プレジデント 2020年7月17日号 掲載

新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛で、人々の不満が爆発している。キリスト教はこれまで、様々な危機的状況を乗り越えてきた。佐藤優がいま国民に伝えたい聖書の言葉とは。

■人々が宗教に向かう理由はなにか

人気テレビ番組『テラスハウス』に出演していた女子プロレスラーの木村花さんが、2020年5月に亡くなりました。SNS上の誹謗中傷に追い詰められた末の自殺だと言われています。その前には、検察官の定年を引き上げる検察庁法改正案に対して、「抗議します」というツイッター世論が盛り上がり、法案成立は見送りになりました。

どちらの件も、新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛がなければ、あれだけの爆発に至らなかったと私は思っています。家から動けない生活が2カ月も続いて活動を制限されれば、ストレスが溜まります。人を無理やり押さえつけて魂を内側へ圧縮させていくと、何らかのはけ口を探し、反動として爆発するものだからです。

こうした爆発を抑え込む働きを持つのが、宗教です。信仰という別の方向へ、魂を発散させるのです。宗教は英語で「レリージョン(religion)」。「レリギオ(religio)」は「結び合わせる」という意味ですから、宗教は人と人との絆づくりでもあります。

「現実がハッピーだから、何の問題もありません」と言う人にとって、宗教は不要に思えます。しかし往々にして、深刻な問題を抱えているのに、見ようとしない人がいます。病気が見つかると怖いから健康診断に行かない、という心理です。

宗教は、そんな人にも逃げ道をつくってくれます。ところが我々は、逃げ道について日常的には考えません。誰一人の例外もなく死を免れられないのに、何となく死なないと思っているからです。だから普通の人が宗教に接点を持つのは、年を取ったときと病気になったとき。つまり、死が迫ってきたと実感するときです。