝えてください。最近では抗がん剤治療後でも初期の段階であれば温存可能という検証もあります。自己判断で諦めるのではなく、まずは相談してみてください。

心理士さんいわく、男性は女性に比べて「自分ならできる」「乗り越えられる」といった“自己効力感”が低い生き物なんだそうです。そこへがん治療によって射精障害や勃起障害になってしまうと、たとえ病気を克服できたとしても、その後の人生を諦めてしまう方が少なくない。

また妊孕性温存をした女性はなにがなんでもその卵を使おうとしますし、それを治療の励みにされる方が多いですが、精子の冷凍保存をした男性が実際にそれを使ったケースはまれで、自分に自信をもてないまま治療後の時間を過ごしている方が多いような気がします。

われわれとしても若年の男性がん患者さんがもっと恋愛や結婚、子作りに関して積極的になれるような支援ができないか、今動いているところです。