5月30日、大阪地裁で開かれたある刑事裁判において、ICレコーダーで録音しようとした男性弁護士に対し、裁判所が退廷を命じたが応じなかったなどとして、一時手錠で拘束されるという事態となりました。 この男性弁護士に制裁裁判で過料3万円が言い渡されましたが、2日には大阪高裁に抗告申立を行いました。 裁判のルールに従わなかったから罰せられたと捉えられますが、この言動の裏には何があったのでしょうか? 6月3日放送『北野誠のズバリサタデー』では、角田龍平弁護士がこの事件について解説しました。

     

制裁裁判とは?

まず「制裁裁判」という聞き慣れない言葉について。
これは裁判官の命令や措置に従わず、暴言・暴行・喧騒などの不穏当な言動で裁判所の職務執行を妨害したり、裁判の威信を著しく害したものに課す裁判のことだそうです。

裁判では録音や録画は、裁判所の許可がない限り禁止されています。
男性弁護士は以前から、他の裁判でも録音の許可を求めて却下されていたということが続いていたそうです。

というのも、裁判で尋問などを行う際は書記官が記録し、弁護士は後から調書という形で確認しますが、その内容が簡略化されていて、正確ではないと思っていたので、録音して後から確認したいと思っていたためです。

ただ、今まで何度か裁判所とこのやりとりを行っていたからか、今回の裁判は傍聴人はほとんどいなかったにもかかわらず、裁判所の職員が何人もいる物々しい雰囲気だったそうです。

録音が禁止されている理由

同じようなことを感じるという角田弁護士。
会議の内容をICレコーダーで録っておいて、後から録音内容を元に議事録に起こすということは一般社会では普通にあることです。

ただ、これが裁判所において許されていないのは、訴訟に関係する人のプライバシーを守るためとのこと。

角田弁護士は録音の必要性について語ります。

角田「一般の傍聴する人に禁止するのはわかるんですけど、弁護士が最終的に書面を提出するために、尋問で正確に(記録したいから)録音するということは、決して法廷の秩序を乱すとは思わないです」

録音が必要な理由

そして、自身の体験を元に録音の必要性について訴える角田弁護士。

角田「私も携わっていた裁判員裁判で、ものすごいスケジュールが詰め込まれているわけですよ。

1日目は証人尋問や被告人質問が何個かあって、3日間に複数の人を長時間尋問するんですけど、録音はできないんですよ。

尋問が終わって、すぐ後の日に休みもなしに、自分の主張をまとめた書面を出さないといけないんですよ。

でもそれは、尋問の結果を反映させないとダメなんですけど、尋問の最後の日に録音したCDを渡されるんですよ。

書記官が書き起こした物もないので、3日間の尋問の内容を聞きながら徹夜で仕上げたことがあって。

そういうことを考えると、最初から自分で録音できてたら、その都度チェックできて、もっと余裕を持って、ちゃんと被告人の利益を守るための書面が作成できたのに、なんで録音させてくれへんねんやろなあという思いはあったんです。

被告人の手続き保証という意味で、録音するのは別に問題がないんじゃないかなと思うんですけど。

裁判官として自分の訴訟指揮に関する経過を記録しといて欲しくないんじゃないかなという」

ルールはルール!?

裁判は基本的に誰でも傍聴することができる上に、メモができるにもかかわらず、録音はできないという状況について、北野も疑問を呈しました。

北野「むしろ裁判チャンネル(実際の裁判の様子を動画で公開)というのを立ち上げてもらいたいぐらいですよ。

当然、被害者の人権とか配慮せなアカンけど、書記官が書くよりも全体を録ってたらいいんじゃないですか?
弁護士と検察と裁判所で、みんなが録音したのをもらっておくということでいいんじゃないですか。
それを『SNSであげたらダメ』って一筆もらっといたらいいと思うんですよ」

もちろん現行ルールに逸脱したから制裁裁判になってはいるのですが、「そもそも録音を禁止する必要性があるのか」という点など、いろいろと改善に向けた取り組みが必要ではないかと考えられます。
(岡本)

北野誠のズバリ
2023年06月03日10時50分〜抜粋(Radikoタイムフリー)